1678話 何とか助かった……
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簡易ダンジョンの中にクリーンルームを作り、その中に8人分の大きな湯舟と湯船に純水を注ぎ込み続けれるように、水道のような物も作成する。
感染する可能性があるからと言って、騎士たちの中に仲間を見捨てるような奴はおらず、進んで移動を手伝ってくれている。
地下に用意した部屋、簡易ダンジョンの中に運んでもらい、まずは純水で体を洗い、そのまま水の入っていない湯船に入れてもらった。
体を洗うのは、純水に体が浸かると皮膚の汚れとかで概念上の純水とは言えなくなるため、効果がなくなってしまうとチビ神から忠告を受けたので、騎士たちに体をきれいにするようにお願いしたのだ。
で、今湯船の中に入れてから体を詳しく調べてもらっている。話では体のどこかに黒い靄みたいな物があるとの事だった。
探してみると8人全員に黒い靄がかかっている部分があった。
こうしてみてみると、普通ではありえない現象だな。だって、体の一部に黒ずみではなく黒い霧のような靄がかかっているのだ。この世界に慣れてきたとはいえ、これは不思議過ぎる。
魔法があってもスキルがあっても、絶対にありえない現象がここで起きてるんだよな。
さすが意味不明の神の力、マジで殺してやりてえ。
「っと、そこのレバーをひねって湯船に水を入れてくれ。少し冷たいけど我慢してくれ、今から水を入れるぞ。話だとこの水を使うことで、呪いが解呪されるみたいだ。担当の騎士たちは黒い靄がなくなるのを確認してくれ」
湯船には大柄の騎士の体格でも、10倍以上の純水が入る程の大きさである。レバーを回すと大量の水が湯船に流れ込む。
20分もしないうちに湯船がいっぱいになった。5倍もあれば十分という話だったが、解呪のために大量に使う純水は、1人当たり20倍以上の量を準備している。いっぱいになった後も、かけ流しのように入れ続けた。
30分もしないうちに6人の靄が消えた。
だが、残り2人の靄は1時間経っても消えなかった。
どういうことか分からず、チビ神に連絡を取る。
『純水につけても呪いが消えない? ん~、そういえば、解呪する際に呪詛をかけた相手に返すらしいけど、対象がいなくなると、返す相手がいなくなるから、返した相手が死んだのかもしれないわね。ってことは、神界であれが起こってるのかな? 創造神様に伝えて、隔離してもらわないといけないかしら?』
ってことは何だ。この2人は助からないってことか?
『そうだね。呪い、呪詛は返すことでしか、解呪することができないのよ。てっきり知ってると思ってたけど、知らなかったみたいね』
クソ、もう助けられないってことかよ。
『体力がなくなる前にポーションを使い続ければ、死ぬ事はないけど体が動く事はないと思うわ。後助けられる方法は、仮死状態にしてから、生き返らせるしかないかな? 仮死状態でも死ぬ事には変わりないから、呪詛をまき散らすわ。確か半径100メートルくらいに、呪いをまき散らすと思うわよ』
呪いの靄がまだ残っている2人を見る。呪いがかかっていた中で、体が大きい2人だ。まだしゃべる事は出来る。本人の許可をもらって、最後の望みをかけるしかない。
1つ確認だが、呪いは人間にしかかからないのか? 魔物にもかかるのか?
『ん? あ~、魔物にはかからないわよ。だからあなたの使っている、ドッペルゲンガーなら問題はないわね。呪いはその場にいないとかからないから、生身の方には何の影響もないわよ。人間だけが罹るように調整された呪いだからね。でも返されると神でも死ぬのよね。空気が汚染されるから迷惑なのよ』
これで1つ解決だな。本当に迷惑だな! 人間だけに調整された呪いとか! それなのに空気が汚染さるだけならまだいいだろうが!
ふ~、で問題は、どうやって仮死状態にして、蘇生をするかってことだな。
地球で医学の知識があれば出来るかもしれないけど、この世界では100パーセントは無理だよな。殺すだけなら簡単だけど、そこから蘇生を考えて殺すとか無謀にも程がある気がする。
魔法で瞬間凍結できたとしても、安全に解凍できるとは限らないし。となると、ちょうどいい毒があれば、可能かもしれないか?
本人たちに、まず伝えるか?
2人は、死ぬ可能性を理解して毒を使うことを受け入れた。どうせ死んでしまうのだから、生きのこる可能性が1パーセントでもあるなら、それに賭けるそうだ。意思疎通が難しかったので、時間はかかったが何とか理解できた感じだ。
毒を飲ませるために使用するのは、魔法で作ったゴーレムだ。声を届ける管を使い呪いにかかっている2人でも声が聞こえるようにしている。
この毒は仮死状態と言っても肉体的には生きているとの説明があり、ポーションにつけておけば2~3日は肉体が死ぬことはないらしい。だけど、問題なのは半分ほどの確率で蘇生ができないらしい。
理由は、仮死状態になる際に脳まで死んでしまうことがあるのだとか。それが半々の確率らしい。
よくそれなのに飲む気になったな。他の毒となると、もっと確率が下がるか即死ということになってしまう。地球の薬の知識があれば、もっと違う結果になったかもしれないけどな。医者じゃないから判断できるとも思えないが。
2人が覚悟を決めて毒を飲んだ。200メートル程離れている俺たちにも、呪いがまき散らされている様子が見て取れた。壁などの物理的な影響も魔法障壁のような魔法的な影響も全く関係なく、まわりにまき散らされる呪い……
今近付けば、呪われてしまう。この世界で唯一影響を与えることができるのが、純水である。魔法を使って操作すると効果がなくなってしまうので、機械を魔導具だと言って大量の純水を霧状にしてまき散らす。風速50メートルを起こせるバラエティーで使うような、大型扇風機を何台も使って。
呪いは目に見えてなくなっていき、20分後には呪いは見えなくなった。呪いには風を当てても動く様子が無かったので、本当に神の嫌がらせとしか言えないな。
呪いが消えた所で、毒を消すための万能薬を口に流し込む。
1人は咳き込み息を吹き返したが、もう片方の騎士は、息を吹き返す事はなかった。
手を尽くしたが助けられなかった。悔しいと思う反面、自分の連れてきた冒険者たちじゃなくてよかった……と思う俺の心が許せなかった。騎士たちからすれば、7人も助けてもらえて感謝しているのだが、それでも自分たちじゃなくてよかった、と思う気持ちを持ってしまった自分に嫌悪した。
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