1738話 緊急事態
アクセスありがとうございます。
俺と猫たちの真剣勝負が終わった後、食堂でおやつを食べていた時、
急に警報が鳴った。
上の子たちはビクッと体を硬直させ、下の子たちは突然のことで泣き出してしまった。機嫌よく餌を食べていた猫たちは、隙間に隠れながら警戒する声をだしていた。
あまりのことで俺もびっくりしてしまったが、膝の上で泣いているシンラをあやした。
プラムとシオンは、近くにいた母親たちにあやされている。
シンラがいなければ、すぐに行動に移したいところなのだがっと、ライラが受け取りに来てくれたので、シンラをお願いする。
この警報の原因を知らないといけない。こういう時は、スプリガンの皆がいる監視室が最適だろう。
全力でダンジョン農園の中にある監視室へ向かう。
到着すると、監視室の中は慌ただしかった。
「ご主人様! よかったです。連絡しようとしたの出すが、家の方は誰もいなかったみたいで、無線を取っていただけませんでした。この警報について説明します」
代表してスプリガンの1人が俺に説明を始めた。
警報が鳴る30分前、突如樹海に侵入してきた集団がいたのだとか。移動速度が尋常ではなく、俺たちに匹敵する速度だったようだ。それから30分で100キロメートル内側にある警戒ラインに到達して、この警報がなったとのこと。
森の中を時速200キロメートルか……ヤバいな。
警報が鳴ってから10分が経過しており、更に30キロメートルほど進んでいるとの事。ディストピアまでは350キロメートル以上あるが、今の速度なら2時間かからずにここへ到着する。
木を避けながら進んでいるので一直線では無いが、ほぼ真っ直ぐにディストピアへ向かってきているらしい。
警報が鳴るのは、高レベルの冒険者か魔物、勇者のどれかだ。移動速度からすると、前者の2つの内どちらかか?
俺の予想は間違っていた。
侵入してきたのは、高レベルの勇者だった。この大陸ほぼ全土を支配領域にしている、俺のデータベースに存在していなかった勇者だったのだ。
厄介な事に、9人パーティーで勇者の称号持ちが3人いた。正直眩暈がしそうだった。
勇者の数に変動がないか毎日確認していた。だけどそいつらは突然そこに現れたかのようだった。
レベルも限界突破をして700にまで成長している。そして、勇者という称号の所為で魔物やダンジョンマスターに恐ろしく強いのだ。200ほどのレベル差であれば、簡単に覆してしまう程に強い。
スキルも今までに見た事のない数を所持していた。
俺たちほどではないが、有用なスキルに関していえば大差がなかった。
おそらく、ドッペルに憑依した状態で戦っては、俺たちに勝ち目はないだろう。俺はともかく妻たちは人間だが、ドッペルに憑依して戦うとなると、体は魔物なので勇者の称号が効果を発揮してしまうのだ。
あいつらの抵抗できる戦力は、勇者の称号効果があるとはいえ体を改造した俺、生身の妻たち、人造ゴーレム、クリエイトアンデッドで作ったS級スケルトンに、アダマンコーティングを施した奴ら、くらいだろうか?
いや、リバイアサンも抵抗できるな。あいつらは、勇者の称号があっても一撃で葬る事の出来る攻撃など、存在しないだろう。死なないのならエリクサーで回復できるからな。
ただ、リバイアサンが本気になるのであれば、地形が変わる事は覚悟しないといけないな。
妻たちや綾乃、バザールに連絡を入れ迎撃態勢を整える。
先陣は今も増え続けているS級スケルトンたちだ。ジェネラルたちに率いられた、職持ちS級スケルトンたちで様子を見て、次に人造ゴーレムたちを出す。それでもダメなら、リバイアサンのメグちゃんとシリウス君たちだな。
もしこれでだめなら、俺と家族たちはゲートで、従魔たちはキャスリングで追って来れないマイワールドの中に逃げるしかないだろう。グリエルには、最悪いなくなることを伝えた。
ディストピアは俺の街だから守りたいけど、もしリバイアサンの2匹でダメなら勝てる気はしないな。それこそメテオを使って殺すしかないだろう。
もし何かあったら、この街はグリエルに任せる。勇者でもゼニスの商会、厳密には俺のなのだが、あの商会をどうこうするのは不可能だろう。精霊たちも連れて行くので、ディストピアの生産力は著しく下がってしまう。
勇者たちが何をしようとも、ディストピアの住人たちからの反発は必至だろう。統治する気があるのかは知らないが、ディストピアをすきにすることは難しいだろう。
最終結論はこんな感じだった。
「バザール、先鋒のスケルトンたちを使って、勇者たちの意図を探ってみてくれ」
「了解でござる」
100体のS級スケルトンたちをゲートで送り出し、勇者たちの前まで移動させる。
何やら言っているようだが、遠くから撮影した映像を見ている俺たちには聞こえない。バザールもS級スケルトンたちを操り戦闘しながら話し合いをしているようで、こちらに会話の内容を伝える余裕がない。
そうしている間に、綾乃が整備済みの人造ゴーレム50体を連れて現れた。簡単に状況を説明する。
う~む、アダマンコーティングをしているのに、結構簡単に壊されているようにみえるな。勇者の称号って、魔物やダンマスへのダメージを増やす、みたいな効果じゃなかったっけ? ただの物質であるアダマンタイトには関係ないんじゃ?
武器防具が耐えている様子を見るに、アダマンコーティングはS級スケルトンたちの一部とみなされて、勇者の称号の対象になっている可能性があるかもしれないな。これなら、アダマンタイト製の外皮を持っている人造ゴーレムたちなら問題ないか? こいつらの攻略法を知らなければ倒せないだろう。
S級スケルトンが20体ほど壊されたあたりで、戦闘が止まった。
バザールが言うには、この勇者たちはもともとこの世界の勇者では無いそうだ。だけど、勇者たちの視点ではダンジョンマスター=人を虐げる悪なのだそうだ。
あっちの世界ではそうだったかもしれないが、ここでは共存しているダンジョンマスターがいることを説明するが、どうせ搾取しているのだろうとこっちの意見を聞き入れることは無かったようだ。
ではどうするか、と言う話になったのだが、それなら共存している俺たちの街を見せてほしいと言われた。バザールは自分だけでは決められないので、街の権力者と相談したいと切り抜けたようだ。
俺の存在は、何とか隠し通したようだ。
とはいえ、いつ爆発するかわからない爆弾を近くに置きたくはないのだが、どうしたものか。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




