1706話 ジェノサイドキャラバンこわひ
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食料を送り出してから3日後、ディストピア軍は敵国へ侵入し逃げ出す民を守っていた。陣地の構築をドッペルに憑依した妻たちが担当することにより、安全な野営地の確保と後方への輸送に使う道の整備なども一緒に行っている。
逃げてきた人や難民は、通常の状態に比べればかなり体力が落ちているため、徒歩での移動だと騎兵にやられる可能性が大きくなってしまう。急遽戦力の追加と輸送手段ということで、ジェノサイドキャラバンが応援に駆けつけている。
ゼニスがグリエルに相談して、魔導列車を使い集結させたようだ。規模が大きくなっているとは聞いていたが、いつの間にかジェノサイドキャラバンが3つになっていた事には驚いた。最初に発足した時の倍ほどの規模のキャラバンが3つだ。戦力も充実している。
でもさ、商会のキャラバンなのに一銭の得にもならない事をするのか? と思ったが、グリエルが正式に依頼を出したので、商会としては赤字はない。けどさ、ジェノサイドキャラバンを動かすお金は俺が払って、それを受け取るのが俺なんだよな、なんだこれ?
ここで儲けが出れば、ジェノサイドキャラバンのクルーたちにボーナスが出る! ってことになってるけど、俺の気分次第なんだよね。
でもわかってるよ。今回もしっかりとボーナス払うから、後方への輸送は任せた!
そういえば、ジェノサイドキャラバンの馬車が少し変わってたな。なんかね、装甲板みたいなのが付いてた。防御力が高そうな見た目で、屋根から弓矢を撃てるように柵やら矢筒置き場なんかもあったね。
ウォーホースを使っているので、馬車を引いていても騎兵単体と同じ速度は普通に出せる。そこから弓による攻撃と、ウォーホースの騎兵が敵を撃滅する。ジェノサイドキャラバンと呼ぶに相応しいな。
騎兵のウォーホースは、特注の鎧を着ており体自体が1つの武器として成立する程だった。そこに兵士、護衛役のクルーなのだが、そいつらが状況に合わせて騎乗武器を切り替えて戦うんだと。
軍に合流する前に1度襲われた時の映像を見せてもらったのだが、馬車がチャリオットになってた。防御を固めた馬車ではなく、攻撃するために装甲を追加した馬車だった。
収納の箱で大量に食料を持ち込んでいるディストピア軍には意味ないのだが、物資を運ぶ輜重隊を狙った部隊がいたのだ。ジェノサイドキャラバンが輜重隊だと勘違いした敵が、かなりの数で襲ってきたらいいのだが、馬車の車輪が変形して刃物が出てきた。移乗攻撃を防いだり近付いた敵に攻撃したりするやつだ。
ジェノサイドキャラバンは本来、襲ってきた魔物をすべて殺して進む事からジェノサイドキャラバン、と呼ばれていたのだが、今回のことで本当の意味でジェノサイドをしていた。特定のグループ、今回なら輜重隊を狙ってきた部隊を文字通りに皆殺しにしたのだ。
「グリエル、こいつらって、下手したら軍よりヤバい集団じゃないか? 軍も武力で物事を解決する暴力的な意味でヤバい集団だけど、こいつらは訓練している軍より、よほど効率的に敵を排除しているように見えるんだけど」
「そうですね。ディストピア軍は基本的に騎兵がいないですからね。殲滅戦はあまり得意では無かったりすると聞いていますが、ルールの決められた戦争で正面からが基本となるので、殲滅戦をする事はないんですよね。ただ、軍より効率的という部分にはおおむね賛同します」
言われてみれば、ウォーゲームでは殲滅戦なんてしないから、ここまで効率的に排除できるのは、ジェノサイドキャラバンの力なんだろうな。
チャリオットもヤバいけど、護衛の騎兵が予想以上に猛威を振るってた。漫画とかで大きな馬が人間を踏みつぶしたり攻撃したりする描写があるが、まさにそんな感じだった。立った状態の人間を踏みつぶせるほど大きいわけでは無いので、突撃して倒れた敵を踏みつぶしていた。
1回の移動でキャラバン1つが50人程は移動できるようなので、3つあるから150人程は運べるらしい。ピストン輸送になるが、普段の移動よりは楽だと報告があった。しっかり舗装されていない道を走るのは大変だもんな。
テントも届けているし、毛布代わりの厚手の布も届けた。衣食住の衣以外はそろったけど、服に関してはどうするべきか?
衛生のことを考えると、1着しか持っていないというのは深刻な問題だ。とはいえ大量に渡すのも良くないので2着ほど渡すことを考えていた。
その服をディストピアやゴーストタウンで集めようとした。この2つの街は機織り機のおかげで、大量生産出来ているから量があるので安いから、集めて持っていこうと考えていたのだ。品質が高すぎるので、渡す服に向いていないとグリエルにツッコまれた。
そこで考えたのはディストピアの住人から、古着を買い取るという方法だ。サイズはバラバラになってしまうが、品質が良くても使い古した物であれば大丈夫と許可が出た。
そこそこ高値で買うことにしたが、さすがに新しい物を1着買えるほど払うわけでは無いので、量が集まるか心配だった。ゴーストタウンでも同じように集める必要があるかもな、とか考えていた俺がバカだった。
お金に困らないほど稼げている人が多いので、着なくなった服がそれなりにあったようで、こぞって売りに来てくれた。他にも、子どもが大きくなって着れなくなった服もあり、子どもたち用の服もそれなりに集まった。いい意味での誤算だ。
これも収納アイテムへ入れて送り出した。
いろんな意味で都合のいい状況が続いたのは、幸運先生たちのおかげかな? 主人公補正の御都合主義という線もありそうだ。
なんて、どうでもいいことを報告書を読みながら考えていた。
さて、隣接している国の国境付近でしか活動できないが、どれくらいの人が救えるかな? 支援していた国も冒険者ギルドの参戦で結構大変な事になっているが、そこまで軍を行かせても後方輸送が困難になるからな。
「失礼します。シュウ様、少しよろしいですか? 無政府状態とでも呼べばいいのでしょうか? 国が崩壊して各都市が独自に動いていますが、その都市を接収したりはしないのですか?」
「するつもりなんてないけど、グリエルたちは接収したいの? 主戦国の2つは残ってるから、フレデリクとかみたいに飛び地になるから面倒じゃないか?」
「そうなんですがゼニスと相談した結果、1つだけ押さえておきたい地域があるんですよね」
何やら考えがあるようだ。
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