1429話 予想外のボス
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「終わったな」
「終わりましたね」
俺の近くで待機していたライムが、若干呆れた空気を含んで俺に答えてくれた。
昨日苦労していたキリエに至っては、半目になって俺の方を見ている……本当にすまんって。遊んでたのは他のメンバーだから、俺にあたるのは止めてほしいかなって思うんだけどな。
それにしても、まさかこんなに簡単に100階を突破できるとはな。時間がかったとかそういう話ではなく、今日戦闘を始めて倒すまでの労力というべきでかな? だって俺は、闇魔法で魔力を吸い出してただけだし、パイレーツスケルトンたちを叩いていた妻たちも、本当に振り下ろしていた。それだけだしな。
武器を振り下ろす労力とかはさすがにあったけど、攻撃を回避して倒すとかそういう話ではないのだ。いうなら、鉱員がつるはしで掘っている感じだろうか? 真剣にはなるが、それだけのことだ。
よし、膨れているキリエの頭を少し強引に撫でて、落ち着かせる。髪の毛が乱れるからと妻たちは嫌がるのだが、実はそういう風にされるのが嫌いじゃないキリエは、内心喜んでいるのを俺は知っているぞ。
「みんな、お疲れ様。ドロップ品は全部拾えたかな?」
今回のドロップ品なのだが、正直期待してなかった。レイス系は魔石しか落とさないし、パイレーツスケルトンたちは、おそらくドロップしてもオリハルコンの骨かインゴットと魔石だけだと判断していた。
武器とかがドロップする可能性もあったが、正直俺たちから見れば劣化品でしかない。例えオリハルコンでできていたとしてもね。ワンチャン、魔法の武器って可能性も捨てきれなかったけど、使っている武器がどう考えてもその類では無かったので、諦めていた。
で、予想通り、インゴットと魔石だけだね。Sランクの魔石か……召喚できなかった時は、これだけでも嬉しいものだったけど、召喚できる今では微妙である。
ブラウニーたちの片付けも終わっているので、ここで少し休憩をして軽食を食べたら次の階へ降りよう。
次の階は、このダンジョンのボスがいると考えている。だけど、100階と同じ広さで、他の階と違って沈没船の影がないのだ。可能性としては、一面海か一面大地という2択だろう。
「……って思ったのに、まさかこれとはな」
予想外な光景に正直、開いた口が塞がらない。
この世界の常識に当てはめても、これはさすがに常識外れだと思う。
まぁ、ボスが魔法生物なのはまだいいよ。だけどさ、魔法生物って言ってもスライムでもゴーレムでもないのだ。船自体がボスなのだ。まさか、ここに来て本当の海賊船のダンジョンの意味を知る事になるとはな。
ちなみにこの魔法生物の海賊船なのだが、名前が海賊船とそのまんまなのだが、特殊効果として乗って戦っている海賊たちが強化されるというものが付いていた。
あ、ちなみに海賊船の上には、パイレーツスケルトンたち32体が手をふってくれているよ。
ここまでなら、まだあり得ると思うのだ。走っている場所が砂の上じゃなければね。砂の上を走っているから砂上船とでも呼ぶべきか? そしたら海賊じゃなくて砂賊とでもいうべきじゃないか? そしたらパイレーツっておかしくね?
って、この世界のよく分からんシステムに突っ込んでも意味はないな。
「どうやって戦いますか?」
「どうって言われてもな。チェス駒のパイレーツスケルトンが2セットいるのはいいけど、あの海賊船って攻撃してくるのか? 見た感じ戦列艦みたいに大砲を出せる横穴があいているんだよね。そう考えると、パイレーツスケルトンたちを引きずり下ろすってわけにはいかないよな」
砂漠の上をスイスイと自在に動くし、もし攻撃してくるようなら、面倒な事になるのは分かりきっている。なにより、あの巨体だ……普通にひかれただけでも大怪我間違いない。
改めて言うことはないと思うが、海賊船と砂漠に挟まれれば普通の人なら即死だ。冒険者でも上位の人たちでも運が良くて致命傷を、大怪我で済ませられるのは規格外のこの人たちだけである。
それに大砲が使えるとして、パイレーツスケルトンたちには大した影響がないと思うんだよね。俺たちと違って基礎防御力が高すぎるんだよね。もしひかれても、砂の海……砂漠に埋まるだけで、俺たちと違いダメージがほとんどないと思われる。
「船の上に乗ったら、パイレーツスケルトンたち以外にも何か出てくるかな?」
乗り込んで戦うとなると、海賊船による強化とパイレーツスケルトンキングの強化が2つも乗る。キング2体もお互いを強化して船による効果もつく。
どこまで強化されるか分からないが、キングで2重の強化、他のパイレーツスケルトンたちで3重の強化されている。どれだけ強くなているか、考えるだけで嫌になってくる。
「何も出てこなかったとしても、パイレーツスケルトンたちを倒すのにどれだけ時間がかかるんだろう?」
「一度乗り込んで、敵の動きを見てみますか?」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、32体でも拘束できるんでしょ? それだったら、船の上でパイレーツスケルトンは拘束しちゃって、船を中から壊すのはダメなの? 船には強化がかかってないんでしょ? なら一番初めに海賊船を壊したらいいんじゃないかな?」
ネルの話を聞いて、他のメンバー全員で納得してしまった。
「よし、ネルの意見を採用しよう。俺がパイレーツスケルトンたちを拘束するから、その間に海賊船を協力して壊してくれ。人造ゴーレムたちも戦力になるだろ? 上の階では使ってあげられなかったけど、今回は使ってやろう」
作戦とも言えない作戦をたてて、船に乗り込んでから内側から壊す作戦が始まった。
「さて、どうやって乗り込もうか?」
乗り込む段階になって、どうやって乗り込もうか悩む事になった。
走って追いかけたとしても、乗り込む場所がねえんだよな。近付いて気付いたんだよ・・・
戦う前にもう1度作戦会議をする事になった。
その結果、昨日のベアフットを思い出して、シリウスに操ってもらい船に乗り込む事になった。
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