1694話 怖い病気
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俺は子ども部屋の扉を開いて、大丈夫か! と叫ぼうとしたが、叫ぶ前に全身を水で包まれ動けなくなった。
すべてを撥ね退けてきた俺だが、リバイアサンのメグちゃんの水には対抗できなかったのだ。とはいえ、ただやられるわけにはいかない! 子どもたちが寝込んでいるんだぞ!
ここで火魔法を使うと水が蒸発するだろうけど、そうすると俺が大火傷をしてしまうだけだろう。ならば、吹っ飛ばす! 魔力を練り上げて、周囲に爆発するような風をまき散ら……
ゴンッ
後頭部に強い衝撃を受けて、意識を手放した。
目が覚めると、体が全く動かなかった。ベッドの上だというのは分かるがいつものベッドではなく、病院の診察室にあるようなベッドだ。あれは、ベッドと呼んでいいのか?
あれよりは幅が広いが、動けないように至るところを拘束されている。手錠やワイヤーなどで……
なんでこんな状況になってるんだ?
仕事に行って、みんなで飲んで、家に帰ってきて、子どもたちがもう寝てると聞いて、顔だけ見に行こうとしたら……そうだ! 子どもたちが寝込んでいるんだった! くそ! 何でこんなことになってるんだ?
ワイヤーも手錠も邪魔だ! 鑑定すると、アダマンタイトで作られた物だった。
ミスリル合金とかにアダマンコーティングなら、多少体が傷付くが力任せに引きちぎれるのだが、総アダマンタイトではさすがにどうにもならん。が、俺には魔法がある! 魔力を大量に使えば、クリエイトゴーレムでも変形させることは可能だ。
クリエイトゴーレムを使おうとして、違和感がある。魔力は練れるのだが、魔法が行使できなかったのだ、なんぞこれ?
というか、何でこんな独房みたいなところに俺は入れられてるんだ?
キョロキョロしていると、部屋の扉が開いた。
「シュウ君、少しは落ちついたかな?」
「何で俺が拘束されてるんだ? 理由によっては……さすがに怒るぞ。娘たちが寝込んでいるから、原因を取り除いて治してやらなきゃいけないんだぞ」
「分かってるわよ。でもね、よく考えて。私はそこまで得意じゃないけど、みんな回復魔法を使えるのに回復していない現状をね。万能薬だってあるけど、誰一人として飲ませていないことをね」
魔法も万能薬も使ってない、使っても意味がないってことか?
「魔法や万能薬では治らないのか? それなら尚更大変じゃないか!」
「違うの。魔法でも万能薬でも簡単に治るのよ」
「じゃあ何で治さないんだ!」
「それはね、子どもたちがかかっている病気が、魔法や万能薬で治すととても大変な事になるからよ」
大変な事になる……?
「シュウ君は知らないと思うから言うけど、特に名前の付けられている怖い病気じゃないのよ。3~4日も寝ていれば問題なく治るの。そして1度かかれば2度とかからないタイプの病気なのよ」
麻疹みたいなものか? 何で治さないんだ? 治るんだろ?
「細かい原理は分かっていないけど、この病気を途中で魔法や薬で治すと、何度もかかるようになってしまうんです。昔、貴族が自分の子どもたちを万能薬で治していて分かったのです。
それ以来、魔法や薬で治すことはタブーとされているんですよ。子どもの頃なら3~4日寝てれば済みますが、大人になってかかると1週間は寝込むことになるんですよ」
マジか、俺が魔法で治すことを考慮して、みんなが全力で止めてくれたのか。
「本当なら、知られずに4日間過ごせればよかったのですが、シュウ君が知れば絶対に魔法で治そうとするだろうと思って、全力で阻止したんですよ。寝込んだと聞けば、絶対に私たちの話を聞かないで、治しに向かうことは分かっていたからね。だから、悪いと思ったけど黙ってたのよ」
俺は何も言えなくなった。実際に俺は話を聞こうとせずに突っ走ったからな。
「状況は分かった。とりあえず、この拘束を解いてくれないか? 直接見に行くのは許可されないと思うから、カメラで覗くのは良いだろ? 子どもたちは苦しんでるのか?」
「熱が出ていて、体が少しダルいみたいだけど元気よ。今日いっぱいは寝ているだろうけど、明日には体を起こせるようになると思うわ。多分、みんなでアニメを見るかゲームをするくらいには、回復するんじゃないかな? 熱が出ているから疲れやすくなってて、すぐ寝ると思うけどね」
そこまで厳しい病気ではないんだな。今日は辛いかもしれないけど、明日は元気な姿をみれるのか……
「カメラ越しで見るのは、明日にするわ。見たらまた沸騰してしまいそうだからな」
「子どもたちのことを思ってくれるのは嬉しいけど、今回ばかりはね。さすがに1人にするわけにはいかないから、今日はシリウス君に見張ってもらうことになるわ。引き続き子ども部屋には、メグちゃんが待機するけどね」
信用ないな。確かに苦しんでいれば、我を忘れていく可能性だって否定できないからな……
「了解。今日は大人しく、趣味部屋……だとすぐに子ども部屋に行けちゃうから、クルーザーにでも行っておくか。近くに水があれば、シリウス君が俺を止められないってことも無いだろうし。誰か、一緒に行ってくれる人はいるかな?」
「それなら、年少組のメンバーがついていってくれるわ。1人にしておくのは違う意味で心配だからね」
そこまで考えられていたのか、拘束を解いてもらって、俺は年少組の妻たちとクルーザーへ向かった。後、大量にスライムたちがついてきた。それ以外の従魔は全員が娘たちの近くにいると言って、スライムたちだけの同行だ。っと、聖獣3匹もいたな。
気を紛らわせようと、いろんなことをしてくれたが、俺の頭の中は子どもたちの事でいっぱいだった。
風呂に入って寝ようとしたが、まったく寝れない。かといって本を読む気にもゲームをする気にもなれない。ずっとグルグルと考えていると、朝になっていた。
子どもたちが元気になったと聞いて、カメラ越しに少しだけ話すことができた。少し目がトローンとしていて顔が赤いが、元気に会話をしていた。
俺はそこで張りつめていた緊張みたいなものがキレて、倒れるように眠ってしまったらしい。
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