1583話 健司君の仕事
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「そういえば、バザールさんを今回参加させないんすか?」
相互侵攻戦の話し合いをして概要を決めた後、バザールは自由行動にしている。だから、工房にこもって4式の原案を考えているようだ。
だけど、健司は何故バザールが別行動をとっているのか理解できていなかった。
「ヒントを出していくから、お前自身で考えてみろよ。初めに言っておくと、このくだらない世界の神の遊戯はルールが適当だ。というか、その適当の部分も含めて、ダンジョンマスターたちがどう解釈して動くかってところまで見て楽しんでいる。じゃぁ、1つ目のヒントだ。俺が相手に出した条件は?」
「えっと、ちょっと待ってくださいっす。メモ帳メモ帳、分かりました!『勝ったダンジョンマスターが、バトルに参加したダンジョンマスターの召喚権を2つ選択して奪うことができる』っす」
「お前、何かメモを取っていると思ったら、そんなことをメモしてたのか?」
「そうっす。バザールさんが、メモを取ってシュウさんたちの話を踏まえて読み返して考えると、ダンジョンバトルの本質に近付けるって言ってたっす」
「う~ん、間違っていないとは思うけど……よし、お前はパソコン得意だったか?」
「20年以上触っていないので、どうかわからないっす。でも向こうにいた時は、得意だったっす。レコーダーと速記を併用して、後でパソコンで清書していたっす」
「ん? そっち系の仕事してたのか?」
「そっち系? よくわからないっすけど、仕事じゃないっすよ。動画配信とかあったじゃないっすか? それの話した内容を文書に起こしてほしいって親に頼まれて、週に10時間分くらいの動画の話の内容を文章にしてたっすね」
「親に? 10時間分って、相当な時間がかかったんじゃないのか? お前、学校とか仕事に行ってなかったのか?」
「いや~お恥ずかしながら、自分大学へ行かずに親の脛をかじっていたニートっす。親に頼まれたことをして、お小遣いをもらっていたっすよ。
ちなみに、10時間分くらいなら、その3倍くらいの時間があれば文章にできたっすね。動画を見るので10時間、清書で20時間、確認で動画を見ながら10時間で40時間くらいっすね」
「ちなみに、お小遣いってどのくらいもらってたんだ?」
「えっと、20万くらいだったっすかね?」
「お前さ、確定申告とかしたことあるか?」
「あるわけないじゃないっすか! ニートだったんすから」
「年末に何か書かされた覚えはないか?」
「年末年末……あ~何か書いた覚えがあるっす。でも、住所と名前にハンコだけだったっすけど。でも、下の方に色々書いてあったっすね」
「多分それ、年末調整の書類じゃないか? 俺は、高校生の時にこっちに召喚されたから見たことねえけど、オンラインゲームで知り合った人が、いちいち書くのめんどくせえとか言ってた書類だったぞ」
「それがなんなんすか?」
「仕事をしていない人間が書くことのない書類だよ。それと、月に小遣い20万もらえる子供がこの世界にどれだけいると思ってるんだ? そんなの一つまみもいないぞ。ちなみにお前のもらってたお金って、多分給料だな。親の仕事を手伝っているって形だったんじゃないか?」
何か衝撃を受けたような顔をしてこっちを見ている。とりあえず、頭をハリセンでたたいておく。
「正気に戻ったか? とりあえず、お前に仕事を割り振っておこう。しばらく様子を見てみた感じ、裏切る感じはしねえからな。もちろん仕事だから、給料も出すぞ」
「マジっすか! 俺にできる仕事っすか?」
「地球にいたころと同じような仕事だな。今度から俺たちの話し合いの会話を書き起こしてくれ。もちろん専用のパソコンも用意するから、使いやすい形を教えてくれ。話した内容を忘れることがあるから、記録があると助かるんだよ。完成したらこの部屋に印刷したやつと、データを置いておいてくれ」
「了解っす! あ、パソコンは、テンキーの付いている15インチ以上のノートパソコンでお願いするっす。それと、もらったお金で地球のモノを売ってもらえるっすか?」
「ん~何が欲しいんだ?」
「小説とゲームっすね。こっちには娯楽が少なくて、飢えていたっす」
「ゲームは、ハードとかぶっているソフトはお前にやるよ。今度まとめておくから、近いうちに渡すわ。小説の方は、俺のおさがりになるけど、ブッ君をあげよう。10万冊分以上、漫画と小説が入ってるから楽しめるぞ。新しく購入したいときは、バザールに頼め」
「ブッ君ってなんすか?」
「魔改造されたキン〇ルだよ。性能が別物になってるから、ブッ君って俺は呼んでる」
「そうなんすね」
取り出したブッ君を渡しておく。注文のあったノートパソコンも魔改造して召喚しておいた。
「で、話の続きだけど、『勝ったダンジョンマスターが、バトルに参加したダンジョンマスターの召喚権を2つ選択して奪うことができる』っていうのには、どんな意味があるのか分かったか?」
「そういえば、そんな話をしていたっすね。普通に考えて、勝ったらダンジョンバトルをしていたマスターから、奪えるってことっすよね?」
「そこは間違いじゃない。もっと深く考えてみろ。バザールはなんだ?」
「バザールさん? ノーライフキングですよね? あれ? あっ! バザールさんもダンジョンマスターっす。ってことはっす、バザールさんが参加して負けた場合は、バザールさんのも奪われる対象になるってことっすか?」
「そういうことだ。バザールが準備に参加しないのは、それが理由だ。ここまでくれば、俺が何であんな条件を出したか分かるよな?」
「DPの少ない方のマスターが、他のダンジョンマスターと組んでいると考えているっすから、そいつからも奪うためっすか?」
「正解。俺とバザールみたいな関係なのか分からないが、本当に強い魔物を召喚できるのは、サポートに回った方だと俺は考えて、そいつも巻き込む形にしたんだよ」
「なるほどっす。でも、もし負けてしまった場合はどうするんすか?」
「負けても、俺から奪える召喚権利なんて大したものは無いぞ。おそらく誰にでも出ている、武器類や鉱石、金属やアイテム、魔物に至ってはゴブリンとオークしかいないからな」
「えっ? どういうことっすか?」
「俺もバザールもダンジョンマスターなのは間違いない。だけど、バザールは俺に隷属している魔物でもあるんだ。本来魔物はダンジョンマスターの能力の一部しか使えないのだが、バザールには何故か召喚の権利まで譲り渡すことができるんだよ」
「それって、負けてもほぼノーリスクってことっすか?」
「その通り。で、今回は賭けもあるから、同価値になる不要なアイテムの権利をかけてるわけよ」
「ちなみにっすけど、何をかけたんすか?」
「エリクサー最高品質1000個分」
「エリクサーって最高の回復剤っすよね?」
「そうだな。DPに換算すると結構な額になるんだわ。賭けの場合の同価値っていうのは、相手が賭けた物をDP換算してそれを越すようにかける必要があるんだよ。しかも、相手が1個の場合はこちらも1個までなんだ」
「1個なのに1000個も何で出せるんすか?」
「エリクサーは1000個じゃなくて、1000個分だよ」
「どう違うんすか?」
「エリクサー1000個分が収まる瓶に移し替えて、賭けの対象にしたんだよ。それにおそらくだけど、今回の相手は神器クラスの何かをかけているのは間違いないと思う。
初めは複数のダンマス対策だったけど、棚ぼたで神器も手に入るかもしれないわけさ。複数のダンマスが絡んできてくれて、反対に俺に有利になるんだから、うれしい限りだよ」
健司はちょっとひいた顔をしている。ちなみに、この会話を聞いていたチビ神は、爆笑の声だけ俺に届けてきてやがるのでとてもうざい。
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