1645話 意外なものが落ちて来た
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ん~暇になったな。
のんびりしていたら、そんな感想が出て来た。なんやかんやで忙しかったからな。政務の方は特に問題ないし、街のことに至っては俺がタッチすることなんて特にないからな。
さて、何をしようかな? 娘たちは勉強と運動を頑張っているみたいだし、俺もなんかするか?
といったものの、毎日のトレーニングはほぼ欠かさずに行っているから、体を動かしていないわけではないんだよな。小さいダマの背中にニコが張り付いているな。グレンは、俺の椅子の一番高いところにいるし、シエルはどこだ?
探してみると、シエルは娘たちが魔法の練習で庭に作った小さな池に浮かんでいた。池と言うよりは、少し大きな水たまりとでもいうべきだろうか? 聖獣とはいえ、水に浸かりたくなるものなのかね?
「なぁ、ダマ~」
『なんですか?』
「暇だな~」
『そうですね~』
「何かしたいことは無いか?」
『急に何ですか? したいことですか。こうやって庭でゴロゴロしているのも悪くないですね』
「そういうことじゃないんだけど、その気持ちには同意する。何処かに狩りに行きたいとか、何か美味しい物を探しに行きたいとか、珍しい物を見て見たいとか、なんかないの?」
『長年生きるために狩りはしていましたし、ここの食事は何でも美味しいですし、この街より珍しい場所なんてないと思いますよ。我々聖獣は長年生きて来たので、いろんな所へ行っていますよ。今更聞かれても、答えるのが難しいですね』
ダマの言葉に、グレンも「クエー」と鳴いた。ん? お前って、そんな鳴き声だったのか?
どうでもいい発見をしたがすることが増えるわけでもなく、暇なのは変わらずゆったりとした時間が過ぎていく。
椅子の背もたれを倒し、目をつぶれば寝れるくらいまで倒してみた。
世界樹が風に吹かれてわさわさと葉を鳴らしている。今日もスライムたちが、世界樹に登っているな。あいつらの住処みたいになってるぞ。
スライムたちは、世界樹に悪い虫が付かないように守ってたりするのかな? 小説によっては、世界樹に変な虫がとり付いて弱らせる……なんて話もあったな。そうなるとスライム隊は虫ではないが、益虫になるのだろうか?
横になりながら見上げていると、何かが落ちてきているように見える。この距離で見えるってことは、結構なサイズの物体なのでは?
「みんな、上を見ろ!」
ダマやグレン、ニコに警戒するように声をかける。全員が視認すると同時にダマが、
『世界樹の実?』
と言葉を発した。世界樹って実をつけるのか? 有名な龍を探求する有名RPGでは、しずくや葉には回復効果があったけど……この世界樹は、素材にはなるがそのまま使っても、あまり効果がないんだよな。
とか考えていると、もうすぐ地面に到達する距離にまでなっていた。そこが俺の頭の上じゃなければ、あまり気にしなかったのだが、ここにはお気に入りの椅子があるし、どうにかして受け止めるべきか。
「ダマ、風魔法で落下速度をできるだけ下げてくれ」
ダマに速度の相殺を頼むが、おそらくこれ以上速くならないと思うがそれでもかなりの速度だと思う。
水でクッションを作ったところで、勢いを落としきれずに沈んでしまい、結局椅子が犠牲になる未来しか見えない。かといって土を盛り上げてクッションにしたところで、椅子をどかさなければ壊れてしまう。
ならば、半球状の結界を作りすっぽりとハマるように調整すれば、大丈夫だろう。俺を中心に結界を張る。だけど形は輪切りにすると凹のようになっている。このへこんだ部分に世界樹の実とやらを入れてキャッチするのだ。
ズシンッ
と重たい音がする。結界の形が少し大きかったため、落ちた勢いが回転力になったのかクルクルと高速で回っていた。こんなことが起きるんだな。あり得るとしたら、漫画みたいに上に飛んでくのかと思ってたのにな。
それにしてもでかいな。直径2メートルは軽くあるぞ。世界樹のサイズからすれば、小粒の可能性もあるけど、俺たちから見たらかなりものだ。
「ダマ、世界樹の実って言ってたけど、何か知ってるのか?」
『ん~、知っているかと聞かれれば知っていますが、詳しくと言われると分かりません。ただ、美味しいらしいということだけは、聞いたことがあります』
「美味いのか? ってことは、シルキーたちの出番か? っとその前に、ユグドラシル! いるか?」
俺が呼ぶと、世界樹の幹から分体とも呼べるべき存在が現れた。
「いつも近くにいるけど、久しぶりだな。今、実が落ちて来たんだけど、これって普通に落ちてくるものなのか? 街には落ちない? 落ちるようだったら、色々考えないといけないんだが」
ジェスチャーで色々説明してくれた。
どうやら、実が出来そうだったので俺のいるところに落としてみたとのことだ。正直、迷惑なのだが! でも、美味しいから食べてほしいんだってさ。なので今度は、落とすところを作っておくから、そこに落とすようにお願いしておいた。
気になったので聞いてみたのだが、この実を植えても世界樹どころか芽も出さないらしい。食用の実だということだ。
「食べることは決定だけど、まずシルキーたちを呼ぶか」
ニコに呼んできてもらうことにした。すると、すぐにシルキーたちを連れて戻ってきたので、事情を説明すると目を光らせて世界樹の実を見た。
「ご主人様、1つ問題があります! 私たちが使っているナイフや包丁では、皮を剝くことができません」
世界樹の幹より硬いみたいだな。とりあえず、真っ二つにしてもいいか? 中がどうなっているか分からないが、切らないことには始まらないので今回は真っ二つにするようにお願いされた。
前に作っておいて使う機会がなかった刀を取り出して、居合い抜きの要領で真っ二つに切り裂いた。
見た感じは、アボガドのような感じだな。水分は少なく、しっとりとしていてすくい取って食べれそうだ。
シルキーたちはその場で味を確認して、収納の腕輪にしまってからどう仕立てるか話し合ってキッチンへ戻っていった。俺たちは放置されてしまった。
今日はこのままのんびりしようか。
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