1578話 意外な人物
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侵攻作戦が終わってから1週間たった頃、バザールから次のダンジョンバトル、防衛線の話がしたいと連絡が入った。一応、勝手に進めないでほしいとお願いしておいたので、こっちに連絡をしてきてくれたのだろう。勝手に始めても負けないなら、気にする必要もないんだけどね。
いつもの場所へ向かうと、中にはバザールと綾乃だけではなく意外な人物がいた。ムキムキ探偵だった人物だ。
何でここにいるのかと聞いたら、バザールが引き抜いてきたらしい。暗部で使われる予定だったのだが、一時的に借り受けたというのが正しいみたいだ。同郷の人間だと判明して、ツィード君特性の奴隷の首輪をつけるのであれば、ある程度の自由を許可するという形らしい。
まぁ、子どもたちと綾乃以外であれば、このムキムキ君と一騎打ちをしても勝てる人間しかここにはいないからな。何気にブラウニーたちも暇な時間を使ってLvをあげているようで、新しく召喚されたブラウニーでも500を超えているらしい。
一騎打ちの前に、奴隷の首輪でディストピアでは、誰に対しても害をなす行動を禁止しているので、もしもなんてことは起きないんだけどね。
ダンジョンバトルの話をする前に、このムキムキ君、昔の名前は、楠 健司というらしい。で、転生したのでこの世界でつけられた名前が、マードックなんだとか。
クソみたいな貴族が支配している街で生まれ育った健司は、地球の知識を使って色々頑張っていたらしいが、そのクソ貴族に目をつけられてボッコボコにされ、死刑代わりに無一文で街の外に放り出されたのだとか。それが、10歳の頃。今は23歳ということなので、13年前の話らしい。
なんとか違う街へたどり着くために歩いたが、何の準備もなく追放されたため2日もしないうちに限界が訪れて倒れてしまう。そこを通りかかったAランク冒険者たちに拾われ、見習いとしてパーティーへ加入して経験を積んだのだとか。
そのパーティーは5年後、リーダーの年齢もあり解散となった。そこから、蓄えた知識と地球の知識をフルに使ってレベル上げをした。3年でSランク相当までレベルを上げることに成功して、そこからはあのへんてこなコスプレをして義賊をしていたようだ。
こいつが3年で強くなれたのは、スキルが覚えやすかったからだと考えられる。転生の影響かもしれないと仮定したが、他のサンプルがないのでこれ以上の考察はしなかった。
そして、行き当たりばったりではなく、きちんとスキルを使って下調べをしてから、盗みに入っても問題ないと判断した貴族にしか手を出していなかったらしい。中にはSSSランク冒険者を食客として招いている貴族もいたためだ。
そうやって活動しているときに、急に名前を聞くようになったゴーストタウンを調べたのだが、細かいところまで調べられなかったらしく、突入して不正の証拠をつかむ予定だったらしい。
調べられなかったのに不正していると判断したのは、ゴーストタウンを陥れたい奴らの手先から情報を得たらしい。しかも、複数の情報屋をつかっていたのに、1人以外はその手先だったのだ。これは、こいつが捕まってから暗部が情報屋を捕まえて、説得で聞き出したようだ。
「本当に、申し訳ないと思っているっす。ゴーストタウンの街並みを見て、同じ日本人の記憶を持っている人が捕まっていて、強制的に働かされていると思ったっす。だから、領主館に忍び込もうとしていたっす」
こいつに言われて初めて気付いた。健司は神に合わずにこの世界に転生してしまった。同じような境遇の日本人がいるのでは? と思って、自分なりに行動した結果が今回の件なのだろう。
「でもさ、その体格で怪盗のコスプレは無いんじゃないか?」
「初めはネタでやってたんすが、この格好がトレードマークになってしまったっす。だから続けていたっす。それに、明らかに似合わないコスプレをしていたら、日本人なら気付いてくれるかなって思ってたんす」
確かに、漫画やアニメに疎い人間でもない限りは、この怪盗のことを知っているもんな。明らかにおかしいコスプレをしていたら、そりゃ突っ込みたくもなるだろうな。それで気付くつもりだったのか? 考えなしのようで、それなりに考えてはいたようだ。
「で、バザールは何でこいつをかかわらせようと思ったんだ?」
「それはでござる、こいつの魔法のセンスが良かったからでござるよ。主殿も見たでござるよね? 水魔法を使ってあそこまで上手く、幻術を使える人間なんていないでござるよ。主殿だって無理でござろう?」
確かに。あそこまで上手く水魔法で幻術を使うことはできないな。
「それに話してみたら、結構使えそうでござったから首輪をつけることを条件にして連れて来たでござるよ」
このムキムキ君じゃなくて、健司君はバザールから有能だと思われているようだな。
「まぁいいわ。ツィード君を呼んで、念入りに口止めもしておくか。バザール、もし何かあったら確実に処分しろよ」
俺のセリフを聞いて、健司君とやらの顔が青ざめる。
「え、えっと、暴れたり、害をなしたりするつもりは無いっす。というか、同郷のよしみで自由の範囲を、広げたりしてくれるところじゃないっすかね?」
「散々な目にあったはずなのに、お前は何でそんな温いことを言ってられるんだ? 俺はその同郷の知り合いの人間に、殺されかけたことだってあるんだぞ。害をなす存在であれば、同郷だろうが関係なく殺すさ」
「ま、待った待った。俺はこの首輪のおかげであんたたちに害をなせないんだろ? それなら殺さなくてもいいんじゃないっすか?」
「いくら首輪をしてからといっても、絶対じゃないんだよな。外せる人間の手にお前が落ちたら、俺らの情報が抜かれる可能性がある。それは俺たちにとってとても困ることだな。だから処分するんだよ。まぁ、お前が本当に使える奴なら、自由の範囲が広がるかもしれないな。自分の価値を示せ」
俺は、普段使わない強い言葉を使って健司君とやらを脅した。
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