1617話 攻防戦
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まず始めに取った行動は、娘たちにメグちゃんへお願いしてもらうことからだ。これ以外の項目は、優先させるほど切迫していないので、すべて後回しでも問題はない。
娘たちには、メグちゃんが怒って何かすると身に危険が及ぶ可能性があると説明して、娘たちのメグちゃんへの心配度をあげてしまったのは、ちょっとやりすぎかと思ったけど、結果的にはいい方向に向かったので良しとしよう。
その結果とは、娘たちとのお泊り会をするという約束をして、絶対に無理をしないように娘たちがお願いしたのだ。娘たち的には、他の従魔たちと一緒に寝るのと変わらないのだが、メグちゃんからしたらかなり嬉しいことだったらしい。
条件として、キャンプの時に一緒に寝たいと言っていた。娘たちもキャンプは好きなので、いい口実をゲットしたことになるかな?
侵攻に関しては、引き続きメグちゃんとバザールに任せて、俺と綾乃、ついでに健司は、攻められている自分のダンジョンの考察に入る。
3時間前からの映像を見直して一言。
「対策する必要、あるっすかね?」
「多分ない」
で、終わった。
普通のゴーレムに人造ゴーレム、S級スケルトンを追加したあの部屋は、まさに鉄壁状態だ。
物理的に通路を塞ぐことができるのは、ゴーレムなどの魔物を使う方法、ボス部屋の出入り禁止設定(DPを大量に必要とする罠)、土魔法による壁(これは時間でダンジョンに吸収される)、ダンジョンマスターの支配下以外の者による土や石などで埋める、といった4つの方法だけだ。
他にもあるかもしれないが、今のところ確認できているのはこの4つである。
そして、Lvを上げたアダマンゴーレムが3匹がかりで通路を塞ぎ、その前でS級スケルトンを中心としたバザールが指揮するアンデッド軍団、更にその前に壁役の各種ゴーレムたちがいる。よく見てみると、遊撃用に粘液スライム(高Lv)がいた。
高Lvの粘液スライムの戦い方を見て感じたのは、ここまで強いとは思っていなかった。
なんというか、ニコから分裂したスライムたちとは違い魔法などは使えないが、Lvが上がったときのステータス上昇値が半端じゃないことが判明した。主にタフネスの方面が劇的に伸びるのだ。
普通なら叩かれて飛び散って死ぬのだが、タフネスが上がることによって飛び散らずに耐え、攻撃してきた武器にまとわりついて使えなくしてしまうようだ。武器が自身の体だった場合は、全身にスライムが引っ付き呼吸が出来ずに死ぬか、ゆっくりと溶かされて死ぬかの2択だ。
それを考えると高Lv同士であれば、スライムとゴーレムが戦ったら、スライムが勝つのだろうか?
「シュウ、今はそんなことどうでもいいわよ。気になるなら、今度試せばいいだけでしょ」
むむむ、また考えていることがバレてしまった。
「せやな、今度試そう」
「何で、似非関西弁?」
「ノリやノリ。ひとまず、今あっちが出している戦力では、突破できないことは確実だろう」
「普通に考えて、Sランク相当の魔物が複数守っている部屋を突破できないっすよ。でも、気になったんすが、普通の魔物でもDPでLvをあげれば、Sランクの素の状態よりは強いっすよね? どうしてDPで強化した魔物の軍団を作らないんすか?」
「それなんだけどね、DPでLvあげるのってもの凄く効率が悪いんだわ。で、Lv300~600くらいだと、Sランクの魔物から見ると大して変わらないんだよね。理由は良くわかんないけどね。Lv600以上を作っても、相性によっては簡単に死んじゃうんだよ」
Lvを強制的に上げたAランク同士の戦いだと、相性によって本当に簡単に死んでしまうのだ。Sランクの魔物にはそんなことないのだが、Aランク以下ではそういうことが何故か起こるのだ。
分かりやすい例で言えば、属性の相性だな。火属性に水属性をぶつけると、驚くほどダメージが通るのだ。こうなると、Lv差があってもどうにもならないみたいなのだ。
無駄にLvを上げるくらいなら、相性のいい魔物を2体召喚した方がコスパがいいのだ。
属性に関係なく強い奴もいるけど、そういうのには必ず違う弱点があったりするのだ。思ったより良くできている仕組みだと思う。
俺が良く召喚しているリビングアーマーは、一見弱点なんて無いように思えるが、実は、聖属性の攻撃にめっぽう弱いのだ。使える人間がほとんどいないので知られていないが、ダメージ倍率が2倍とか3倍とかちゃちなものでは無い。50倍のダメージが減算無しで通じるのだ。
理屈的には、鎧に宿った悪霊を直接攻撃しているから、鎧によるダメージ減算が無いのでは? という結論に至った。なのでリビングアーマーは、俺たちが聖拳で殴るとほぼ即死する。聖銀の武器で格下の魔物が攻撃しても、簡単に瀕死になったりする。
と、相性の問題はこの辺にしておいて、健司に説明をしてやった。
「そうなんすね。でも、ランカー陣ならDPが有り余ってるんじゃないんすか? それなら勝つためにDPで強化した魔物をたくさん配置しても問題なくないっすか?」
「お前さん、アーカイブ見てないのか? ランカーの多くは初めは物量戦をしてから、後半になると強化した魔物を出してくるんだよ。言わなくてもわかると思うけど、その理由は?」
「相手の特徴を見極めてから、相性のいい魔物で攻めるっすか?」
「正解、今は様子見の段階なんだわ。上位に行けないダンジョンマスターの場合は、物量を準備できないから得意な魔物を使う傾向が多いみたいだけどね」
「そういえば、シュウって、物量戦するの初めてじゃない?」
「言われてみれば、ここまでの物量戦を仕掛けたのも、仕掛けられたのも初めてな気がするわ」
「はいはい、話がそれているでござるよ。メグちゃんの暴走の可能性が低くなったとはいえ、不意打ちされれば危ないでござるから、こっちも気が抜けないでざるよ」
「すまんすまん、こっちはダンジョンに入ってくる魔物を監視しておくわ。何かあったら教えてくれ」
バザールは攻めに徹してほしかったので、俺たちが守りを固めることにした。バザールの代わりになるように、憑依できる魔物も派遣して現場で指揮を執る。
この日は、バザールが74階まで攻め入り、俺たちは31階の第一の部屋から先に通すことは無かった。
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