1513話 打つ手なし
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召喚したのは、エルダーリッチ。
ノーライフキングみたいにSランクっぽい魔物だが、エルダーリッチはリッチから進化して、ノーライフキングなるらしい。
バザールは、この流れにのらずそのままノーライフキングになったそうだが。
アンデッドに属すエルダーリッチであれば、仮定名セラフとの戦いが終わった後に、バザールが有効活用してくれるだろう。
アンデッドは、ほとんどが自我をもっていないと言っていたが、エルダーリッチは普通に自我があり会話が出来る。バザールの骨形態もそうだが、何処から声が出てんだろうな?
自我があっても召喚された魔物なので、生存本能より命令に従う強制力の方が強いので、説明を聞いても当たり前に特攻してくれるようだ。その部分に関しては、本当に助かったな。
エルダーリッチたちを連れて戻ると、綾乃が驚いて叫んでしまった。地味にショックを受けている個体もいるし、カタカタと笑っている個体もいる。何となく、性格も違うんだろうな。
事情を説明して、エルダーリッチを大量に召喚した理由を理解してくれた。
「ということでござるは、某がエルダーリッチを操ればいいでござるか?」
「一応、その予定だけど、ちょっと思ったんだけど、今までいたエルダーリッチたちと、軋轢が生まれたりしないか?」
「そこら辺は問題ないでござる。それよりも、どれだけ生き残れるか心配でござるよ」
確かに、水による行動妨害が効かなかったら、次の対策を考えないといけないからな。俺が居ない間の様子はどうだったのだろうか?
「そうね、とにかく攻撃が当たらないわね。アラクネタイプで弾幕を張ってみたんだけど、当たることは当たったんだけど、全部体に当たって弾かれたわ」
「アンチマジック的なシールドでも張ってるのか? それにしても、弾かれるっていうのがよく分からないな。当たれば単純に爆発したり、破裂したりするよな? それなのに、弾かれたっていうのがよく分からん」
「そこは某も不思議に感じたでござる。魔法が効果を発揮して無傷でもなく、魔法がかき消されるわけでもなく、弾かれたでござるからな」
バザールも同じように感じているみたいだ。
「私的には、弾かれるよりあの武器と機動力の方が気になるわ。神の差し金だとしたら、私たちには理解できない何かがあっても不思議じゃないわよ。見て分かる危険な武器と機動力の方が厄介だと思うんだ」
綾乃が言っていることも一理ある。神が絡むと基本的に何かしら訳の分からないことが起こるからな。神器とか、全部知っているわけじゃないけど性能がおかしいもんな。神器か?
「思ったんだけどさ、あの武器って神器だったりすると思うか?」
「……可能性は高いでござるな」
「何でも切れるっていうのが武器の能力なら、神器の可能性は高そうね。神の使いだと言うなら、他にも神器を持っていてもおかしくないかもしれないわね」
「厄介だな。あの速度じゃ、グレイプニルで捕まえることもできないだろうしな。それに、切ることに特化したあの武器だったら、グレイプニルすら切り裂きそうだな。武器を取り上げるか、複数のグレイプニルで拘束でもしないと無理そうだな」
「準備できたから、そろそろ仕掛けるでござるよ」
バザールがエルダーリッチの配置を終えたらしく、水による妨害が可能か検証が始まる。
水魔法を使い広範囲に水を生み出したエルダーリッチたち、その範囲に囚われた仮定名セラフは、動きが多少遅くなっているが、かなりのスピードで動き回っている。スケルトンたちの方が動きが遅くなり、こっちに不利になっていた。
「遅くはなるが、こっちに有利になるモノじゃないか? 水流の方は影響があったりするか?」
「試しているでござるが、あまり変わっていないと思うでござる」
今もアンチマジック的な何かが働いていたりするのだろうか? 妨害は意味をなさないか? 物量で攻めるにも無理があるし、どうすればいいんだ?
「思ったんだけど、セラフって食事や睡眠が必要だと思う?」
「悪魔系やアンデッドは、食事も睡眠も必要なかったよな。それを考えると、天使系も必要ない可能性が高いと思う」
「じゃぁ、閉じ込めて餓死するのを待つことは出来ないよね」
「閉じ込めるか? あの剣があったら、ダンジョンに閉じ込めても壁壊して出てきそうだけどな」
相手が規格外過ぎて、どう対処していいのか分からずに時間だけが経過していく。
「むむむ、スケルトンが4体目破壊されたでござる」
回復魔法をかける前に完全に壊されてしまい、治せなかったようだ。まだまだいるとはいえ、このペースで壊されたら、すぐに底をついてしまう。
「ダンジョンの中に入れば、メグちゃんを支配したときみたいに出来ないの?」
「どうなんだろうな。他のダンジョンマスターが召喚した魔物だと、それが出来ないんだよな。神にも同じ事が言えるなら、あいつは支配できないと思う」
「でも、試す価値はあるよね?」
「価値があっても、どうやってダンジョンの中に引きずり込むんだ?」
「あいつが魔物なら、キャスリングができるんじゃないの?」
綾乃に言われた事を頭の中で検討し始めた。
確かにキャスリングは、人間以外であれば範囲内にいても移動させることが可能だったな・・・キャスリングを使ってダンジョンの中に放り込んで、支配を試してみるのはありかもしれないな。
「綾乃の意見、採用!」
移動させるダンジョンを見繕う……ん? 別にこの大陸のダンジョンじゃなくてもいいよな。別の大陸にダンジョンを準備する。獣人と人間が争っている、あの大陸だ。掌握するだけ掌握して、放置しておいたあの大陸、そこに、ランダム作成で100階層のダンジョンを作り、キャスリングで送り込む。
「よし! キャスリングは成功だ。ってことは、すくなくともあいつは人ではないのは確かだな。でも、支配は出来ないから、神に召喚されたと思っていいかもしれない」
「あらら、シュウの言った通り、ダンジョンの壁というか床を切り裂いて地上を目指しているわね」
「時間は稼げるでござるが、トップスピードで移動してきたら、止められないでござるよ?」
バザールの指摘を受けて、俺は失敗したかもしれないと感じた。
「ダンジョンの中にいる間は、キャスリングであっちこっちに飛ばせるけど、出てしまったらかなり拙い事になるよな」
1階ずつは狭くてもいいが、とにかく深いダンジョンを複数作った。ランダム作成で作れる限界が1000階だったので、それを10個程。
「時間稼ぎにしかならないけど、その間に対策を考えるしかないな」
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