1659話 しょうがない
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チビ神の余計な知恵入れで、俺は妻たちと戦うことになってしまった。そう、妻たち……複数形なのだ!
せめて2~3人で終わりかと思っていたら、半数以上が名乗りを上げて来たのだ。しかも、面白そうとか言って、従魔たちまで参加してくる始末だ。マジで勘弁してくれ。1人休憩込みで20分戦ったとして、妻たちで15人、従魔たちが20匹……700分、半日近くだぞ!
結局俺に拒否権は無くなったわけで、ミリーがまとめ役となって戦う順番を決めている。そして、さすがに12時間ぶっ続けだと俺がもたないであろうということで、3日間開催されることとなった。
一応俺に合わせてくれているみたいだけどさ、どうせなら、試合数を減らしてほしかったな。チビ神、いつかぶっ叩いてやる!
「はぁ……ヤル気でねえな」
俺は神のコロッセオに準備された俺側の控室でため息をついていた。
『主殿、大丈夫ですかにゃ?』
さっきから俺の膝の上でモフモフされているダマが、心配そうに俺に声をかけてくれた。
「あんまり大丈夫じゃないけど、本気でやらなかったら、3ヶ月子どもたちに接触禁止で、口もきいてもらえなくなるとか……本当に勘弁してほしいよ」
少しでも癒されればということで、無抵抗にモフモフさせてくれるダマの存在が本当に助かっている。
今日の対戦は12回か。20分で1試合、休憩10分の30分インターバルか。結局6時間の長丁場なんだけどな! 俺の事考慮してくれてないよな!
一番初めは、クロか……
試合の時間になると、控室から強制的にバトルフィールドへ。無駄な仕様にDP使うのは止めてほしいんだがな。このコロッセオ召喚するのに5000万DPも使ったんだが! DPが余っているとはいえ、やりたくないことを強制させるこの場所に5000万DPは無いわ!
クロがヤル気満々で牙をむき出しにしている。なんだ? めっちゃ敵意をむけられている気がするんだが? これから戦うからだよな?
そんなことを考えていると、ダマから
『主、クロ先輩が、「主ばっかり子どもたちと遊んでいてズルい!」とか言っていますにゃ』
おうふ……まさかの身内から恨まれているというか、不満かよ! しかも、俺が自分の娘たちと遊んでいることをズルいと言われても困るのだが。つか、お前たちも昨日めっちゃ遊んでたじゃねえか!
なんか、クロの理不尽なやっかみに対して、イライラしてきた。
本来は、動物虐待とかは嫌なんだけどな。でも、さすがにクロの理不尽なやっかみにはお仕置きが必要じゃねえか?
よくわからんが、チビ神が実況兼審判をするようだ。言いたいこと言ってやがるなこいつ。
開始の合図が鳴らされた!
魔物の種族特性で、人間よりクロたちウルフ系の魔物の方が圧倒的に早いが、改造された俺の体と反射神経をもってすれば、見失うことは無い!
ジグザグにたまにフェイントを入れて距離を詰めてくる。さすがに正面からではなく、フェイントを入れて左後方に回り込み俺に攻撃を仕掛けて来た。
が、俺にはその動きは見えていたぞ! いくら早くても、目の前で緩急をつけても、そこまでの巨体を見失うことは無いのだ!
両手で持っていた刃引きした大薙刀の柄を脇に挟み、体をひねると同時に左腕でも加速させて遠心力を加えて一気に振り抜く。
頭を捉えることはできなかったが、首にヒットしてクロの負け判定でバトルフィールドから転送された。
八つ当たり気味だったけど、一撃でなんとかできてよかった。イライラしてたとはいえ、追い打ちとかしないで済むならそれでいいよな。
2~4試合目は、ギン・コウ・ソウの初期召喚組の従魔たちと戦ったが、ギンはクロと同じ感じで倒し、コウとソウは魔法戦で倒している。高機動砲台の俺と打ち合うには、まだまだだったな。
5試合目は、初の妻だ。しかもヤル気満々のライム……魔法戦だな。俺は、コウとソウのときと同じように杖を装備している。
今までほとんど使っていなかったが、杖は魔法補助機能があるので、多少だが発動が楽になることが分かっているので、使っている感じだ。
さてさて、どう戦うも何も近接戦でさくっと終わらせたかったのに、娘たちに俺がどれだけ強いか教えるために、相手に合わせて戦うことっていうのが、オーダーなんだよな。面倒な……
バトルフィールドに転送される。
ライムも杖をかまえており、魔法戦が始まる。
ライムの初撃は、ストーンバレット。
小さい石の塊に魔力を込めて硬くしてから速度を上げている。
ストーンバレットは発動後に軌道を変えられないので、避けるのがベターだ。機動力を生かしてかわしていく。連打で放たれる石礫は、コロッセオの壁にめり込んでいる。込められている魔力の量がやばいな。当たり所によっては、一撃で俺を殺せる魔法である。
魔力の込め方によって、最下級の魔法でも相手が殺せるんだから魔法って恐ろしいな。一般的に火力が高いと言われているのは火なのだが、ディストピアでは一対一は土系の魔法が常識となっている。一対三くらいになると、周囲にも攻撃ができる火を使うようになる。
火って一見強そうに見えるけど、対処法も多く何より魔力を多く込めても、土魔法みたいに速くならないという欠点があるのだ。
だけど弾幕として大量にばらまくなら、ありなんだよね。そう思った瞬間に、ライムは数十にも及ぶファイアボールを打ち込んできた。
相反する属性の方が魔力を消耗しないのだが、この数となると、通常のアクアウォールでも相殺しきれない。となれば、魔力を込めたストーンウォールを半球状に張る。
結界なら余裕だけど、今回は使用制限があるので使えないのだ。
俺の設置したストーンウォールにライムの魔法が当たり爆発している。でもその中に、ドゴォっと鈍い音も聞こえてきていた。俺の予想通り、ファイアボールの着弾に合わせて土系統の魔法を放ってきたようだ。
アクアウォールに魔力を込めてもファイアボールは抑え込めたが、土系統の魔法は防ぎきれなかっただろう。水と言えば雷を連想する人も多いのだが、俺が使うアクアウォールは純水なので、ほとんど電気が流れないのだ。それを知っていて、土魔法を使ってきたライムはよく考えているな。
まぁ、それを考えてのストーンウォールなのだ。
それにしても、前からだけだと思っていたら後ろからもドゴォドゴォ聞こえてくるため、正直焦った。半球状じゃなかったらやられていたかもしれない。
先手ばかり取られていたからあれだが、ここはウィンドカッターを大量に回り込むような軌道で放つと同時に、ストーンウォールを解除して移動する。
ライムの魔力を感知できているので場所は分かっている。今も魔法が放たれているので……え!?
ライムの魔力を感じている場所には、時間差で発動するように仕掛けられていた魔法があったのだ。しかも正確にこちらに向かって飛んできている。このタイプの魔法でここまで精度が高いっておかしくねえか!
となると、ライムはどこにいるんだ?
上手く魔力を隠してるな。俺の魔力もライムの魔力も大量にまき散らされているため、感知できないでいた。
となると……俺はジャンプをして、魔力でごり押しした上級の火魔法、エクスプロージョンを俺の周囲を起点に発動する。
そうしてライムをあぶりだした。
これを使うと周囲の酸素が無くなるから、呼吸のタイミングを間違えると意識が飛ぶんだよね。
ライムの防御魔法は水じゃなくて土か、俺と同じ考えだな。だけど甘いぞ!
俺は着地と同時に地面に両手を置き、更に魔力を使って水と土の合成魔法を使用する。簡易的な属性表記で言うと、沼である。
アースウォールを半球状に張っているが、地面までは使用していないはずなので、アースウォールを回避して攻撃することができるのだ。
足を取られたライムのとる行動は、レジスト用の魔法を使うかアースウォールを解除して抜け出すか……解除しない方を考えても意味がないので、解除した後の追撃に考えを巡らせる。
やはりここは、最速の魔法ライトニングだろう。
ビンゴ!
アースウォールを解除したライムは、沼から逃れるために後方へ魔法を使い飛んだ。そこに向かって、ライトニングを使う。
一撃で倒せなかったが、電撃による痺れはバリアを貫通するため動きが悪くなり、ライムの後ろに回り込み杖を首の位置にあてる。
「勝負ありだね」
ライムとの戦闘が終わった。
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