1630話 珍しく領主っぽいことをした
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昨日は、シンラにつかまり仕事へ行けなかった。グリエルからしばらく来なくても、問題なく庁舎は回るらしいので休んでもいいと言われているが、さすがに2日連続で休むのは、なんか落ち着かないものがある。
もともと、1日の労働時間は長くない。毎日出勤していれば、平均2時間も仕事をすれば終わってしまう仕事だけに、行かなければと言う気になってしまう。
なので準備を始めていると、何やらソワソワする。何がそうさせるのか分からないが、俺の部屋に変わったところは無い。そもそも、俺には予知とか予見のようなスキルは無い。気の所為だろう。
出勤しようとすると、玄関に半数以上の嫁たちが待っており、見送りをしてくれるようだ。
今更だが我が家は、この世界ではほとんど見ない靴を脱ぐ生活をしている。
そうすると、デジャヴを感じる。何やら近付いてくる音が聞こえる。廊下の先からシンラが現れる。おうふ、この流れか。朝感じていたソワソワ感は、これだったのだろう。昨日と同じように、シンラにつかまった。
こうなったシンラは、靴の裏についたガムよりしつこい粘りをみせる。
そして遅れてきたプラムとシオンも昨日と同じように両足にしがみつく。こりゃ、今日も仕事に行くのは無理だな。
グリエルに連絡を入れると、笑い声が聞こえてきた。もし可能なら、確認してほしい資料が2件ほどあるのでメールを送っておきます、との事だった。
仕事あるジャン! とか思ったが、後で読んでみて理解した。別に急ぐ必要は無いけど、早く確認しておけば仕事が進むというだけの物だった。俺が確認しなくても、ある程度先んじて準備できるモノだったので、もし可能ならという内容だったのだろう。
簡単に言えば、ゴーストタウンで行われる祭りについて、2件資料が届いていたのだ。片方は、報告書のような物、もう片方は祭りを行うための計画書だった。俺が確認しなくても、祭りを行うことは決定しているので、遅いか早いかだけの違いだった。
昨日と同じように、姉たちに回収され何をするか話し合いになった。
今日は、昨日と違い雨が降っている。そういえば、ここで雨が降るのって珍しいな。1ヶ月で3~4日位しか降らないのだ。食物を作るには結構シビアな地域なのだが、水精霊と木精霊のおかげで植物が育ちやすくなっている。その上、ワームが耕しているので栄養も十分なのだ。
外で遊べないので、家の中で遊ぶ事になった。
遊ぶと言っても、下の子たちの相手をして疲れて眠ったら、アニメを見るという流れのようだ。俺っている必要なくね? とか思ったが、寂しい気持ちになるので考えるのを止めた。
お昼と食べた後に、ミーシャたちがおやつを作る! と宣言したので、ブラウニーたちと見守る形で一緒に作る事になった。
普通こういうのって、嫁たちが看る気がするけどミーシャたちが何も言わないのであれば、このままでもいいのだろう。
今日のおやつは、何故かどら焼きだった。ホットプレートで生地を焼き、あんこを挟んだだけだが娘たちは満足している。
次の日、また捕まるのはどうかと思い、先手を打っておく。ミーシャたちにお願いして、シンラを確保しておいてもらい出勤することができた。
「シュウ様、お疲れ様です。2日間、お子様たちの相手をしていたみたいですね。どうでしたか?」
「子どもたちと遊ぶのは好きだからいいけど、息子の行動が大丈夫なのだろうか? と思うことがあるから、どうしたもんだかな」
「シュウ様は、他の貴族みたいにお子様の面倒を看るのを嫌がりませんね? 子育ては母親の仕事だ! とかいう貴族が多いと聞きますが」
「普通の貴族がどうか知らんけど、俺は俺だしな。妻たちがいるから面倒をみなくても問題ないけど、娘たちに嫌われたくないっていうのが俺の素直な気持ちだから、関わりを持ってるんだろうな。躾なんかに関しては、シルキーたちがいるから問題ないしね」
「娘ですか? 私には、息子しかいないので分かりませんが、嫌われたら嫌ですか?」
「多分、俺が異世界というか、日本という国から来たから思うことなのかもしれないな。日本の中でもメジャーなのかマイナーなのかは分からないけど、よくネタにされる内容ではあるな」
「そうなんですね。雑談はこの辺にして、昨日確認してもらったお祭りの計画書はどうでしたか?」
「そうだな。舞台の建設費が高く感じたけど、あれの理由って何かあるん? 建材が高くなったとか?」
「ダンジョンから取れるのに、建材が急激に高くなることなんてありえないですよ。私も気になり確認したのですが建設費が高いのは、前に武闘会を開いた時に使った場所を再整備して、拡張するみたいです。あの計画書では分かりにくかったのですが、あの周辺にもう1つコロシアムを作り大きな広場も作るようです」
あの計画書を見て、コロシアムと広場を作る……なんて、誰が思うんだよ!
「あれ書いたの誰?」
「試用期間中の職員となっていますが、本当に作成したのは現地で初期の頃に採用した者でした。今まではそんな素振り見せませんでしたが、どうやら今回の計画で横領を考えていたみたいです。まだ未遂だったので解雇して、ゴーストタウンから追放するだけに済ませました」
「バレたら試用期間中の職員を、スケープゴートにするつもりだったってことか? そういえば、見積もりを見てないんだけど、コロシアムと広場を作る費用としては、あの金額が普通なのか?」
「建設費自体は、あれが普通のようですね。見積もりを担当したのが、ドワーフたちの作った建設会社でしたので、間違いないです。細かい所を修正してはぶくことで、その部分のお金を横領用としていたみたいですね。可もなく不可もない人材だったので、そんなことをするとは思えませんでした」
「まぁ、事前に分かったのなら、問題ないか。貴族の下で働いている奴らって、着服とか当たり前の権利だと思ってるからな。そうでなくても、お前らには税金から高い給料が払われているっていうのにな」
「それを言うなら、貴族も国に払うお金を抑えて私腹を肥やしている奴らは多いですよ。シュウ様みたいに無頓着だと、反対に心配になります」
「無頓着か? 正直な話、俺って生活する上でお金とか必要ないからな。その上商会からはお金が入ってくるし、最悪DPでいくらでも生み出せるし」
グリエルは苦笑するだけだった。
この後、コロシアムと広場の件を詰めるために、ゴーストタウンへ行って祭りの会議に参加した。どうせなので、屋台も出しやすいように区画整備して、側だけは備え付けにすることを決めた。
安全基準を設けているが、一から十まで屋台を出す人間に任せると、目の届かない場所があるので、屋台を出す際の統一規格を作り、簡単に点検できるようにしたのだ。
お祭り以外でも申請すれば屋台を出せるようにしたので、祭りが終わったら新しいスポットになってくれるといいな。
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