1437話 帰って来た早々に?
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「ディストピアよ! 私は帰って来た!」
空飛ぶクルーザーっぽい物の甲板で、俺はディストピアが見えたので有名なセリフを、パクって大きな声を上げた。
近くで護衛していたシュリ、アリス、ライムの3人は、また何かやっている、とジト目でこちらを見ているのが分かった。でもさ、定番のネタなので、何度でもやってみたくなるんだよ。
それ以上、冷たい目で見るのは止めてくれ!
「ゴホンッ。冗談はこれ位にして、バッハに運んでもらった時には景色を楽しむ余裕は無かったけど、この船だと止まることも自由だから、景色をながめ放題だな」
といっても、世界樹が街の半分以上を占めており、俺たちが住むエリアは全く見えていない。あれ? ちょっと前まで世界樹って山側だけに伸びてなかったっけ? 太陽が当たらなくることを心配してそんな風にデカくなった気がしたんだけど……
半月状といったら語弊があるのだが、そんな感じで世界樹の枝が広がっていたはずなのに、今では上から見るとまん丸になっている。どういうことだ? 俺の家も1日中日陰になってしまうではないか!
よく分からない事になっている世界樹にどう対応しようか、頭を悩ませながら空飛ぶ船で自分の家に降り立つ。
空飛ぶ船を見つけたディストピアの人たちは、初め驚いて騒いでいたが、俺の家に向かっていることが分かると次第に落ち着きを取り戻し、最後にはあの人だからな、と口をそろえていたとかいないとか。
世界樹の根元の近くにある池に船を浮かべてから、家で待っていたみんなに帰って来たことを報告する。その後にまた外に出て、世界樹を確認すると、
「え? どういうことだ?」
確かに世界樹は生い茂っているのだが、太陽の光が地上に届いているのだ。葉っぱに光を遮られることなく、地上は明るいのである。俺も、船の上から見た嫁たちも、みんな首を傾げている。
「シュウ君、急にどうしたの?」
ミリーに尋ねられたので、空から世界樹を見たときの印象をそのまま伝えた。そして、いま見上げている世界樹が光を遮っていないことが不思議だと、びっくりしていることを説明した。
あまりにも当たり前にそこに存在していたためか、この世界樹が異様なことに気付けていなかったのだ。
それを聞いた残っていた嫁たちも空を見上げ、首を傾げていた。その様子を見ていた娘たちは、母親に抱かれながら真似するように首を傾げている。可愛いな。あっ、ウルはちゃっかり俺の足元まで来て、一緒に見上げている。
それに気付いたミーシャたちは、母親に降ろしてとお願いをしてこちらにダッシュして駆け寄ってくる。
おっと、これはロケット頭突きの構えだな。ミーシャは、勢いを殺すことなく俺に突っ込んできたのだ。
さて、どう対応しようかな?
俺のとった行動は、ミーシャのロケット頭突きの勢いを上手くころして、流れるような動作で肩車の位置に乗せた。
それを見ていた後ろから走って来たブルムとスミレも、真似して突っ込んできた。こっちの2人はロケット頭突きではなく、体当たりのような感じだった。
同時に突っ込んできたので、ウルを俺の後ろに来るように位置取りして、2人を受け止める。さすがに2人同時にミーシャと同じようなことは出来なかったので、出来るだけみんなに負担がかからないように努力をして受け止めた。
「とーたん、おかえり!」
「「おかえり!」」
ミーシャが挨拶していないことに気付いたのか、おかえりと言ってくれた。それに続くようにブルムとスミレも言ってくれた。ウルは、近付いてきて見上げている時におかえりと言ってくれたので、頭を撫でている。
「ただいま。っと、世界樹が街を日陰にしていないなら何の問題もないし、家に入って休むかな」
下にある街に影響を与えていないのであれば、特に気にすることもないと思い、疲れた体を休ませるために我が家に入る事にした。
リビングのソファーに座ると、俺の両脇にウルとミーシャ、右膝にスミレ、左膝にブルムが座り鉄壁の守りとなった。足元には大型犬位のサイズでダマが寝転がり、娘たちの足置きみたいな感じで扱われている。聖獣よ、そんなことでいいのか?
と思ったら、ニコたちスライムがダマを押しのけるように、体を押し付けていて場所を変われと威圧されている。3分程の攻防を経てダマは、渋々と場所を譲り渡した。
そうすると、今度はスライムたちが娘たちの足置きになるように位置調整をしていた。なんだこれ? 足置き係は実は、従魔たちの中で人気の役割だったりするのか?
リビングにそのまま来たのは、下の子たちが寝ていたためである。起きていたら、顔を出して少し遊びたかったのだが、寝たばかりだということでさすがに起こすのはあり得なかった。少しだけ寝顔を見てからリビングに来ている。
妻たちも思い思いに座っていて、俺と娘たちの会話を笑いながら聞いていた。
みんなも知っているのだが、俺が居なかった時のことを色々話してくれるのだが、時系列順に話せるわけもなく、あっちこっちに飛びながら話をしてくれた。
しばらくして、思い出したかのように遊ぶ場所! というキーワードを思い出して、どうなったのかを聞いたきた。
もちろん、遊ぶ場所を作ったあげられるようになったと伝えると、体全体で喜びを表現した。
だけど、無限に広げられる世界を手に入れた俺が、娘たちに無制限に色々与えてしまうことを危惧した妻たちから、拡張したりするDPは、お手伝いや勉強をしっかりしたご褒美に付与していくことと、各母親の監視の下で使用する、という条件が付けくわえられた。
娘たちも理解しているようで、今まで以上に張り切っている様子らしい。
ウルに関しては、ミリー、カエデ、リンドの3人の内1人と一緒に拡張することになっている。
俺が担当する場所に関しては、無制限なようなので事後報告でいいからどんなものを作ったのか、報告を上げるように言われた。
みんなで寛いでいると、玄関の扉を強くたたく音が聞こえた。何事だろうと思い、娘たちを降ろしてから玄関へ向かう。
そうすると、
「シュウ様、今すぐに執務室の方へお越しください。グリエル様、ガリア様、ゼニス様がお待ちですので、よろしくお願いします」
ん? 緊急の案件なんて、何かあったっけ?
でも、呼びに来た職員が急いでいる様子だったので、職員が乗って来た馬車に一緒に乗り庁舎へ向かった。お供は、いつものようにダマ、シエル、グレンの3匹だ。
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