1527話 超危険物
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予定の時間になり、俺たちは工房に集まった。
「どうだった?」
「難しかったでござる。どうしていいのかわからず、時間だけが過ぎていったでござるよ。無限に時間のあるアンデッドだけに、焦る気持ちが全くでなかったでござるよ」
そういえばこいつって今こそ人間の見た目だけど、会ったときは骨だったもんな。綾乃は……
「なに? 2人とも作れなかったの?」
なんだと!? 綾乃は、余裕をもって俺たちの話を聞いていた。
「まぁ、みんなの作ったものを見て、評価しようよ」
自信をもって綾乃が出してきたのは、なんと表現すればいいのだろうか? 金属で作った脳ミソ? みたいなものをドカンと机の上に置いた。
俺は、作った試作品を……少し大きいので、別の位置に置いた。バザールは、何やら立方体の金属を机の上に置いた。
「バザール、あんたのそれは何なのよ」
だよな。俺も何かわからん。ただの金属の塊だよね。クリエイトゴーレムで作ったものであれば、何かしらの効果があるのは確かだろうが、見た目だけじゃよくわからんぞ。
「シュウのは、見たまんまだよね。人間の頭を模したものに、魔核がつながってる? あれ? 魔核にさらに魔核がくっ付いてる? どういうこと?」
人造ゴーレム狂いのように、いろいろな人造ゴーレムを作っている綾乃には、俺が作った物の外側を的確に言い当てた。
むき出しにしているから、わかりやすいとは思うが、魔核に魔核をつなげているのはぱっと見ではわからないはずなんだが? 並べて設置しているので、繋げているというよりは、並列に配置して処理能力を上げているように見えるはずなんだよね。
「そういう綾乃は、機械の脳ミソでも作ったのか?」
「あんたたちの評価をしてから私のやつを説明するわ。まずは、バザールのそれは何なの?」
「ん? 見ればわかるでござろう? 金属の塊でござる!」
次の瞬間、綾乃がどこから取り出したのか、ハリセンを全力で振り抜いていた。
「痛くないでござるが、視界が揺れると気分的に気持ち悪くなるでござるから、やめるでござるよ」
「新しいゴーレムを作るのに、金属の塊なんて持ってくるんじゃないわよ」
「待つでござるよ。クリエイトゴーレムで作るゴーレムに形によるこだわりは、本来必要ないでござる! だから、こんな形をしていても効果があれば問題ないでござろう?」
「だから、見た目でどんなものかわからないから突っ込んでるんでしょ!」
「ジョークの通じないおなごであるな。これは、いわゆるパソコンの外側みたいなものでござるよ。ちょっと待っているでござる」
バザールはそう言って金属の塊にクリエイトゴーレムで干渉を始めた。
うん。パソコンと言った意味がよく分かった。タワー型の中身みたいになっていた。本物のパソコンみたいにゴチャゴチャしているわけじゃないが、パソコンをイメージして作ったのが解る。
「パソコンを模したことは分かったけど、効果はどうなの?」
「それはどんなに頑張っても、人工知能の域を出なかったでござる。まぁ、パソコンをイメージしてしまったのでござるから、しょうがないでござるが」
「そうよね。パソコン、コンピューターをイメージしたら、どんなに頑張っても既存の人工知能を超えられないわよね。魔法が万能とはいえ、イメージができなければ限界は超えられないわね。じゃぁ、次はシュウの番ね」
「概要だけを言えば、目に判断する魔核を繋げて、その魔核から情報を抽出して判断する魔核を更に繋げて、異常や普段と違うことを知らせる仕組みを作った感じかな? 後者にいろいろ教え込むことができれば、判断が的確になっていくかな? 教え込まないといけないことには変わりないんだけどね」
「え? 目に繋がっている魔核で判断できないの?」
「目に繋げた魔核は、魔改造して召喚したゴーレムに埋め込んで、魔核に情報を書き込んでもらって、それを目に繋げたんだよ。ゴーレムに書き込んでもらった魔核は、外部から新しく書き込もうとすると、情報が全部飛ぶから吸い出す魔核を準備した形だよ」
「なんで、ゴーレムに情報を書き込ませたの?」
「娘たちの発想から、召喚した魔物には召喚した俺の知識が一部書き込まれるから、それを魔核に書き込んでもらって目に繋げたんだけど、魔核内部で異常とかおかしいとかは解っているのだが、外部に伝える手段がなかったから、もう1個の魔核が必要になったんだよ」
綾乃はピンと来ていないが、バザールは自分でも召喚できるので召喚した魔物に、知識の一部が転写されていることに納得していた。
「直接、魔核に自分の知識を書き込むことができないから、ゴーレムを経由したってことかしら? その魔核の判断は、どの程度正確なの?」
「俺に近い判断はできるんだけど、異常とかおかしいの判断しかできないんだよね。吸い出す方の魔核も今はまっさらだから、異常やおかしいというのをそのまま伝えるしかできないんだよね」
「なるほどでござる。異常が解っても、その異常が何なのかがわからないってことでござるな」
「ダメじゃん!」
「そういう綾乃は何を作ったんだ?」
「そんなの見ればわかるでしょ? クリエイトゴーレムで、脳を再現してみたのよ」
「「??」」
俺とバザールは首をかしげる。脳を再現って、どう見ても金属でできた脳の模型。
「模型じゃないわよ。何て表現すればいいのかな、生体金属? みたいなものができちゃったから、脳をイメージしたらできちゃった!」
「ごめん、言っている意味が解らん」
「私もよくわからないんだけど、できちゃったんだもん。と言っても、脳ができただけで何も教え込めてないから、まずは学ばせないといけないのよね。生まれたばかりの赤ちゃんみたいなものよ」
「それって、機械の反乱とか起きそうなタイプじゃね? だって、魔核使ってないってことだろ? シリコン生命みたいなもんだろ? まずくないか?」
「そういえば、魔核を使ってないから、制限がかかってないわね。あれ? 魔核がないのに何で動いているのかしら? 人間と同じように、魔力を取り込んでいるのかしら?」
一番成功したと思われた綾乃の作品が、一番危険な代物だった。人間に代わる生命体が生まれる可能性が……どうなるかわからないので、ドロドロに溶かした後にアダマンタイトの容器へ入れ、ホコと同じように封印措置をとった。
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