1426話 初撃破
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俺の声を聞いたキリエは、その場で深呼吸を始めた。大きく息を吸い、深く息を吐く……3回ほど繰り返してから目を開き、現状を考えるために考え始めたことが分かった。
「ブラッドリーレイスやデッドリーレイスを何度倒してもダメ。キングレイスに集中すると、よく分からない繋がっているラインの所為で、回復してしまう。それなら、回復をさせないように取り巻きのレイスたちにダメージを与えつつ、キングレイスを倒してみるしかないですかね」
自分の考えをまとめるために出した言葉が、正解だったのだがそれが正解だと分かっている人はいない。そのうえ、独り言だったので聞いていた人もいなかった。
ただ、シュウも言ったように、流れは悪くてもこちらが有利なのだ。試せることを試していこう。
「人型人造ゴーレムたちは、ブラッドリーレイスとデッドリーレイスに分かれて攻撃を仕掛けて下さい。異形型人造ゴーレムたちは、そのままキングレイスに攻撃を継続してください」
キリエは指示を出しながら、自分も攻撃をしかけている。
遠目から見る感じ、やはり人型人造ゴーレムたちは、1対1では互角といった感じだろうか。そういえば、こいつらのレベルっていくつだっけ? 再度確認すると、900だった。ヘルモードかよ! とか言ってたな。
人造ゴーレムでも一対一だと、Lv900のレイス相手には一進一退みたいだな。特に、ドレイン持ちだっていうのが関わってきているかもな。ほとんどダメージが減っていない感じがする。
俺が観察している間に、キリエはキリエでしっかりと状況を見据えていた。
人型と戦っているレイスたちの体力は、100パーセントになることはなさそうね。回復される以上のダメージを与えているようだ。キングレイスの方も攻撃した分で回復しているが、それ以上のダメージを受けている……このままいけば、たおせるはず。
だけど、旦那様がいつも言っている、大量にダメージを受けた後のバーサクモード……行動変化には注意するようにって、実際に何回かそういった行動を起こした魔物もいたよね。
シュウは知らないが、妻たちの間ではシュウのことを『旦那様』と呼ぶことが多くなっている。だけど本人の前で言わないのは、みんな今までご主人様と呼んでいた弊害か、恥ずかしいようで妻内でしか使われていない言葉だ。
「アラクネ、人型の方のレイスにダメージを与えて、半分位まで減らしておきたいわ。ダメージ調節はこっちでやるから、平均的にダメージを与えてほしい、お願いね」
キングレイスへのダメージを減らしてでも、取り巻きのレイスに攻撃を始めたな。何かしら考えていることがあるのだろう。あ、俺が何でこんな余裕をブッこいているかというと、パイレーツスケルトンたちは俺たちの攻撃ではじかれているからだ。
ダメージを与えることよりも、こちらのストレスを減らして負担も減らすために、吹っ飛ばし効果のあるスキルを全員で使っているため、かなり余裕がある状態だ。
今では飛ばす時に、どれだけ巻き込めるかという競争まで始まっている。
そんな中で俺は、キリエたちの方の様子を見ている。
良い感じで向こうの戦闘は推移しているみたいだけど、こっちは違う意味で戦闘が起きてるもんな。なんだよ、私の番って。一応、ラスボス前の最後の中ボスなんだぞ。
まぁ、これで怪我でもするようなら注意が必要だけど、怪我する様子がないので見逃している状態だ。
キングレイスの体力は、順調に減っているな。取り巻きもかなり減っている感じだ。ただ、その勢いのままだとキングレイスが死ぬ前に、取り巻きが死んでしまうぞ?
それにしても、キングレイスを全員で攻撃している時は体力が減らせてなかったのに、今は何で減らせているんだ? キングレイスはかなり大きいから、総ダメージ量は現状と大して変わらないと思うのだが……取り巻きのレイスたちの吸収に差が出ているってことか?
一対一なら、攻撃を回避できることもあるから、吸収する量が減っているってことでダメージを与えられるんだな。これなら、レイスの方にもっと人員をさいておいた方が良かったか?
ん? パイレーツスケルトンのキングが怪しい動きを始めたな。なんだ? 分からないが、そのままにしておくのはよろしくない。となれば……
「シュリ、一旦こっちは任せた。キングを釣り上げて行動を止める!」
盾を前に押し出して、シールドチャージを使いながら敵陣を突き抜ける。そこでチェインを使って強引に釣り上げ……れなかった。
え? なんで? さっきは普通に引き寄せられたのに……あ、やばい。何か光りはじめた。釣り上げられないなら、俺が突っ込むまでだ! 普段なら引き寄せるために使う鎖を、自分が接近するためにつかった。空中に浮いた状態で引っ張れば、踏ん張れないのでそのままキングの下へ行けるという寸法だ。
勢いに乗った所で、さらに地面を蹴り加速する。そのままキングの頭蓋骨に向かって槌を振り抜く。
相変わらず、魔物を叩いている音とは思えないような金属同士がぶつかり合う音があたりに響き渡る。
何とか行動をキャンセルすることはできたが、俺が居る場所は敵陣の最奥。妻たちとはパイレーツスケルトンたちをはさんで反対側にいる。さてどうしましょうかね?
とりあえず、俺を追って来たナイトよ……向こうへ飛んでいけ!
吹っ飛ばし効果のあるハンマースキルを使い、離れてもらった。だけど、方向を調整するのを忘れて、妻たちの方へ飛んでいってしまったのだ。やっちまったな。
と思ったら、ポーン4体がこっちに向かって飛んできた。これは、強引にでも戻らないと全部飛んできそうだな。俺はパイレーツスケルトンたちの位置を見る。
「シュリ、お前に近いルークにチェインして俺ごと引っ張れ」
チェイン1本では届かない距離でも、2本なら問題なく届く距離だったので、両サイドからチェインをかけてシュリに俺を引っ張ってもらう形だ。
急に体にかかった力にびっくりするが、問題なく戻ってこれた。
「シュウ様、あまり無茶はなさらない方がいいですよ」
笑顔で怒っているアリスがそこにいた。すいません。
でも、キングの意味不明な魔法かスキルか分からないけど、発動しようとしていたから許してほしいところである。
1時間程様子を見ながら吹き飛ばしていると、キリエが喜びの声をあげたのが分かった。俺も見てたからガッツポーズをしたけど、キングレイスが何とか倒せたようで、復活することもなく、取り巻きを倒せばおそらく向こうの戦闘は終了する。
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