1482話 チビ神現る
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あれから2週間が経った。そうすると、あの時の結果もよく分かるというものだ。
マッシュがエイダ、トモがルックとくっついた。この影響と言って良いのか、秘書たちがめっちゃ喜んでいた。理由は簡単でマッシュくんと付き合い始めてから、若干対応が柔らかくなったらしい。俺たちには分からない差だったが、マッシュくんたちは秘書たちに陰で拝まれている。
今日はお仕事が休みなので、庭でのんびりとしている。ダマがブラッシングをしろと圧力をかけてくるので、仕方がなくブラッシングをしてやると、アメショが真似をして俺にブラッシングをしろと圧力をかけてきた。
そんな2匹の様子を、かわいいな……と思いながら、ブラッシングをしていると、娘たちがやって来た。
「とーたん! 私がブラッシングしてあげる!」
ミーシャが俺からブラシを取り上げて、アメショのブラッシングを始める。
余談だが、ミリーたちのことをお母さんと呼ぶようになったのだが、俺のことは変わらずとーたんと呼ぶ。理由を聞いてみたら、とーたんはとーたんでしょ? といって、何言ってるのこの人? みたいな目で見られてからそっとしておこうと思った。
スミレとブルムもブラシングしたいとおねだりしてきたので、追加でブラシを出すとダマのブラッシングを始めた。ウルは3人の様子を見ながら、俺の横にちょこんと座る。
「お父さん、この子は何で大きくならないの?」
一番聞かれたくない質問を、娘からされてしまった。
誤魔化すのは良くないよな、この娘たちに幻滅されてしまうかもしれないけど、生命を冒涜する行為だからな……俺のように自分の意思で、不老化したなら別だけど、この子は、俺の罪の証みたいなもんだもんな。
ウルに包み隠さず話をする事にした。
「この子はね、俺が可愛い子ネコの時期をずっと見たい、という浅ましい考えで、成長しないように調整した子なんだよ。この子の気持ちなんて一切考えずにね」
そう切り出し、俺がこの子を産みだした経緯を話した。
初めは、めっちゃ怒ってる顔をしていたウルだが、話がすすむにつれて顔が柔らかくなってきた。ちょっと違うか? 憐れむとも違うし、複雑な気持ちが渦巻いているような表情だ。
「お父さんは、いけない事だってわかったんだよね? 後悔もしてるんだよね? だったら、私からはこれだけ」
そう言ってから、拳骨を作り俺の頭に落とした。
物理的な痛みはほとんどないが、心がすごく痛かった。そして、娘の前で泣いてしまいそうになる。そんな俺の様子を見たウルが頭を撫でてくれる。本当に涙が出そうでヤバい。でも、この事ではさすがに泣くことは許されない。何とかこらえた。
丸まった背中にちょっと痛みを感じた。何事かと思ったら、俺の背中に子ネコがへばりついており、ミーシャが頑張れ! と応援をしている。おいおい、俺の体は平気でも、服がほつれるから止めてほしいのだが、無理っぽいな。
暫く、子ネコの木登りならぬ背中登りの土台になった。
この子をどうにかして、成長できるようにできないかな?
『何か、お悩みがあるようね、坊や』
今はマジで、お前の相手をしている暇がないから、帰ってくれ。
『あんたの状況くらい分かってるわよ。気分を紛らわすために、ジョークを交えたのに乗ってこないわね。さすがに不謹慎だったわね』
分かってるなら、念話してこないでくれるかな? 本当に悩んでるんだからさ。
『その悩みを解決する方法があると言ったら?』
そんな冗談に付き合ってられる程、暇じゃないから勘弁してくれ。
『冗談じゃないわよ? 子ネコが成長しないように召喚して、後悔してるんでしょ? その悩みを解決する方法が私にはあるんだけど?』
そんな都合がいいことあるわけないだろ?
『信じるか信じないかは、あなた次第だけど話を聞かずにいてもいいの?』
聞くだけなら、ただか……教えてください。
『おぅ。あんたがここまで下手に出るのって、初めてじゃない? まぁいいわ、成長できるようになるけど、種族は変わってしまうわ。それだけは了承して聞いてほしい』
種族が変わる? どういうことだ?
『簡単に言えばね、その子ネコを魔物化させれば、成長のリミッターを解除できるわよ。魔物になってしまうから、ネコの寿命よりはるかに長い時間を生きる事になるけどね。成長しないでその姿のまま一生を終えるのがいいか、魔物化して成長はあるが本来より長い生を生きるかって感じだけどね』
しばらく考えていいか? っとその前に、それをすることによるリスクは何がある?
『リスクね……しいて言うなら、半端なDPを使って魔物化をすると、中途半端に魔物化して長く生きられないし、暴走するかもしれないわね。あんたには関係ないことだけどね。大体、1億DPくらい使えば、ノーリスクで魔物化できるはずよ』
1億か……確かに、俺にとって1億DPなんて、大した事は無いな。それにしても、Sランクの魔物であるフェンリルを召喚するのに必要なDPより遥かに高いな。動物から魔物化するのって、それだけ力みたいなのが必要ってことか?
子ネコを見て、失敗した時のことを考えてしまう。1億DP使えば問題ないとは言われても、俺が体を作り変えたとき、かなり大変だった記憶があるんだよね。この子は耐えられるのだろうか?
「お前は、どっちがいい? このままでいるか、魔物化して成長できるようになるか」
返事は返ってこないのに、思わず聞いてしまった。
タイミングよく、ミャーっと鳴いた。
ごめんな、俺にはお前の言っていることが分からなくてな。
『主殿、こやつが魔物化したいと言っておるにゃ』
「はぁ? お前、ネコの言葉が分かるのか?」
『何を言ってるのだ? 吾輩は猫である!』
「猫じゃなくて、白虎だから虎だろ!」
『場を和ませるジョークですにゃ。虎はネコ科の動物ですし、吾輩は神獣ですにゃ。強い意志をもった鳴き声であれば、その意味もわかりますにゃ。この子自体は良く現状を理解してないみたいですが、主殿が苦しんでいる姿を見るのは嫌だと言っていますにゃ』
どうやら、俺が苦しんでいる姿を見て、子ネコにまで辛い思いをさせていたようだ……本当にごめん。
話を聞いてみると、子ネコは俺が自分のことで何か悩んでいるのは分かったが、何で苦しんでいるのか分からないので、解決する方法があるなら使おう! と言って来た。
リスクがあることも説明してもらったが、子ネコの意思は変わらないようだ。
チビ神……1億使えば、まず問題ないんだよな?
『そうね、1億でも過剰過ぎるくらいだと思うわ』
分かった、安全を考慮して倍の2億を使って、この子を魔物化させてくれ。
『わかったわ。って、ごめんね。実は、今回は魔物化じゃないのよ。前々からあんたの奥さんたちに相談されていて、何か方法がないかって相談されててね。悩まずに食いつくようだったら、教えてほしいって言われてたのよ。
あんたも、今回のことで懲りたでしょ? DPで何でもできるからと言って、何でもしていいわけじゃないってことをさ』
どうやら、チビ神と妻たちに色々心配をされていたようだ。
『今回は、特例だからね。本当はしちゃいけないけど、創造神様の許可があるから、その子を正常な状態に戻してあげるわ。その代わり、これからも楽しませなさいよね』
チビ神がそういうと、子ネコが淡く光った。
どうやらこれだけだったらしいが、これで成長するようになったのだ。
その日、チビ神に初めて感謝をした。
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