1709話 魔の森に到着
アクセスありがとうございます。
違う小説にUPしているのに、21時過ぎに気付きました。
「うっし、到着!」
「「「とうちゃくー」」」
ドッペルに憑依した娘たちは俺の真似をしている。その様子を依頼を受けた冒険者たちが眺めており、微笑ましそうに見ている。
俺たちが今いるところは、魔の森との境目だ。ここから、残りの80%くらいの距離を進んだところに俺たちの目的地がある。でもその前に、しなきゃいけない事があるんだよね。
「少し休憩したら、移動時に話しておいたように、周辺の魔物を間引く部隊と森を切り開く部隊に分かれて作業を開始する。木は切り倒したらそのまま放置で問題ないが、近くに人がいる際にはしっかり声を掛け合ってから切り倒すように!」
正式にはまだ敵国から切り取っていない場所に街を作ると面倒があるとグリエルに言われたため、俺たちは、魔の森を切り開いて簡易的な野営地を作り、そこを拠点に街づくりできるように整えるつもりだ。
とはいっても、今はまだ整えるだけで街を作る気はないのだけどね。俺たちの本当の目的は、この魔の森を抜けた先から逃げ出そうとしている人たちの保護だからな。いくら戦力があっても、数が多すぎれば対応できなくなるので、森の中にある程度の道と拠点を作るつもりなのだ。
拠点を中心に探索するグループと、保護した人たちを馬車などを使い、拠点を移動させるグループに分かれて行動する予定である。
そのための足掛かりとなる1つ目の拠点だ。
切り倒した木を集めるのは、妻たちの仕事だ。木の回収と同時に残った切り株を引っこ抜く事もお願いしている。土魔法を使って掘り返してもらうだけだけどな。
俺たちが憑依している事から分かると思うが、既に午後である。今日中に仮拠点の範囲は整地したいと考えているので、俺も全力で手伝うことにしている。娘たちは、ミリーや従魔たちに任せて自由にさせている。メグちゃんが付いているから、何があっても問題ないだろう。空の守りも完璧だしな。
俺は久々に使う斧を取り出した。何の変哲の無いただの大斧だ。柄の長さは俺の身長程あり、刃の部分は一番広い所で80センチメートル近くもある。素材がアダマンタイトという、非常識な物で出来ている以外は普通である。
総アダマンタイトなので、かなり重い。鉄で作ってもこの大きさならかなりの重量になるはずだが、鉄より重いアダマンタイト製だからな。ステータス補正が無ければ絶対に持ち上がらん。
とにかく固く頑丈な素材で作った斧は、樵として使っても優秀なのだ。
近くに人がいないことを確認して、木から2メートル弱離れた位置に立つ。重量がある長物を使う時には普通しないのだが、柄の先を野球やらゴルフのようにもって、フルスイングで根元近くに振り込んだ。
直系1メートルも無い木なので1発で切り倒せるかとも思ったのだが、半分過ぎた所で止まってしまった。木の繊維や斧の厚みによって摩擦などが起こり、威力が減算されてしまったのだろう。それでも半分まで刃を埋めたのだから十分な威力があったと思う。
力の強さを考えれば、そののまま切り倒せてもおかしくなかったと思うんだけどな。何かあるのかな? 考えても分からない事は諦めて、木を切る事に集中しよう。
先ほどとは逆から斧を叩きつけ、計2発で木を切り倒す。
何本か切り倒した後に気付いたのだが、妻たちが剣で木を切り倒していた気がするんだよな。しかも一振りでさ。剣よりは斧の方が切る事に向いているはずなのに……
シュウというか、この世界の人間は知らないのだが、シュウの妻たちが余りにも簡単に木を伐りすぎたため、創造神が緩やかにこの世界の法則を変えていたのだ。木を切る際に必要なスキルを準備して、スキルを持っていない者や、木を切る道具を使わない者は、切り倒しにくくなる、というものだ。
その状態で2発で切り倒したシュウは、正直言うと化け物といってもおかしくないレベルだ。
ディストピアの冒険者たちは、経験上木を切り倒す時には斧の方が楽だということを知っている。しかも、依頼で木を切る事も良くしているので、スキルもしっかりと持っているのだ。
そんな彼らもかなり速い速度で切り倒しているのだが、それを身体能力とアダマンタイト製の大斧で超えているシュウは、冒険者たちから尊敬の眼差しを受けていた。ドッペルなのでこの程度で済んでいるが、生身であればもっと深く切り込みを入れられただろう。
俺は1人3役で、木を伐り、回収して、切り株も掘り起こしている。それでも4人チームの冒険者たちより広い面積を切り開いていた。
19時を回る前には、何とか1500人が寝泊まりできるであろう面積を切り開く事に成功した。後半は、魔物の間引き組も木を切り倒すチームに合流しての結果である。
妻たちには、森との境目に5メートル程の壁を建てもらっている。木の上から侵入してこれるのだが、そこまで頭のまわる魔物であれば、まず近付いては来ないだろう。
食事の準備を始めていてくれた、ブラウニーたちが提供してくれた夕食はカレーだった。ディストピアでもゴーストタウンでも、人気の高いメニューだ。トッピングには、唐揚げ、トンカツ、チキンカツ、メンチカツ、チーズ、たまご、そのほかにも揚げ野菜などが大量に準備されていた。
大半が揚げ物だったな。良く動いた体に必要なカロリー補給だろう。
でも、俺たちはドッペルなので野営地では食事を食べずに、家に戻ってきている。俺や妻たちだけなら、ドッペルの体と生身で食べてもいいのだが、娘たちはまだ慣れていないので、摂食障害を起こす可能性があるとチビ神から忠告を受けたから、食事は戻ってきて食べる事にしている。
チビ神にしては、素直に感謝できる情報だったな。
帰る前にカレーの匂いがしていたので、娘たちも食べたがるだろうと思い、シルキーたちが夕食をカレーにしていた。さすシルである。
いつもより遅い食事だが、その中でミーシャたちが今日の冒険の話をしてくれた。ミリーたちに捕捉されながらだが。
従魔たちは、俺たちのドッペルを向こうで守ってくれている。あ、こちらの様子が見れるようにテレビを設置しろ! とうるさかったので、今ころこの食事風景を従魔たちは並んでみている事だろう。
明日は、周辺探索組と建前の目的地へ向かう道を作りながら、次の拠点候補地を探す予定だ。
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