1591話 あっけなく
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「いろいろ試してみたけど、結構手詰まり感が強いわね」
よく考えると、このサイズになると亀の天敵っていないっぽいんだよね。やるとすれば、亀以上の戦闘力のある魔物をぶつけるしかなさそうな気がする。
「いっそのこと、3式に装備できるパイルバンカーを作ってみるのはどうっすか?」
「パイルバンカーを使えるようにって、床や壁に押し込んでから使ったとしても、体が固定できないから無理じゃないか?」
「アームで抱え込んでも、力が足りなくて無理でしょ?」
「多分そうでござるな。アームは頑丈に作っているでござるが、抱え込むような力はあるか微妙でござるな」
「えっと、何で抱え込むとか押し付けるというのが前提なんですか? あのゲームはそんなことしてないっすよね?」
「あれはゲームだからな。それに重い機体が地上で使ってるからな、踏ん張りもあるしな。今回は水の中で浮力もあるし、踏ん張りも全くきかないからパイルバンカーは厳しいんじゃないか?」
「それなんすけど、パイルバンカーを固定する器具も合わせて作るのはどうっすか?」
「んあ? どういうことだ」
「あのゲームのパイルバンカーは、殴りつけたり重さでなんとかしてると思うっすけど、今回はイメージ的にっすけど、工事現場的な感じでパイルバンカーを固定する専用の器具を、合わせて作るのはどうっすか?」
言われていることの意味が分からなかったので、絵に書き起こしてもらってやっと理解することができた。
爪のような道具で対象を固定して、そこにパイルバンカーを打ち込むという形だ。上手い表現ができないが、鉤爪でパイルバンカーの本体を固定して、体の重さなどは関係なく鉤爪で対象を捕まえれば確実に杭を叩き込める。
「なるほどな、でもアームで無理だから鉤爪って言ってもな、いけるのか?」
「そこは、ラチェット機構を使ってみてはどうっすか? あれなら、特定の動作をしないと一度ロックしてしまえば、機構が壊れでもしない限り外れないっすよ」
ラチェット機構というものが分からなかったので説明を聞いた。工具とかでよく見かける、一定方向に回し続ける奴に使われている機構とのことだ。
確かにあれなら、一度捕まえてしまえば何とかなるかもしれないな、捕まえられればな。
「そこは、何人もS級スケルトンがいるっすから、連携してやるしかないんじゃないっすか? 他に方法があるのなら、それの方がいいと思うっすけど」
「ん~、取れる選択肢が少ないんだよな。この亀、異常に硬すぎんだよ。それにパイルバンカーでこの甲羅って貫けるのか?」
「そこは、何度も同じ場所に打ち込めるんですから、大丈夫じゃないっすか? 捕まえられればっすけど」
「結局、そこだよな。それに、パイルバンカー自体は簡単に小型化できるけど、問題は小型化したからと言って、ラチェット機構をつけて亀を捕らえられるだけのサイズにすると、体と同じくらいにでかくなるんじゃないか?」
「そうでござるな。鉤爪をどうするかにもよるでござるが、小型化しすぎると威力が出ないでござる」
使えるか使えないかはともかく、バックアームも使って保持するような形にしてみた。パイルバンカー自体がかなり重くなってしまったので、バックアームを広げて地面に突き立てないと歩行ができないくらいにバランスが悪くなった。
「作ってみてあれだけど、これって使えるのか?」
「亀には悪いでござるが、実験するでござる」
試作品ができたのは、ダンジョンバトルが始まって1日半が経過した頃だった。朝の9時頃から始まったので、今は大体夜の9時くらいだ。
「その前に飯にしよう。腹減った。健司、飯の時に今までのダンジョンバトルの簡単な流れを説明してくれ」
「了解っす」
ブラウニーたちが準備してくれていた食事をモリモリと食べながら、健司が今までの流れを説明してくれた。
昨日の夜の段階で、2人のダンジョンマスターが試合の棄権を申し出ていたようだ。俺が攻めてこないと感じた残りのダンジョンマスターたちは、無理に攻めるようなことはせず力を蓄えているのではないだろうか?
ダンジョンバトルの最中でも、普通にダンジョンの運営はできるし魔物のレベルはあげられるからな。
今日は朝から今まで特に目立った戦闘は無い。
以上報告終了、早すぎんだろ!
「あの、ここまで準備しておいてどうかと思うっすが、亀の対策を立てるよりダンジョンを攻略してしまった方が早いんじゃないっすか?」
「そういえば、売り言葉に買い言葉、みたいな感じになったでござるが、煽られて向こうの思惑に乗るのが嫌で時間をかけて戦おうとしてたござるな」
「そうだな。なんでかすぐに終わらせたら負け、みたいな感じになったから攻めてないんだったよな。よし、健司の意見を採用だ。パイルバンカーを作っておいてなんだが、あれは使い物にならんだろ? 硬い岩盤を打ち抜くくらいにしか使えんだろうし、今回は放置だ!」
「その硬い岩盤も、それなりにレベルの高い人間が頑丈なツルハシを振るえば、簡単に岩盤を壊せるんだけどね」
「それは言わない約束だ。ご飯を食べたら、一気に攻勢に出よう。予備に置いておいたS級スケルトンも全部出す勢いで、一気に侵攻するぞ!」
急いでいるような雰囲気を出したのだが、飯が美味かったのでのんびりと食事をしてから移動した。
そこからは、神たちが期待するような娯楽としてのダンジョンバトルではなく、チビ神が喜びそうなダンジョンバトルの流れとなった。
閉じこもって侵攻してこないと踏んだダンジョンマスターたちは、慌てたことだろう。いきなり自分のダンジョンにSランク相当のスケルトンたちが1ダース単位で侵攻してきたのだ。
武器はまともなものが無かったので、召喚したアダマンタイトの棒を持たせて侵攻させている。あれだけ硬くて重ければ立派な武器だ。
面白いほど簡単に敵のダンジョンを蹂躙して進んでいく。
他のダンジョンマスターと組んでいる可能性があると思っていた奴だけは、他の奴らに比べて多少強かったと思う程度だった。
最後までランカーが誰なのか分からず、ダンジョンバトルに幕が下りた。
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