1603話 のんびりとした時間
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俺たち3人は、各自の対策について語った。
綾乃の考えた対策は、腐食系の魔物を使うというものだった。アダマンタイトは不変であるためどうにもならないが、体内にある金属、特に筋肉に使っているミスリル合金は腐食するのだ。ただそこまで強力な腐食となると、腐食液を出したらその魔物も死んでしまう、使い捨ての方法だった。
そして、S級スケルトンにも有効なのだから馬鹿にできない対策だ。S級スケルトンの中には、アダマンコーティングをしているモノもいるので、100パーセント有効な方法ではないが、コーティングは薄いので、攻撃で欠けることもあるので十分だろう。
バザールの考えた対策は、守る側のダンジョンマスターの視点からで、倒すのに時間と労力をかける意味を見出せないとのことで、罠で隔離する方法を考えていた。
人造ゴーレムは魔物ではないので、ダンジョンシステム上オブジェクト扱いだ。なので敵の魔物でなければ、キャスリングで自分の魔物ごと隔離領域に捨てることができる。S級スケルトンに関しては、落とし穴トラップにはめて、コンクリートを流し込み固めるという方法だった。
さすがのS級スケルトンでも、壁に何の取っ掛かりがないので普通の状態でも上るのは難しい。それに加えて固まる前のコンクリートは無視できない。固まれば動いて壊すことも可能だが、壊したところで破片になるだけなので、出てくるまでに相当な時間がかかる、という感じだ。
倒せていないけど、十分な時間稼ぎになるな。
俺は、どうやって倒すかだけを真正面から考えた。人造ゴーレムは関節技なので、締め付ける力の強い魔物ということで、マーダースネークを使う方法だ。名前を聞くと毒を持っていそうだが、こいつの殺意、本領は締め付けである。人間の腕位の太さで10メートルほどあり、締め付ける力が驚くほど強いのだ。
S級スケルトンは、バザールと同じで罠にはめるような形をとるのがベターだと思っている。ただ、罠と言ってもダンジョンのそれとは別である。アダマンタイトの繊維で作った糸を骨に絡ませて、行動不能にするというものだ。
「なるほどっす。腐食系の魔物っすけど、DPでLvをあげないと、使い物にならないっすよね? マーダースネークもLv上げが必要っすよね? そうなると、バザールさんの回答がDPを一番使わないってことっすかね?」
「DPの消費だけで考えれば、バザールの対策一択だな。攻めることを考えるなら、綾乃の対策が有効じゃないかな。俺のは正直、どっちつかずって感じの対策だな」
「攻めに関しては、人造ゴーレムとS級スケルトンがいるっすから、考える必要がないのでは?」
「それもそうだな。バザールの罠ならすぐにでも設置できるから、俺たちの作った階層に設置しておくか?」
「ダンジョンのトラップとして設置すると、条件を満たすと発動するっすよね? それなら、こちらで任意に発動できるトラップにしてみてはどうっすか?」
「そんな都合のいいトラップはさすがに作れないぞ」
「クリエイトゴーレムで床を作って、こちらでボタンを押したら落とし穴が発動するとか、バザールさんのさんのアンデッド操作能力で、落とし穴にスケルトンで土台を作ってその上に床を設置するとかダメっすかね?」
「「「……」」」
健司の発想を聞いて、俺たちは黙って目を瞬かせた。
「お前、意外にすごいな。俺たちにない発想を簡単に発見したな」
「凝り固まってない思考でござるからかもしれないでござる」
「クリエイトゴーレムだと、いったんダンジョンに入らないといけないから、今回は無しね。バザール、時間のある時にスケルトンを召喚して、罠作ってくれない?」
「ダンジョンに入っても問題ないと思うでござるが、リスクはあるでござるな。でも、綾乃殿も手伝ってもらうでござるよ! 某だけに押し付けるのはよろしくないでござる」
その後も話し合いが続いた。
ウルが寝入ってから1時間ほど経った頃。
『そろそろ、助けてほしいです』
何やら念話が聞こえて来た。この声はダマだと思うのだが、どこにいるんだ? 部屋を探してみると、娘たち、スミレとブルムに抱き着かれた状態で、動けなくなっているダマを発見した。
「そんなところにいたのか、娘たちもそろそろ起こさないといけないかな。ミリー、軽めのおやつを準備するように、言ってもらっていいかな?」
「全員分? 娘たちのだけでいいんじゃない?」
「一緒に食べることを考えると、みんな一緒の方がいいだろ? 俺たちが違うの食べてたら、ミーシャたちだって食べたがると思うぞ」
普段ならミリーの方が気付きそうなことなのだが、何やらすっぽ抜けていたみたいだな。
ダマを救出するべく行動を開始する。スミレとブルムを抱えて太ももの上に向かい合うような形で座らせた。まだ眠いのか、俺の胸あたりの服をつかんで顔をこすりつけてくる。
しばらくすると目が覚めたようで、とーたん! と叫んで抱き着いてきた。良きかな良きかな。
ミーシャはその声で起きて、私も! と言わんばかりに背中に飛びついてきた。
ウルも目が覚めたようで、俺の近くに来た。
騒がしくなってきたためか、下の子たちも目を覚ました。
3人の中でいち早く目を覚ましたシンラが、俺の所へ駆け寄ってくる。膝に座ろうとしたら、姉たちがいたため止まってしまった。後ろを振り返り、眠気眼のまま追いかけてきているプラムとシオンを目にすると、スミレとブルムの間に割り込むように頭を突っ込んでくる。
その気迫に負けた2人が太ももの上から退いて、シンラに場所を譲った。
「シュウ君は、本当に子どもたちに好かれているわね。でも、2人ほどそうでもなさそうかな?」
ミリーの言う2人は、シンラを追いかけてきていたプラムとシオンのことだ。シンラがまた俺の膝の上にいるので、猛抗議をするために両サイドから頭突きをしてきているのを見たためのセリフだ。
下の子たちは、母親たちが回収して下のお世話をするようだ。時間を決めて、トイレに行くようにしたところ、漏らすことが減ってきたらしく続けているとのことだ。
この年頃の時って、便意や尿意ってあるのか? ないから、おまるに座らせるのだろうか? そこらへんはよくわからないので、任せます!
おやつが終わったら、ミーシャたちに状況を説明して対策を考えさせてみよう。
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