1691話 子どもたち
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そう言えば、俺の寝相とシンラの寝相がシンクロしていた。正確に言うと、俺もシンラも左右から抱き着かれた状態で、寝返りをうてない状況だったのだ。
もしかして、シンラの抱き着かれ癖って俺の所為だったのかな? そんな事を考えてしまうようなシンクロ率だった。先に起きてお茶を飲んでいた妻が撮った写真を見て、みんなで笑ってしまったくらいだ。シンラは不機嫌な面をしていたけどな。
プラムとシオンより先に起きたシンラは、近くで寝ていた姉たちを起こして救出してもらい、元気いっぱいにベッドの上をハイハイして、俺に頭突きをかましてきた。自分も痛くて泣いていたが、回復魔法をかけてやり痛みを取ると、定位置と言わんばかりに俺の膝の上におさまっていた。
不機嫌な面になったのは、この時に写真を見せてもらいみんなが笑ったせいで、ふくれっ面みたいになっていたのだ。
その顔が可愛かったのか姉たち抱き着かれて、完全におもちゃにされていた。その内お前には女難の相(姉妹)とかステータスに表記されそうだな。
機嫌を悪くしたシンラの機嫌を直すのに苦労した。好物のハンバーグを朝出してやると言ったら、ふくれっ面から笑顔になったけど、ピースをして2つ要求してきた。ちゃっかり者だ。シンラの2つなんて、俺の1つより量は少ないんだけどな。
シンラの面白い所は、この年頃なら照り焼きソースとか、少し甘めのタレが好きと思いきや、おろしポン酢とか和風ドレッシングなどをかけて食べるのが好きなんだよな。2つ要求したってことは、そういうことなんだろうな。
シンラを抱っこして食堂に向かう最中に、昨日のことを思い出した。
ミーシャだけでなくスミレもブルムも、俺の仕事、領主の仕事については全く興味を示さなかった。体を動かすのが好きで、執務室で事務仕事なんてしたくない! といった感じだ。
ウルは多少興味を持っていたが、簡単な内容を聞いて無理だと判断したのか、グリエルの立場では何をしているのか、みたいなことを聞いていたな。
下の子たちは誰一人として理解してなかったが、走り回るプラムとシオンは姉たちと同じように育ちそうだと思った。シンラは唯一可能性があるかもしれないが、2人から逃げるために俺の膝の上を占拠して、俺の真似みたいなことをしてただけという可能性も捨てきれない。
俺は定命では無くなっているので、代替わりしなくても問題はないのだが、俺もずっと縛られ続けるのは嫌なんだよな。自分の居場所ではあるが、何処にも行けないのはね。しょっちゅうどこかに行ってるとか聞こえてくるけど、全部仕事だからね!
そこ! この世界を巡らなくてもマイワールドで好きな所を作れるから、何処にもいく必要がないとか言わないの!
食堂につくと同時にシルキーたちにお願いして、シンラ用にハンバーグを用意してもらう。シンラだけに出すとプラムとシオンが怒るので、みんな平等に出してもらうことにした。ミーシャたちにも聞いてみたが、ビュッフェだから好きな物食べる! と返事が返ってきた。
上の子たちは自分で選べるから好きな物を食べれるもんな。下の子たちは栄養バランスを考えた、プレートで料理が出されているからな。
今日は何を食べようか、トーストにベーコン、スクランブルエッグ、コーンスープにサラダ山盛りって所かな。サラダはしそドレッシングで! トーストにはマヨを塗って、ベーコンを乗せてその上にスクランブルエッグを乗せた。
さすがにトースト1枚ではお腹がいっぱいにならなかったので、2枚目は普段はあまりしないシュガーマーガリンにして食べてみた。これ食うのって何年ぶりだろ、久々だと美味いな!
仕事に行こうとしたらシンラが離れなかったので、ライラに一緒に来てもらい、職場に連れていく事にした。俺の執務室は土足厳禁で床に敷いている絨毯は、ブラウニーたちの掃除によって綺麗に保たれているので、シンラを遊ばせておいても何の問題もない。
って思ってたのに、トイレの時以外は俺の膝の上にいた。膝の上で寝られると邪魔なのだが、と言ってもシンラが退くわけも無く、母親のライラは苦笑するだけだった。
少し気になったので、ライラに書類をみせてみた。意見を聞いてみたかったのだ!
「これって俺が見る必要あると思う?」
「他の街の報告書もあるんですよね? そう考えると、書類の枚数が少なすぎませんか? 領主であれば、もっと細かい報告書がたくさん上がってくると思いますよ」
おっと、こんな内容なら読む必要ないんじゃないか? みたいなことを言ってもらえるかと思えば、もっと細かい報告書がたくさんあってもおかしくないと言われてしまった。
「グリエルが全部やってくれても、問題ないと思うんだけどな~」
そういうと、扉がすごい勢いで開かれた。寝ていたシンラがビクッとして目が覚めたが、入ってきたのがグリエルとわかったためか、またすぐに眠りについた。お前、図太いな。普通そこは泣く所じゃねえかな?
「シュウ様がトップでなければ、まとまらない状況なのですから、大人しく最低限の報告書だけ読んで、必要なときにだけ判断してください!」
それだけ言って戻って行った……地獄耳か?
「シュウ様は気付いていないかもしれないですが、あなたを中心にディストピアもゴーストタウンも、その他の街も成り立っているんですよ。しばらくは、そうですね、後30年位はトップでいてもらわないと困ると聞いてますよ」
俺の妻たちにも話がいっているみたいで、俺がトップにいることがどれだけ大切なのか説かれてしまった。
しかもタイミングよく起きて、膝の上に立って俺の服で遊んでいたシンラが、肩にポンポンとしてめっちゃ笑顔で俺の事を見てきた。どう反応するのが正解だろうか?
あれから、度々シンラが俺について執務室へ来ることになった。だけど最初の日以来、執務室では俺の膝に乗ってこなくなった。一応専用のベッドを準備したのだが、それよりグリエルたち以外ほとんど使うことのないソファーや、床の絨毯を気に入っているらしく運動なのか走り回っている。
っと、足に衝撃を受けて視線を落とすと、シンラがまた泣いていた。ったく、ライラも笑ってないで止めろよな。
抱き上げて高い高いをしてあげると、キャッキャと笑い出した。現金な奴だな、楽しければ何でもいいんかな。もう少しで仕事も終わりなので、そのまま肩車をしてやる。
頭を叩くな、暴れるな!
10分もあれば終わるような仕事だったのだが、頭を叩かれ、暴れられ、髪の毛を引っ張られ、そのせいで1時間程かかってしまった。
そういえば、最近ミーシャたちといる時間が減って、シンラといる時間が増えたな。ミーシャたちはあれ以来ここに来てないしな。シンラも遊びに来ている感覚だし、プラムとシオンはシンラにくっつきたいだけだし、お父さんにもうちょっと興味を持ってほしいな……
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