1725話 衝撃の事実
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「みんな聞いてくれ。打てる手が思いついていないと思う。そこで2つ仮説を立ててみた。1つは、ここがボス部屋では無いという仮説だ。2つ目は、この部屋ボス部屋全体が、何か未知の魔物ではないかという仮説だ」
「シュウ様、ボス部屋ではないとはどういうことですか?」
「あくまで仮説だから、可能性があるということだけ念頭に置いて聞いてくれ。みんなもルールブックを読んだことあるから知っていると思うけど、ダンジョンにはボス部屋を設置しなければならない、というルールはないんだよ。
だから、この部屋は時間稼ぎ……違うな、死ぬまで閉じ込めておくことが前提の、トラップ部屋という仮説だ」
俺の説明を聞いた妻たちは、言葉を失っていた。
「あくまでこの仮説は、見えない敵がいると思わせることが前提で、トラップ部屋だと気付かせない仕組みがあるのではないかと、考えたんだ」
「確かに、常識外れのこのダンジョンなら、ありえそうですね。もう1つの全体が未知の魔物というのは?」
「よく考えてみてくれ、この部屋は広いと言っても、俺たちが知る一番大きな魔物はこんなちっぽけでは無いよな?」
「確かにリバイアサンの本当の姿なら、この部屋より大きいと思いますが、一応生物の形をしています。いくら大きい魔物を知っているからと言って、この部屋が魔物だというのは……」
「俺たちが知る最大の魔物はリバイアサンじゃない。ディストピアの街を覆いつくす程の魔物が身近にいるじゃないか」
俺がそういうと、全員がピンときたらしい。
「そう、庭に生えているユグドラシルだ。あいつのことを考えれば、この部屋は小さい。そして、ゴーレムを思い出してくれ。あいつらは元々無機物で出来ている。体の中が部屋のような物がある魔物がいても、おかしくないと思わないか?」
言いたいことは分かってくれているようだが、心というか常識が邪魔して受け入れられないと言った表情をしている。
「2つとも仮説の話だ。何も手がないなら、馬鹿げた仮説でも手を打った方がいいと思わないか?」
納得はしてもらえていないが、手が無いのも事実。行動を起こしてくれるようだ。
「2つの仮説を前提に動きます。まず始めに、多数決を取ります。トラップ部屋だと思う人?」
半数以上が手を上げた。
「決まりですね。トラップ部屋ということは、解除方法があるということですね。虱潰しとは言わないですが、等間隔に並んで警戒しながら解除方法を探しましょう。
もし、これ以外に仮説を思いついたら言ってください。まずは、部屋の角へ移動します。そしたら等間隔に並び、部屋の中心側はシュリさんにお願いします」
キリエの指示で部屋の角まで移動した。俺は、一番端、壁側だ。その反対がシュリという陣形で、俺の右手の壁と平行に移動して、トラップ解除方法を探る事になった。
進んでいくと、フィールドエリアみたいに木が生えている場所があった。もしこの木の1つがトラップに関係している。とかだと、どうにもならない気がする。ある程度時間をかけて調べてみるが、通過した森? 林? には、特に怪しい所はなかった。
歩いている間に角についてしまった。今度は、俺は中心に移され俺がいた所にリリーが入っている。
何度も折り返したが、似たような木がある場所と岩がある場所、凍った池などがあった。岩がある場所は、ゴーレムに注意して立体的になっている所を隅々まで探すが、何も得るものは無かった。
そして池なのだが、そこに何かあるかもしれないということで、力業で氷を切り出し調べてみたが、やはり何もなかった。
そして、部屋の隅々まで調べ終えたが、一切魔物と遭遇していない。索敵スキルに反応はあるのだが、調べても形跡すら見つけられていない。
トラップ解除の何かを見落としていた可能性はあるが、もう一度調べるには決定的な決め手がない。妻たちも部屋の半分を探し終えたあたりから、魔物の方がまだ現実的なのでは? と考え始めていたようだ。
ただ、この部屋が魔物だったとして、どうやって倒すのかと言う話になった。探索中に食事休憩をはさみ、今は15時、コンテナを魔改造して召喚した。
眉毛が繋がった警察官が主人公のマンガで、コンテナを改造して中で生活できるようにした話を思い出して、魔改造して作ってみた。換気もできるスーパーコンテナだ。サイズは75ftコンテナを横に4つ繋げた位の広さがある。作れるサイズで一番大きなサイズにしてみたのだ。
その中で今俺たちは、おやつ休憩をしながら作戦会議をしている。
議題は、この部屋が魔物だったとして、どうやって倒すのかということだ。
これだけ大きな魔物だと、どうやって倒せばいいのか分からない。もし魔物なら、DPで奪うこともできるのだが、認識できていない魔物の場合は、奪えないのだ。メグちゃんの時は、俺のエリア内にいたから認識できたし、マップ先生を通じて奪取したけど、今回はそうもいかない。
厄介な事に、大きな魔物は総じて回復力が高い。厳密に言うと生命力の最大値が高く、人間サイズなら重症の深い傷でも、大きな魔物にとっては大したケガではない。そして生命力はパーセンテージで回復していくので、最大値が高ければ高いほど回復量が多いのだ。
例えばユグドラシルの木に、1メートルの深い傷をつけても、暫くすれば治ってしまうのだ。俺たちなら確実に体が真っ二つになる傷でも、ユグドラシルにとっては大した事はないのだ。
そして、この部屋が魔物だとしたら、かなりのサイズになる。そして、多少の傷ではすぐに治ってしまうことが問題だ。
「攻撃する前に1つ確認したい事があるんだけど、いいかな?」
そう言ったのは、クシュリナだった。
「トラップの解除方法を探している時、誰か魔法の攻撃痕を見つけた人いるかな? 探し始めた頃は、いくつか見たけど、最後の方は1つも確認できなかったの。誰か見つけた人いる?」
そう言われて、全員が記憶をほじくり返し始めた。
結論、後半は誰も攻撃痕は見ていないとの事。この事からこの部屋が魔物ではないかという仮説が、真実味を帯びてきた。
ダンジョンの壁や床も治るが、2~3時間で治るものではない。条件によっては見えなくなったりするだろうけど、初めの頃は見つかっていた痕が、後半1つも見つけられていないというのは不自然だ。
この部屋が魔物だという前提で、攻略方法を考え始めた。
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