1472話 懐かしのバレル
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海賊船のダンジョンを攻略して以降、平和な日々が続いている。
まぁ、問題はそれなりにあったが、大きなトラブルになることもなく何とか対処出来ていると思う。
そういえば、ゲートを使った暗部の移動は非常に好評だ。他の国に比べれば、移動時間はかなり短いのだが、それでも多少時間がかかることには変わりがない。ゲートならほぼゼロに出来るからね。ゲートの通じてない街までは自力だけどな。
それでも、今まで以上に時間が短縮されているし、魔導無線による情報交換もあるため仕事がはかどるとか言っていたな。
暗部の話をしたのは、俺専用のゲートを準備していないので、暗部のゲートを利用して他の街へ出向いているから、そんな話をしてみた。
今日俺が来ている街は、バレルだ。ディストピアの次に一から作った街である。街の構造は、段々畑みたいな段差になっている街並みで、ディストピアとは違い、精霊を使わずに水を街全体に流している、この世界でも初の仕組みの街だろう。
この街を作るのに時間はかかるが、他の人間でも作ることは可能である。問題は、ポンプが作れるかどうかというところだろう。魔法が発達しているせいなのか、ちょっとした道具がなかったりするんだよね。多少高くてもいいなら、魔導具を使う方法もあるしな。
何でバレルに来たかと言えば、作って以来ここに来てなかったので様子を見に来た形なのだ。
今日のお供は変わらず、聖獣3匹と子ネコである。子ネコの名前を決めた方がいいと思うのだが、名前が決められずにいる。その子ネコは、持ち運びケージに入れずにダマの背中にいる。
ケージを持ち歩くと子ネコに負担がかかる。かといって自分で歩かせるのもどうかということになり、移動する時はダマの背中に乗せるようにしていたら、気に入ったらしく移動と分かると自分で乗ろうとしてくるようだ。
驚いたりとかして逃げてしまった時のために、首輪にリードをつけており、それがダマの首輪と繋がっているので迷子になることもないだろう。
初めてくる場所なのでビクビクしている様子が見られ、ダマの頭の上に陣取りぺたんとくっついている。猫って新しいところがあんまり得意じゃないんだっけ?
ん~こうやって見ると、バレルって前に比べたら随分栄えてきたな。昔は、上の方にしか宿屋がなかったのだが、今は下の方にも宿屋がある。
ここの特産品は、高品質な炭だけなのによく栄えてるな。近くの街や俺が管理している他の街への輸出用で作らせていたのだが、今ではそこそこ遠方から大量に買いに来る行商人もいるのだとか。
炭自体は軽いので、大きな馬車に大量に詰め込んでも簡単に動かせるということで、それなりの利益を上げているのだとか。一番大きいのは、俺たちがここに来たおかげで、治安が良くなっているところだろう。
メギドには、以前拠点にしていたスカルズの下部組織のような冒険者たちがいて、盗賊被害が出たと分かると殲滅しに行くようで、2~3先の街周辺まで、ほとんど盗賊がいないのだ。
そこまで苛烈に対応するのには訳があって、盗賊の被害を受けた事があり大切な人を失ったり、ひどい扱いをされたりしたことのある集団だからだ。
スカルズの皆が、そういったメンバーを保護していたのがこの集団の始まりとか言ってたな。
メギドにはダンジョンもあるから、冒険者の質が他より高いっていうのも、盗賊が近付かない理由の1つだろうな。
ってか、炭だけでこの街が栄えるのだろうか? アンソニに聞いてみることにしよう。
昨日の内に、バレルに行くと伝えておいたので、領主館で待っていてくれるはずだ。あいつは今、メギドを任されていて、ここには違う領主がいるのだが、そいつは名前だけ……違うな、業務だけの領主と言った感じらしい。
なので、わざわざアンソニが来てくれることになっている。実質あいつが管理しているわけだしな。
「久しぶり! いつぶりだろうか?」
「お久しぶりでございます。前回シュウ様とお会いになったのは、領主の集まりのときですかね? まだ1年は経っていないと思います。あまり変わっていないと思いますが、バレルはどうですか? シュウ様の思い描いていたように発展しているでしょうか?」
「いやいや、めっちゃ発展してるよ。正直ここまで栄えるとは思ってなかったんだよ。ここまで上がって来て気付いたけど、前に比べて街も大きくなってるよね? 畑も数倍広がってるじゃん。炭だけでこんなに栄えたのか?」
「一番の要因は上質な炭ですが、もちろんそれだけでは無いですよ。今話に出た畑もそうですが、森から腐葉土なども持ってこれますし、広く畑を作っても荒らすならず者がいないので、低めの塀を建てれば害獣被害もほとんどありませんからね。乾燥野菜なども、この街の収入源になっていますね」
炭だけじゃなく、乾燥野菜も収入源になっているんだな。
「でもさ、炭もそうだけど、乾燥野菜だって作るのは大変なんじゃないか?」
「そうでもないですよ。シュウ様の奥様たちが開発してくださった、大型の果実野菜乾燥機を導入させてもらっていますので、生産性はかなり高いです」
「アリスたちが開発した魔導具の1つか? でも、魔石が必要になるからランニングコストが高いんじゃないか?」
「そんなことないですよ。炭作りにも乾燥野菜作りにも、魔石を大量に使うことが知られていますので、行商人が炭や乾燥野菜を買いに来るついでに、メギドで安い魔石を買ってここまで運んで下さるので、自分たちで運ぶよりは安くできています」
「そっか、メギドのダンジョンでも、屑魔石はそれなりに出るもんな。それを買い叩いて、商品の隙間に入れて運んできてくれるってことか、上手く出来てるな」
「おかげさまです。あと、畑の範囲が広がりましたが、炭用の木材の切り出し範囲は変わってないので、その外側に実験的に果樹園を作ってみています。魔の森には、美味しい果実があると聞いたことがあったので、魔の森の範囲に新しく植えたらどうなるのか、実験しています」
「へ~面白そうなことやってるね。ディストピアの畑の場合は、ダンマスのスキルで処理しちゃったから、魔の森のようにはいかないし、あそこは精霊やワームを使っているからまた話が変わってくるな」
「理想はあの畑エリアですが、それは無理ですので果樹園を再現できないかと、実験してみているところです。途中経過で言いますと、比べ易いように範囲内と外に果樹の苗を植えて育てています。正確な数値は分かりませんが、数倍……もしかしたら、十数倍の勢いで育っています」
「じゃあ、後は実が付くか、その実が美味いのか、ってところかな? 土によって味が変わるっていうし、品種によっても違うからな。上手く育つなら、魔の森で果樹の品種改良が簡単にできるかもな」
「上手くいけば、ドライフルーツも名産になりますね」
もし果物が生ったら呼ぶようにお願いをした後、いくつか話をしてバレルを後にした。
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