1586話 迷走が止まらない
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俺たちは早速工房へ移動して、工房の壁に巨大テレビを張り付けて、いたるところでダンジョンバトルの様子を見れるようにしておいた。
「健司も参加していいけど、しっかりとバトルの方もみててくれよな」
「よっしゃー! 始めるぞ! まずさ、胴体部分はどうする? ゲームと同じように出力や防御力、重さに注意するべきか?」
「バザールとも話してたんだけど、脚部以外は見た目だけが違う感じかな? 腕部も武器を持ったり内蔵型があるけど、バランスを取るうえで一番重要なのが脚部でしょ? 脚部を基準に他のパーツを作るべきかな? って話してたのよね」
「そうでござる。見た目だけと言ってござるが、重装甲の場合は装甲の厚みの分頑丈になるでござる。その分動きにくくなることが想定されているでござるよ」
「個人的には、二足歩行より多脚型の方が好きだから、私はそっちを開発する予定ね。アラクネタイプで十分にデータはとってあるしね」
なるほど。ゲームと同じようにやるわけにはいかないよな。いや、遊びで使う分にはいいだろうけど、突き詰めるところ兵器であるわけで、相手を倒す能力が求められるわけだ。
「某はやっぱり、武器アームでござるな。あれにはロマンが詰まっているでござる。ブレードアームとかどうでござるか? 肘から先がブレードになっているようなタイプでござるよ」
綾乃は、蜘蛛みたいなチャカチャカ動く物が好きなのだろか? でも、虫は嫌いだったはずなのだが、蜘蛛は虫じゃないか? それに対してバザールは、ロマンというか武器アームが好きみたいだな。
「ん~俺はパイルバンカーを作りたいから、アームを担当か? 内蔵した武器アームでもいいのか? っとその前に、どのくらいの大きさにするんだ? さすがにゲームと同じサイズっていうわけにはいかないぞ。使うとしてもダンジョンバトルなんだから、サイズが決まってないと作れんぞ」
俺がそういうと、綾乃もバザールも魂が抜けたような表情をしてこっちを見て来た。
こいつらは、実物大に近いサイズで作るつもりだったようだ。そんな大きかったら、ダンジョンでもフィールド系か大部屋くらいじゃないと使えないぞ!
「くぅ、ダンジョンを基準に考えると、乗り込むタイプの4式なんて作れないじゃない! シュウの言ってたパイルバンカーも、現実味が無くなるわよ」
そう言われて俺は、はっとする。俺たちが使えるくらいの大きさで、パイルバンカーなんて使えないから、諦めていたことを忘れていた。俺の身体能力があれば使えないことは無いのだが、破壊力を生み出すだけなら、アダマンタイトで作ったつるはしを振り回した方がはるかに強い。
俺はそんな大切なことを忘れていた。
「あれっす。ダンジョンで使うかはともかく、作ってみるんじゃなかったっすか?」
健司の冷静なツッコミで、俺たち3人は我に返る。
「そう言えばそうだった!」
「でござるが、やはり実物大のサイズはどうなのかと思うでござる。乗り込んで動かしたい気持ちも分かるでござるが、操作系に関しては魔核を使うのでござろう? それでござるなら、コックピットには魔獣を入れておくのはどうでござるか? 憑依すれば、操っているような感じになるでござるよ」
迷走を始めた俺たちを、なんとも言えない表情で見ていた健司に気付いたのは、護衛としていつも近くにいるダマ・シエル・グレンの3匹だった。ダマに肉球を押し付けられて、慰められているようだ。
3時間ほど集中して作業を進めていたら、
「そう言えばっすけど」
健司が何やら聞きたそうにしていた。
「チビ神って人に、今回のダンジョンバトルはすぐに終わるとか言ってませんでしたっけ? 自分は出された問題を考えていて、記憶が怪しいんすが」
「そういえば、そんなこと言ってたな。まぁ、すぐに終わらないけどつまらない試合なのは決まり切っていることだし、様子を見てみるか?」
すでに2人がダンジョンバトルを棄権していた。準備していた手札の中で、海水を攻略できる魔物をすべて失ったのではないかと予想。
残り5人は、待ちの構えで膠着状態になっているみたいだな。
「どうして攻めてこないんだと思う?」
「どうしてかしら?」
「どうしてでござろうな?」
「どうしてっすかね?」
「協力者がいると思われるダンジョンマスターは、後出しでも強い魔物を召喚できるから適した奴を探してるのかもな。あっ、もしかして、余っていたDPを使って、新しく召喚した魔物を育てているとか?」
俺が思い付いたのは、この膠着状態がどれだけ続くか分からないが、このままなら時間だけが過ぎていくだけなのだ。その時間を使って育成してもおかしくはないか?と思い付いたのだ。
「完全な水棲魔物で、魚タイプならワンチャン、S級スケルトンに勝てると思うか?」
「どうでござろうな、例えば噛み付くタイプの魔物で、S級スケルトンの骨をかみ砕ける魔物がいれば倒せるかもな」
「私が思い付ける中で、S級スケルトンの骨をかみ砕ける海の生物って、リバイアサンくらいしか思いつかないんですけど」
「でもっすよ。Lvをカンストした噛む力の強い魚がいれば、かみ砕けないっすか?」
「ん~、どうなんだろう? よくよく考えると、水棲の魔物ってあんまり召喚してないんだよな。リバイアサンがいけるなら、Lvカンストしたアクアドレイクでもいけないかね?」
「いけるかもしれないでござるが、実験のためだけにS級スケルトンの骨を、かみ砕かせるのもどうかと思うでござる」
「そういわれると、確かにな。とりあえず、S級スケルトンを生贄にするのはともかくとして、今回は3式を全身装備させてるから、3式の耐久テストをしてみよう」
「そうね。今までまともに耐久テストしてこなかったもんね。でも、中に何か入れないと空洞になっちゃうわよ」
「それなら、クリエイトゴーレムで石でも土でも入れておけばいいでござる」
「それもそうね、じゃぁ3式の初期の奴が倉庫に入れてあるはずだから、取ってくるわ」
残ったバザールと俺は、召喚リストを見て魚介系の魔物を召喚していく。
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