1692話 フラグを建てたつもりはないのに……
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そういえば、下の子たちが家の中を動き回るようになって、特に立ち上がって歩き始めたあたりからスライムたちを、家のいたるところで見るようになったな。前は何処にいるか分からなかったのに、今は見えるところに結構な数がいる。
こいつらは、何時間も何十時間も何日も、その場で動かずに待機できる精神の持ち主だからな。何考えているか分からんが、今回は良く分かる。子どもたちが生まれてから、転んだ時に備えて1階はソフトフローリングに絨毯を敷いている。
多少歩きにくいが慣れてしまえば大した事はない。子どもたちの安全が第一だ。それを分かっている従魔たちは気を付けている感じだな。その中で一番忠実にその思いを受け止めてくれているのが、スライムたちだということだ。
転びそうになったら、何処からともなくクッションになるようなポジションに位置を取るのだ。だけどこのプニプニクッションのおかげで怪我をしないのだが、倒れた時の感触が面白いのか何なのか、ダイブするようにスライムたちへ飛び込む事があるんだよな。
それに歩くのが面倒になったら、スライムに乗ってスライムナイトみたいな感じで、いろんな所に移動している姿もたまに見ることがある。スライムナイトであれば、上の子たちもたまに遊びでやってるな。お転婆3人娘たちがレースしていることもあるんだよな。あれ? 上の子たちの影響か?
改めて子どもたちを見てみると……一番大人しいのは、ウルだな。次点でシンラかな? 後は、どんぐりの背比べみたいなものだろう。
これ以上考えると、いけない事を考えそうなのでここで止めよう。
スライムたちが暇を持て余して俺に絡んでくることが、前よりも増えたんだよな。特に廊下を歩いている時に急に足に絡んできて、転ばせようとするんだよ。しかも本気じゃなくて、不意を突くように仕掛けてくるから、最近はダンジョンの中より廊下の方が警戒しているよ。
最近よく使うようになった家の屋上へ向かう。
天気がいい時にここで、パーゴラ……住宅の軒先や庭に設ける、つる性の植物を絡ませる木材などで組んだ棚。日本では藤棚が一般的だ……の下にリクライニングソファーを置いて、ゆっくりするのがマイブームなのだ。
パーゴラから少しだけ光が入ってくるのが心地いいんだよな。バーベキューは庭でやる事が多いのだが、家族だけでやる時はここを使うことが増えてきた。
屋上に出る扉を開けて、閉めた。
こめかみを揉んで目をマッサージして、再度扉を開ける。
うん、見間違いじゃなかった。
「イケイケ、スラ吉!」
「負けるな、スラ蔵!」
「今から行くよ、スラポン!」
フラグを建てたつもりはなかったが、上の子、ミーシャたち3人が屋上にコースを作って、スライムに騎乗してレースをしていた。俺がいつも使っているパーゴラの下では、俺の妻たちが10人程いて、下の子たちもスライムに騎乗して待機していた。
上の子たちはスライムの上に綺麗に座って、武器を持てば戦えるような姿勢だが、下の子たちはたれ〇ンダみたいな姿勢で騎乗している。
リアクションに困る光景だった。ここまで本格的なレースは今まで見た事なかったからな。それに一昨日ここを使った時は、コースなんてなかったのに……あっ! パーゴラの上にメイとアクアがいた。こいつらの仕業だな。本当に俺の子どもたちに甘いんだから。
レース中だったと思うのだが、スミレが俺を発見すると駆け寄ってきたのだ。それに釣られるようにミーシャとブルムがついて来ている。シンラも俺を発見してスライムに指示を出して、こちらに向かってきた。それを追いかけるようにプラムとシオンも来たな。
3人に同時に話しかけられ、困りながらも対応する。
話していると不意に視界の端を何かが通り過ぎた。そして頭の上で「ふぎゃっ」という声が聞こえ、慌てて上を向くと視界が遮られ、口と鼻を同時に塞がれた。
この感触はニコだと思うのだが、その前の声を出したのは誰だ?
ニコを引っぺがしてからそこら辺に放り投げ、状況を確認する。
妻たちは慌てる様子もなくこっちを見て笑っている。ということは、危険なことは起こっていないということだよな?
視線を巡らせると、シンラがスライムに埋もれて楽しそうにしている。そこにプラムとシオンが飛び込もうとしている瞬間を見た。
どういう状況だ?
いつの間にか近くに来ていたウルが教えてくれた。
どうやら、シンラの乗っているスライムが俺の頭の上を目指してジャンプしたのだが、着地する前にニコの妨害にあったようだ。妨害にあった時にシンラが出した声が、俺が上を向くきっかけになった。妨害したニコがそのまま上を向いた俺の顔に着地。
はじかれたシンラは、怪我をしないように集まってきたスライムたちに受け止められ、スライムに埋もれて今の状況になったのだとか。
妻たちよ、笑っていないで少しは心配しなくていいのか?
えっ? スライムたちが子どもたちを怪我させるとは思っていないから、安心して見ていたんだとか。
スライムたちを信頼しているのは良いけど、少しは心配しろよ!
埋もれて楽しんでいる下の子たちは、邪魔するとめっちゃ怒るのでしばらくは放置しよう。ミーシャたちを連れて妻たちの輪に混ざろうとすると、懐かしい重さが頭の上に、ニコが俺の頭に着地した。
ミーシャたちもスライムを頭の上に乗せたいと騒ぎ出し、小さくなって頭の上に乗るようにお願いする。
さっきまでは子どもたちが乗っていたのだが、立場が逆になったな。
今日の御茶菓子はちょっと不揃いだな、娘たちが手伝って作ったんだろうな。味は……うん、合格点だろう。使っている材料が同じでも、お菓子って作り方で歯触りとかが全然違うんだよな。
工場での大量生産で一定の品質に保たれているお菓子に慣れた俺は、初めはブラウニーたちの作るお菓子にいちいち驚いてたもんだ。懐かしい思い出だ。
食べて分かりやすかったのは、チョコレートだろうな。日本では100円で満足できる高品質のチョコがあるから、パティシエの作る高価なチョコはあまり目立たないが、食べてビックリ、舌触りとかが全く違うんだよな。パティシエすげえ! と思ったもんだ。これ言うの何度目だ?
お転婆な一面があるが、こういった事にも興味を持ってくれているようでよかった。
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