1688話 戦後処理の方が大変
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戦後処理、簡単に言えば、両国とも交渉は決裂した。
普通に考えて「この計画を発案した人間、実行に移しことに許可した人間も、全員奴隷に落とします」というこの部分、国王がそれを知らないわけがなく、許可も出しているのが当たり前だろう。もし国王の許可なしに行っていたのであれば、国家反逆罪になるのだがそこまで馬鹿な奴はいないだろう。
そもそも、何でこんなことをしたのかということは分かっていないが、今回参加した17の国の内14が冒険者を不当に奴隷化して、戦争に参加させていたことが分かっている。
それはすぐに国に住む冒険者たちも知る事となり、独り身の冒険者はすぐにギルドへ駆け込み、他国に行く算段をつけている。
後に家族持ちの冒険者も、ギルドから「国からの撤退に便乗して一緒に来るのであれば、ある程度保証する」というお達しがあり、移動中も護衛という仕事で多少のお金がもらえるようになっていた。
全部の国と没交渉になったので、まず戦争で捕えられた兵士たちは、権利が面倒になったということで、犯罪の称号のついている兵士は、その場で処刑することになった。処刑の前には国へ通達していたのだが、冒険者ギルドの要件を飲まなかったため半数程の兵士の首が、首都の門前に並べられる事となった。
それだけで終わりになるわけも無く、今回初めに声のかかったダブルの冒険者のチームが中心となって、首都に攻め入った。
攻め入る前に、「こちらに手を出さないのであれば、攻撃する事はないので大人しくしているように。もし攻撃を考えている人間を隠していたり、手伝っていた場合はその場所から半径20メートル以内の人間も同罪とみなしますので、しっかりと見張りあってください」と拡声魔法で何度も通告をした。
首都だけあって立派な壁に門がついていたのだが、今回唯一駆り出されたトリプルの冒険者が、拳一つで門を破壊した。正直、俺たちでも素手で門を破壊するのは面倒だ。スキルも使わずに力任せに殴り壊していた。
多分だが、肉体の強度というか強さだけなら、シュリ以上かもしれない。もともと持って生まれた力なのか、技術はなく力任せという印象が強い。
気になったのでステータスを覗かせてもらったのだが、数値だけ見ればシュリの3倍は力があるようだ。他の項目に関しては、体力という部分が2倍程で素早さが同じくらいだ。その他はシングルの冒険者よりも低かったな。
シュリみたいな英雄症候群では無く、ステータス上は普通の人間だった。マジでどういうことだ?
『わお! 珍しい奴がいるね! 今、あんたが見ている人間は、覚醒者って呼んでるわ。何かが覚醒したわけじゃないけど、その能力の高さからそう呼んでるだけなんだけどね。ちなみにそいつがなんで強いのかって言うのは、魔力がすべて身体機能につぎ込まれているせいなのよ!』
常時、肉体活性に魔力を注ぎ込んでいる感じか?
『ん~近いんだけど違うのよね。何がどうなってあれが生まれるかは分かっていないけど、魔力がそのまま力や体力に変換されてるみたいなのよ。その効果は、肉体活性の非じゃないほどの効果を発揮するわ。数値を見たからわかるでしょ。 あれは本当におかしいわ』
面倒な奴がこの世界に居るんだな。
『突然変異みたいなものだから、数多ある世界の中で10年に1人位しか生まれないから、あんたが次に会うには、万年単位で生きても会えるか分からないわよ』
まぁ安心はできるかもしれないが、すでに目の前にいることが問題だったりするんだよな。こいつって、問題児だからトリプルなんだよな? どんな問題児なのかが気になる所だ。
そしてこの冒険者、驚く事に武道着のようなもの以外身に着けておらず、そのまま門の中に入って行ったのだ。王城へ向かう間に兵士が待っていたのだが、何の工夫もせずに歩いていき大量の槍に串刺しにされたのだが、針で刺されたような傷しか負っていなかった。
いやいやいや、さすがにそれはおかしいだろ! 貫通しないで刃先が刺さるならまだわかるが、皮膚が少し傷付いただけって常識外れにも程があるのだが!
その傷もすぐに治り、攻撃してきた兵士たちはすべて頭が無くなった。破裂するように……
俺はこの姿を見て確信した。戦闘の悲惨さがトリプルをつけられた所以なのだと。
残りの冒険者が何をしているかと言えば、ダブルの冒険者はこの破壊神の後に続き、シングルの冒険者は他の冒険者を先導して冒険者ギルドへ向かい、撤退するための準備を行うようだ。
俺? 門の外からのんびりと眺めていただけだよ。名目上は、陣地の防衛と退却路の確保だ。後は、処刑されていない兵士たちの監視だね。
街攻めに絶対に参加しないと言い切ったため、この役割が与えられた形だ。結構文句を言われたが、俺に強制をするなら俺たちに勝ってからにしろ! と言って、挑んできたシングルの冒険者10人を1人で意識だけを刈り取ってやったわ。相手は何をされたか分からずに気絶して、試合終了だな。
それを言った時に、あのトリプルの冒険者がいなくて助かったわ。あんなのと戦闘したら、マジの殺し合いにしかならん気がする。
ギルドからの撤退が終わった後は、捕らえた国のお偉方を連行するために冒険者たちは、また首都の中へ入っていった。
国王と側近、大臣に文官が50人程連れてこられた。こいつらが許可を出した愚か者たちらしい。真偽の判定は魔導具を使用したようで、まず間違いないだろうとの事だ。鑑定以外にもそんな魔導具があるんだな。
こんな感じで14の国を巡って3ヶ月ほどかかった。長かった。
ドッペルを使っていたから、移動中は交代で中に入っており、大半は自分の家でくつろいでいたんだけどな。あ、もちろん仕事はしてたよ。溜まると大変だからな!
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