1596話 頑張る娘たち、勝つためには手段を選ばない
アクセスありがとうございます。
弟妹たちのお世話とおやつが終わった娘たちが帰ってきた。娘たちはそのまま、自分たちのために用意されたコタツへ移動している。子どもサイズの小さな掘りゴタツを用意すると、それを気に入って4人がそれぞれ座って、机の上に出したタブレットをいじりながら話し合っている。
近くには妻用の座椅子を用意してあり、座椅子自体が温かくなるようになっているため、足掛けを掛けるとかなり快適に過ごせるようになっている。足もおろせるように、所々に穴をあけてある。もちろん板で蓋をできるので、落ちて怪我をすることは無い。
ただ、スライムたちがその穴を気に入って、何匹かずつ埋まっている穴もあるためそのまま足を入れるか、違う穴を探すかしなければならない。
ミリーを呼んで娘たちの作戦で、どんなものを立てているか聞いてみた。
分かりやすいのが、速さで攪乱できるウルフ系は絶対に使わないところだ。良く背中に乗ったりしているクロやギンのように、仲良くしている魔物は戦闘で使いたくないそうだ。なので、出てきたのがクマ系の魔物だろう。
力もあり、耐久力もある。前衛を任せるには持って来いな魔物だ。
次に準備したのは、ゴブリンだった。こいつらは全員、遠距離タイプのゴブリンで、弓か魔法を使える強化種を選んで配置することを考えているらしい。DPに制限がないからとにかく強化しまくって使うのだとか。レベルを上げて物理で殴るじゃないけど、脳筋っぽいぞ!
これで攻撃一辺倒だったら、本当に脳筋みたいに感じるが、一応支援職も準備しておりバフや回復役もしっかりと確保していた。
遊撃としてシャドーを使い、クマの陰に隠れさせた状態で進んでいき、隙を見て移動しながら敵の死角から攻撃させたらどうか? と話していたとか。
思ったより考えられているな。俺たちみたいに装備を作って、魔物を強化する術が自分たちにはないから、使える魔物を並べながら考えているのだとか。
今回は普通のダンジョンバトルなので、何かが移動することは無いのだ。気兼ねなくバトルをできるというものなのだが。
『あんた、娘たちの案を採用してもいいけど、絶対に保険をかけておきなさいよ! 負けたら、分かってるわね?』
と、時折声をかけてくるのだ。マジで負けることが許されないような雰囲気である。
チビ神のために勝つ必要はないのだが、四六時中あいつの声が聞こえてくるかと思うと、ゲッソリしてしまう。できる範囲で全力を尽くすから、負けても文句は言わないでくれ!
「シュウ、今回は正攻法で戦うつもりなの?」
「どうしようか迷ってるんだよな。ダンジョンバトルとしてはセオリーの力押しの代表格みたいだから、同じ土俵で勝って完膚なきまでに叩きのめそうかなってね。どっちが上かはっきりするだろ? 顔が見えないんだから、そういうアピールも必要かな? ってさ」
「搦め手を使われて負けたからウンタラカンタラ、みたいなのを言わせないためにってこと?」
「そういうこと。バザール、アーカイブを見た感じ娘たちの作戦で勝てると思うか?」
「おそらくこの相手でござるが、Lvを上げて数をそろえれば負けは無いでござるよ。リバイアサンみたいな反則級の魔物はいないと思われるでござるから、質も量も勝てば負ける要素が無いでござる。今までの傾向で言えばでござるが、ダゴンを5匹ほど放流すれば勝てると思うでござる」
「仮にもランカーなのに、それで勝てちゃうのか?」
「主殿の魔物の中でヒエラルキーのあまり高くないダゴンでござるが、腐ってもSランクでござる。しかも、特殊能力に秀でたタイプでござるよ。フェンリルのように真正面からぶつかって強いタイプではござらんが、陸上生物では生きられないフィールドを作り出すでござる」
「陸上生物が中心なら、ダゴンには勝てねえわな。水棲とは言わないが、水陸両用のカメやワニでもいない限りは、一方的な展開になるわな」
「いたところで、小回りが利かないからダゴンと対峙するには、ちょっと力不足感が強いわね。カメもワニも優秀ではあるんだけどね」
「ワニは噛みつきからのデスロールが危険でござるな。それに魔物のワニの尻尾の攻撃は、鞭みたいにしなって馬鹿にならない攻撃力があるでござる。重量もある鞭攻撃とか悪夢でござるよ」
「ワニって確かにハマれば強いんだけど、魔物の戦闘となると、自分より重量級の魔物に負けがちなんだよな。特に斧とか槌持ちのミノタウロスとかだと、簡単にやられちゃうんだよな。向こうの前線を支えている、ゴーレム系も苦手だしな」
「ゴーレム相手となると、クマは良くてもゴブリンはLvを上げても辛くないかしら?」
「娘たちの作戦を全部採用する必要はないからな。ゴブリンじゃなく、ゴブリンに代わる何かを準備すれば、問題ない気がするんだけどな」
「いっそのこと、同じ布陣で真正面からというのはどうでござるか?」
「前衛にゴーレムってことか? 人造ゴーレムでも配置するか?」
「そういえばさ、聞いている限りだと特徴ないけど、何で今回の相手はランキング10位まで上がれたのかしら?」
「アーカイブでは確認できなかったでござるが、目に見えている魔物以外に切り札があるのではないかと考えているでござる。いきなり不自然に敵陣が崩れて、そこに攻め込んでみたいな形で、1つ1つの戦局を制していたでござるよ」
「正攻法と見せかけて、実は搦め手を使っている可能性があるのか。先方は娘たちの考えた力押しで言ってみよう。もしそれでだめなら、人造ゴーレムとS級スケルトンを出して真正面から蹂躙しよう。同じ土俵では負ける可能性もあるから、保険をかけておけば問題ないだろう。一応ダゴンも準備しておくか」
「守りはどうするの?」
「ん~正直攻めさせるつもりは無いから、入り口から1本道で途中に部屋を作って、魔物を配置してそこで撃退しようかと思ってる。ダンジョンバトルって、自由なのが売りじゃん? 攻めてきた相手をすべて実力で切り捨てさせてみようと思ってる」
「何に戦わせるでござるか?」
「中心は、フェンリルかな? 前衛に適当な魔物を配置するけど、フェンリルを中心に攻撃させて経験値を得させようかな? って考えてる。ダンジョンバトルの際の経験値って、チビ神の話を信じれば通常より多いって話だしな」
「なるほどでござる。壁としての役割が強いのでござるなら、重武装できるタイプかゴーレムでござるか?」
「リビングアーマーでもいいんじゃないかって考えてるんだけど、どう思う?」
「あんた、制約がないダンジョンバトルだからって、経験値ボーナスの付いた遊びとか考えてないよね?」
「バレた? だってさ、付き合わされるこっちの身にもなってみろよ、多少ボーナスが入ったと思って戦ってもよくね? フェンリルもやられそうなら逃げるように指示しといて、最悪リビングアーマーを捨て駒に逃げさせるつもりだ」
「抜けた場合に相手をするのは、誰なの?」
「2階より下は、俺の得意なインチキダンジョンで、最下層にはシリウス君に来てもらう予定だ」
リバイアサンを配置すると聞いて、全員が苦笑いになる。しかも今回は娘たちが参加しているから、めぐちゃんも出てくる可能性が高い。最下層に災害級の魔物2体、たどり着けても悪夢でしかないな。
「本当にリバイアサンを使うの?」
「禁止されない限りは、シリウス君を配置する予定だ。ゲートでいけるようになった世界のリバイアサンを、捕まえてもいいかもな。絶対に負けられないからな」
チビ神の声が四六時中聞こえてくる悪夢を回避するためだ。手は抜かない。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




