1601話 ランカーの対応力
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バトルが開始され2時間ほどすると、相手の攻勢が弱まった。送られてくる魔物の数が一気に減ったのだ。
1割ほど抜けられたが、その魔物たちも5階層までしかたどり着けていない。予想以上にゴーレムとゴブリンが奮戦したのだろう。小隊を組んでいるとはいえ、物量には弱いからな。娘たちは、やられたゴーレムたちを悲しむことも無く、次のためにどうするかを話し合っていた。教育方針間違ってないよね?
侵攻の方は、ディザスターラットが大活躍だ。こいつらの欠点は、命令を大雑把にしか聞いてもらえないことだろうが、それを補って余りある侵攻速度を見せている。
侵攻中に倒されるのだが、それと同じスピードで増殖しているため手が付けられない状態だ。生物系の魔物であれば、全身に噛みついて死んでは新しい奴が噛みつく、それの繰り返しで倒していくのだ。
こいつらに弱点というか苦手なものがあるとすれば、魔法生物系の魔物だろう。実はこいつらは、スライムを倒せないのだ。スライムを倒すためには、魔法かスライムをはじけさせる位の打撃が必要なのだが、こいつらはどちらも持っていないため倒せないのだ。
ちなみにスライムは、最下級のゴブリンの棍棒攻撃でも死ぬくらいなのだが、ディザスターラットの体当たりはそこまでの力がない。スピードも速くないので、侵攻に時間はかかるが確実に敵のダンジョンを侵食していくのが特徴だそうだ。
そして最も苦手なのは、ゴーレムやリビングアーマーなどの装甲に噛みついても、意味をなさないタイプの魔物だろう。ゲーム的に言えば、噛みついて1でもダメージを与えられれば、理論上倒せるのがディザスターラットである。
ゴーレムは最下級のアースゴーレムでも、噛みついて多少のダメージを与えられても、その上のストーンゴーレムとなれば、噛みついてもダメージが出ない上に、重量級の攻撃で一山いくらといった感じで、簡単に倒されてしまう。
他にも、高Lvの鱗持ちの魔物や皮膚の硬い魔物は苦手だが、体の中に入って食い散らかすため、時間を掛ければ倒せないことも無い。
ダンジョンバトルでディザスター系の魔物を倒そうとするときは、ゴーレムやリビングアーマーを前に押し出してまとめて焼き払うか、トラップで一網打尽にしてとにかく数を減らすかの2つが主流らしい。
ディザスター系の魔物の侵攻は数千年前に流行した侵攻方法だったが、バトル後の管理が難しかったため、次第に使うダンジョンマスターがいなくなって廃れていったらしい。
『ディダスター系統の魔物で侵攻するダンジョンマスターを数千年ぶりに見ましたが、やはり攻めるという一点においては右に出る物はいないほど便利な魔物ですね』
『そうですね。最近で使われたのは、300年前ほどだと思いますが、その時のダンジョンマスターは試合に勝って、ダンジョンマスターという勝負に負けましたからね』
『私も覚えています。当時はジャイアントキリングだと騒ぎました。当時若手がトップランカーに挑み、見事に勝った試合ですね。その後、管理できずに配下の魔物であるはずの、ディザスターローカストに食べられた奴ですね。当時、みんなで大爆笑したものです』
『私も一緒になって笑ったものですよ。ですが今回使っているのは、神の方はポンコツですがダンジョンマスターの方は、優秀な人材見たいですからね。管理の方も問題ないでしょう。300年前の爆笑の渦は、残念ながらないでしょう』
『そこらへん、どうですか? 駄……女神のアリスさん』
『ふぁい? モグモグモグ、ゴックン。急に話を振らないでよ。えっと、バトル後のディザスターラットの管理? もちろん問題ないわ。専用のダンジョンを用意していたし私も確認したけど、あれで管理できないなら他の誰にも管理できないわね』
『とポンコツ女神が申して『ポンコツいうな!』おりますが、どう思われますか?『こらぁ! 無視すんな!』』
『おそらく、嘘ではないでしょう。DPの総量こそまだトップではないですが、日産DPだけで言えば2位にクインティプルスコアを叩き出していますからね。増えるDPを使って、本当に専用のダンジョンを作ったのでしょう。今度見せてもらいたいものですね』
と、まぁこんな感じで実況者? 神? の声が俺たちに届いていた。いつの間にか実況者が変わっていて、しかも2人? 柱? に増えていてビックリしたけどな。チビ神の扱いは神界だとあんな感じなんだな。
それにしても、2位と比べても5倍以上の稼ぎなのか? 2位の人も大陸1つをまるっと支配しているってことか? 俺は今大陸で言えば7つ支配しているからな。そう考えると、5倍ってちょっと少ない? 2位のいる大陸は、強い人や人口が多いのだろうか?
相手の攻めも弱まり、守りに力を入れている様子が見られるので、バトル開始から3時間、俺たちは昼食を食べていた。バザールは居残りでバトルの様子を見ているよ。何かあったら連絡が来ることになっているし、すぐ近くで飯を食べているんだけどね。
1時間ほどゆっくりしたら、娘たちは弟妹たちの面倒をみて一緒にお昼寝みたいだ。昨日は今日のことを考えてなかなか寝付けず、今になって睡魔が襲ってきたみたいだ。そういえばこの子たちはもうすぐ4歳、それを考えれば日本なら保育園に通っている歳だ。食後はお昼寝の時間があってもおかしくはない。
ウルはさすがに眠くないみたいで、俺の横でコタツに入っている。4人で見ていたタブレットを、1人で見るのが寂しかったのか、俺と一緒に見ている。
ウルたちがここに来始めてから、住人というか居候が増えた。
その居候たちは、掘りゴタツの中で団子になっている猫たちだ。一度娘たちが猫を連れてやってきたのだが、コタツの魅力を知ってしまったこいつらは帰りたがらず、出たり入ったりを繰り返している。普通猫って、住み慣れた場所から動きたがらないはずなんだけどな。俺が召喚した影響でもあるのかな?
部屋に戻ってきてしばらくした頃に、ディザスターラットの数が一気に減り始めた。減り始めたと言っても、敵のダンジョンで増えた分を超えるものでは無いが、相手の殲滅力が上がったようだ。おそらく対策をしたのだろう。
慌てるウルを落ち着かせてから、様子を確認する。
「やっぱり、常套手段できたみたいだな。安価なアースゴーレムを大量に配置して、通れる隙間をなくして座ったアースゴーレムたちの後ろから、魔法の使える個体がガンガン魔法を使っているな」
「どうやら、そっちは間に合わなかった対策でござるよ。メインは、アースゴーレムごとトラップにかけて、焼いたり串刺しにされているでござる。ゴーレムにあまり効かないトラップとはいえ、思い切りがいい相手でござるな」
「お父さん、もうチュー太郎たちじゃ無理なの?」
「チュー太郎たちの強みは、最後の1匹が死なない限り増え続けることだから、問題はないと思うよ。ただ、今のままじゃ先に進めないから、作戦を立てる必要はあるだろうけどね」
ウルはホッとしたのか深く息をついた。ミーシャたちが起きてきたら、一緒に作戦を考えるかな。
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