1650話 準備が整いそう
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サッカーの勉強をして審判代わりに召喚した妖精は、ジャック・オー・ランタンだ。俺は長いので、ジャック呼びが基本となっている。
何でこいつかというと、火の精霊の一種で四大精霊のガルドから推薦があったからだ。
ジャックは、いくつかあるうちの1つの逸話の通り、「天国へ行くことも、地獄へ行くことも出来ない」存在であり、現世を漂いいろいろなものを見て来た存在なのだとか。
そのせいか、なりたてのジャックは姿が乱れるほど色々なモノを恨んでいるが、長く現世にとどまり続けていると恨みが薄れていくそうだ。今まで興味も示さなかった些細なことが気になり始め、普通では触れられぬいることも感知できない存在であるため、興味の赴くままこの世界を漂い続けるのだとか。
しかもこの世界というのが、神が作った他の世界も含んでいるということが、ジャックの恐ろしいところだろう。
漂っている内に、勇者とダンジョンマスターに興味を持ったジャックたちは、こいつらの観察をはじめ、遊びなどに興味を持ったらしい。
そこで、妖精ネットワークの中でも各属性毎、種別毎に存在しているネットワークを通じて、ガルドに度々「召喚してほしい」と依頼が来ていたそうだ。
この世界では、一般的にジャック・オー・ランタンは、魔物と認識されている。
何故そんなことが起こっているかというと、恨みが深すぎたジャック・オー・ランタンは、その存在が妖精から反転して妖魔に落ちてしまうのだとか。そうすると、現世に顕現して攻撃性が強くなり人々を襲うのだとか。
妖魔ってなんぞ? って思ってたら、説明してくれたよ。
簡単に言えば、魔物の一種なんだってさ。死人が魔物になればアンデッド、妖精が魔物になれば妖魔なんだってさ。妖魔は魔物の一種ということで、倒すことによって魔石をドロップする。
現世に興味を持ちすぎたジャックたちを受け入れてほしいと、ガルドに連絡が入りサッカーの審判として仕事をしてくれるなら、召喚してもいいと持ち掛けたところ、今回の召喚になったのだ。
とはいえ、一気に30人も呼んでほしいと言われたときには、こめかみを抑えたけどな。
この30人のジャックたちは、鬼人とスケルトンたちの練習に付き合わせて、簡単なチーム戦などをするときに審判をしてもらい実戦経験を積んでいる。
審判用の動画も準備しているので、審判をしていないときなどは勉強をしてもらっている。
と言っても、ずっと勉強ばかりさせていればジャックたちは爆発するだろうから、ゲーム機も買い与えている。サッカーの審判の勉強や練習に支障が出ない限り、自由に遊んでいいように複数台準備した。
そのおかげで、概ね計画通りに審判を確保できたと思う。しかも、複数でドローンみたいにいろんな角度から見ることができるので、隠れて反則をするのは地球より難しくなっている。何せ、選手1人に1ジャックつくため、ほぼすべての行動が見られるのである。
同時に2試合行うこともあるだろうから、時を見て数を増やす必要があるかな? それに、人間の審判もいずれ増やしていきたいな。
サッカーに関することは、ひとまず終了だろう。後は、勝手に育ってくれることを祈ろう。
家に帰って自分の部屋に行くと、趣味部屋の方から娘たちの声が聞こえた。覗いてみると、そこでゲームをしていた。自分たちの子ども部屋にもあるのになぜだろう?
一緒に趣味部屋にいたカエデに聞いてみると、下の子たちが寝ているのに大きな声を出して遊ぶから、ここに来たのだとか。
あれ? でもさ、下の子たちの寝る場所とゲームのできる場所って、しっかり遮音されてなかったっけ?
実際には聞こえていないらしいんだけど、あまりにうるさかったのでこっちに連れて来たのだとか。どんなゲームしてたんだよ!
ネタで通称友情破壊ゲームと呼ばれている、電車を使ったあのゲームらしい。俺は召喚した覚えないけど、綾乃あたりに借りたのか? ミーシャたちは深く理解していないようで、貧乏神も楽しんでいる感じだった。
これで娘たちの仲が悪くなるようなことがあれば、綾乃を懲らしめる必要があったな。
遊びに夢中で俺に気付いていなかったミーシャたちが、俺のことに気付き近寄ってきた。うむうむ、3人とも可愛いぞ!
「あれ? ウルがいないけど、一緒じゃないのか?」
「ウー姉は、おやつ作ってる! 今日も美味しいおやつが出てくるの!」
あ~、今日もシルキーたちに料理を習っているんだな。
「よし! みんなでウルの頑張ってる姿見に行こうか?」
3人とも賛成なようでキッチンへ移動する。
そーっと覗いてみると、ウルが真剣な表情をしてスカーレットから指導を受けていた。
「ウー姉カッコいいね!」
「何か、キリッとした表情してる!」
「今日のおやつなのかな?」
ミーシャだけおやつのことを考えているようだ。
何やら平べったい円形の金属に、お玉ですくった液体を落としてT字の道具を使って広げている。これはあれだね、クレープの生地を作っているようだな。
でも、あの技術って結構難しくて、すぐに覚えられるような物じゃなかった気がするんだが……
やはり難しいようで、何度も失敗してしまっている。スカーレットの事だから、失敗しても何かに使うのだとは思うけど、不揃いの生地はさすがに使いにくい気がするけど、大丈夫だろうか?
しばらく、ウルの奮闘を見守ってから食堂へ移動する。
「今日のおやつは、なにっかな~」
ミーシャたちは、自作の歌のようなものを歌いながらおやつが運ばれてくるのを待っている。
目の前に出された物を見て、なるほど! と納得した。
2品出てきており、片方は手に持って食べる一般的に知られているクレープの食べ方ではなく、フレンチで食べるようなフォークとナイフを使うタイプのクレープと、クレープ生地を使ってミルフィーユにしたみたいだな。
うむ、美味いぞ! ミルフィーユの方は、出来るだけ同じような厚みの生地を使っているのか、食感も悪くない。
ウルを褒めておいた。
ウルの頭を撫でていると、ミーシャたちは何もしていないのだが、撫でてほしいとおねだりをしてきたので、みんなの頭を撫でることになった。
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