1655話 この世界の闇……
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ん~体が重い。朝まで疲れが残るようなことを昨日はしてなかったのに、何でこんなに体が重いんだ?
目覚めて寝ぼけた頭で昨日のことを考えるが、やはりここまで疲れるようなハードなことはしていない。ならこの体の重さはなんだ?
右腕を20センチメートルくらい上げたところで、
「へぶぅ」
そんな声が聞こえて、右手の重さから解放された。シパシパしている眼を無理やり開けて、自分の状態を確認する。
それで体が重く感じていることの原因を発見した。子どもたちが俺の体に張り付いているので、全身が重く感じていたのだろう。子どもたちだけじゃないな、今日はピーチなんかの下の子たちの母親も一緒に寝ていたのだ。
ミーシャたち3人は例のごとく、俺の体を抱き枕にするように張り付いており、左手にはプラムとシオンがくっ付いていた。右腕の重さの正体は、シンラだった。顔からベッドにダイブしたようで、さすがに泣き出してしまったのだ。
すでに起きていたウルがシンラのもとに移動して、泣いたシンラをあやしてくれている。
シンラはそれで泣き止んだが、シンラの声で他の子たちも目を覚ましたようだ。起きても抱き着くことを止めないミーシャたち3人には、俺の体の代わりに俺の頭の近くにいたスライムたちに抱き着かせ、身代わりとすることで解放された。
左手のプラムたちは、パチッと目を覚ました後反対側にいるシンラのもとに、俺の体を乗り越えて移動しやがった。可愛いから許すけど、踏んづけるのは止めてほしいな。
母親たちは、そんな様子を微笑ましく近くのテーブルで、お茶をしながら見ていた。いやいや、プラムたちの行動を止めてくれよ。俺、踏んづけられたぞ。
シンラのもとに駆け付けたプラムとシオンは、泣き止むんだ! と言わんばかりにシンラへ抱き着いている。いつもの行動だな。泣いていたからシンラに逃げる余裕がなかっただけで、
ミーシャたちはスライムを笑顔でモニュモニュしていた。こいつらって、抱き心地がめっちゃいいんだよな。しかも体に合わせて変形するのに、適度に硬くてプニプニしててなんかね、幸せな気分になれるのだ。
今日は、俺たちがスチーム掃除機を作ってから1週間が経過した朝だった。
さて、今日も1日頑張りますか!
朝食を食べて、庁舎へ向かい報告書を読んで午前中で仕事が終わる。
重役出勤の上に重役退社とでも呼ぶべきか?
「っと、そうだ! グリエルとガリアがいたら、呼んできてもらってもいいか?」
俺の執務室の入り口で仕事をしている秘書に声をかけて、グリエルたちを呼んできてもらう。
ノックをしてすぐに部屋の扉が開かれる。
「シュウ様、何か気になることでもありましたか?」
そういって、グリエルとガリアが執務室に入ってきた。
「ちょっと前から思ってたんだけど、管理している街の獣人の被害率が高いのに対して、獣人の犯罪率が少ないのは、なんでなんだ?
人間の中には獣人を嫌っているのが多いことも知ってるけど、そういうのはできるだけ排除してるよな? 特にゴーストタウンなんかでは、人間と獣人の犯罪率が9:1以下だろ? 同じ獣人が被害になってたりするのか?」
「あ~そのことですか。同じ獣人が被害を受けていることもありますが、ほとんどが別の獣人ですね。話の流れからシュウ様は知らない御様子ですが、ゴーストタウンの人間と獣人の比率って6:4程ですので、結構な人数の獣人の方が住んでいますよ」
「そうすると、犯罪率が人間に偏り過ぎてないか?」
「そこなのですが、獣人の方たちは今まで苦労をしてきたので、頑張ればいい生活ができるゴーストタウンでは、あまり犯罪を犯さない傾向にありますね。他の街でもゴーストタウン程ではないですが、いい生活ができるので同じ傾向が見られます」
「それに対して人間は、獣人を嫌っている奴が犯罪を犯すと。なんとも愚かだな。帝国では実力があれば関係ないけど、王国なら領主によっては、獣人は奴隷みたいな扱いって話だしな。聖国では、奴隷の中でも最低ラインの生活だったよな」
日本人は島国の所為もあってか、異物、外国人に対して排他的な地域もあるけど、排除しようと動く人は少ない。そういう意味では多民族国家のアメリカは寛容だと思われるが、日本の隣国には日本を目の敵にしている国があるんだよな。
歴史的観点から言えば、日本の行った従軍慰安婦は合法の売春、風俗みたいなものだ。戦場で戦った、命を懸けたことのある人間なら、快楽に溺れて忘れたいと考える人は少なくないだろう。軍が統制のもと機能するために導入したのが、慰安婦というものだと聞いている。
占領した街や村で蛮行を働かせないための、仕組みということでもある。それでも軍人による強姦は無くならなかった。日本軍では強姦は占領地の人間であっても重罪で、場合によっては銃殺刑もあったと聞いている。
だけどさ、慰安婦問題と叫んでいる国のベトナムで行った蛮行は、タダの強姦だぞ。それによって、混血児が少なくとも5000人は生まれたらしい。最大値で言うと30000人に上るのではないかといわれている。
そんな感じで、自分たち(人間)はいいけど、獣人はダメだっていう街が王国には多いのだ。王国や聖国から流れて来た人間の中には、根底でそう考えている奴らが多く、自分たちより良い生活をしている獣人が許せずに犯罪を犯す、という流れのようだな。
獣人による犯罪は、虐げられた記憶が蘇り犯罪を犯してしまった、というケースが多いみたいだ。それでも犯罪は犯罪なので、罪に応じた刑罰が言い渡されてるけどな。
もっと話を聞いてみると、犯罪を犯した人間の70パーセント以上が、相手が獣人だから刑罰を軽くしろといった訴えをしていたそうだ。ゴーストタウンでは、その発言はアウトなので更に罪が重くなるそうだ。
日本では犯罪によって最大刑期が決まっており、複数の犯罪を犯した場合でもある程度の刑期が決まっている。だけど外国では犯罪1つ1つに刑期があり、複数犯した場合はそれを合算する場所もある。
ゴーストタウンを作った人間は俺とバザール、日本人だが、運用しているのはこの世界の人間だ。なので難しい日本式よりは、犯罪に対する刑期を決め合算式を採用している。
とはいえ、この世界での犯罪は、奴隷の首輪による強制労働が常識なので、刑期をまっとうして出てこられる人間はほとんどいない。この世界で犯罪を犯した人間の再犯率は、50パーセントを超えるらしい。金もなく食べるものもない状態で解放されれば、そりゃ犯罪を犯す以外ないわな。そうでなければ野垂れ死ぬだけだ。
実際に野垂れ死にしている奴が多いので、100パーセントにならないだけで、生きている状態での再犯率はほぼ100パーセントなんだとさ。だから、犯罪奴隷は使いつぶすのが決まりなんだと。
犯罪を犯した人間を雇いたいとは思わんだろうし、そもそも刑期を終えて解放されるのが鉱山の入り口とかなんだってさ。
なんかいろんな闇を見た気がするな。
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