1394話 忘れられた街
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そういえばメテオを使った街って全滅したはずだけど、その後あの周囲ってどうなったんだ?
厄介な勇者を処分する為に隕石を落として、街ごと消滅させたあそこのことをふと思い出した。
厄介な勇者の死亡は確認しているので、それ以上の被害は出ていないだろうが……
グリエルを呼んでそこら辺の話が来ていないか訊いてみた。
「その件はガリアの方が詳しいので、こちらへ来るように伝えておきますね」
ガリアは仕事でゴーストタウンへ行っていたようで、終わり次第戻ってくるとのことだ。今日は報告書が多めだったのでちょうど良さそうだな。
もう少しで報告書を読み終わる頃になって、ガリアが俺の執務室へ入って来た。区切りのいいところまでやってしまいたかったので、軽食を準備してもらうように伝言をお願いして少し時間を稼いだ。
ガリアが戻ってくる頃には読み終わっていたので、軽食を食べながら例の勇者の件について話してもらった。
あの街が無くなったことによる影響は大して無かったらしい。元々あの国はあの街だけで完結していたので、魔物の素材を仕入れに来る商人や、ダンジョンを目指してきたランク低めの冒険者くらいしか出入りしていなかったそうだ。
大商いは無かったので商会や大店でも、新人の勉強につかわれるような街だったようで、新人たちには悪いがちょっと損をした……程度の感覚らしい。
高ランク冒険者はもともといなかったが、例の勇者によって魅了されたシングルの冒険者が、死んでしまったことによる冒険者ギルドの損失はあるが、シングルが対応しなければいけない依頼も多いわけではないので、依頼に失敗して死んでしまった……くらいの感覚である。
冒険者ギルドからすれば、確かに損失ではあったが数年に1度はある損失程度である。
あれ? でもケモミミ娘3人は貴族にだまされて奴隷として扱われてたんだよな? あの人たちもシングルの冒険者だったよな。それなのに数年に1度? ミリーに聞いた話だし、そのミリーも正規の冒険者ギルドを辞めて、かなり時間が経っているしな。
まぁシングルの冒険者死ぬってことはそれだけで大問題……あ~損失って死ぬって意味なら、ケモミミ娘3人は該当しないか。それに王国で指名手配されて帝国に逃げて、王国の貴族に取り入って戻って来て問題を起こしてた奴も、元々シングルの冒険者じゃなかったっけ?
そう考えると、シングルの冒険者がいなくなるのって、大したことなくねえか? 俺だってトリプルの冒険者を殺しているしな。厳密に言えばメグちゃんに倒してもらったんだけどね。
トリプルの冒険者は、犯罪者予備軍みたいなものだからノーカンかな?
話を聞く限り大きな混乱は特になかったと判断していいのかな?
と思ったら、最後にとんでもない情報が転がり込んできた。
「例の勇者に魅了されたと思われる人物たちが、各街で一斉に自殺しています。確認できただけでも4000人程の人間が、シュウ様の魔法を使った直後、例の勇者が死んだ次の瞬間に自殺しています」
おうふ。予想以上に外に出ていたんだな。勇者1人殺すのも街を滅ぼすのも結局は一緒だったか。
「それと跡地なのですが、ダンジョンは消滅していました。理由は不明ですが、地下40階を超えるダンジョンが無くなっていたのを確認しました」
む? ダンジョンが多少壊れることは確認しているけど、ダンジョンの一部が壊れた事による消滅は、実験結果に無いな……どういうことだ?
「恐らくですが、ダンジョンの半分程が壊れ修復するDPがコアに無かったのではないか? という判断に達し、実験の結果DP不足でダンジョンが崩壊することが確認されました」
「ん? それって誰が判断したの?」
「えっ? こういった話はバザールさんや綾乃さんが担当ですが……知りませんでしたか?」
「うん、初耳。まぁあいつらも暇しているみたいだから、自発的にやってる分には気にする必要もないか? ってか、既に実験済みだったことの方が驚きだけどな。DPの少ないダンジョンコアでダンジョンを作って実験したってところかな?」
どうやら俺の考えはあっていたけど、ダンジョンの半分が崩壊してダンジョン自体が消滅した今回の事例で、よくDPが足りなかったっていう結論に達したな。
俺が仲間外れだったのは、子どもが生まれたからだよな。後で綾乃には何かお礼をしておくか。バザールには、なにがいいだろう? ダンジョン牛でもプレゼントしておくか? 前に欲しいとか言ってた気がするしな。
ガリアからの報告はこれで終わった。ダンジョンが崩壊したことによる影響も周りには出ていないし、自殺者が4000人近くでたけどこれも大した影響はなさそうだ。シングルの冒険者が減ったのも大した影響はなし。
大量に人が死んで街が1つ無くなっただけ、ということだろう。ある程度大きな街が1つ無くなることは、珍しいことではあるが全くない話でもない。人の一生で1回や2回はある話だ。人的に起こされたのは歴史的に見ても稀な話だけどね。
1つ言えることは、俺が倒さなければ面倒な事になっていた、ということだろう。チビ神たちにも対応ができなくて、結局世界がほとんど崩壊したって話だもんな。
罪悪感がゼロってわけにはいかないが、間違いなく褒められるべきことをしているから気にしないでいいよな。
家に着くころにはあの街を記憶の彼方に封印して、子どもたちをながめて癒される。ウルたちが一生懸命お姉ちゃんだよ、って言っている姿が特に癒される。まだ見えていないだろうが、いつも聞いている声がして弟妹たちが喜ぶような声を出して、それに喜んでいるのだ。可愛いな。
俺も下の子たちに手を伸ばして撫でたりしてみるが、あまり覚えのない声に妻たちや娘たち、シルキーにブラウニーたちの手と違って若干ゴッツイ手は、下の子たちには不評らしい。泣かれてしまってその場に崩れ落ちた。
妻たちには全力で慰められたけど、あそこまでガン泣きされると凹むよね。立ち直るのにしばらく時間がかかったよ。
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