1364話 快挙
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「「「とうちゃ~~~くっ!!」」」
魔改造馬車が海産物エリアに到着して、その中から飛び出すようにミーシャたちがジャンプをした。元気なのは良いけど怪我はしないでくれよ。スライムたちなんか流線形のボディーなのに、何故かひやひやしているのが分かるくらいだぞ。
あ、妻たちは誰もついてこなかったけど、従魔たちはもちろん付いてきている。まぁ邪魔にならないように体の大きいクロやギンは、付いてくるのは残念ながら断念している。海産物エリアの見える城壁の上からこっちを見ているけどね。
「お父さん、到着したので降りましょう」
「…………」
ウルからの言葉を聞いて目を見開いてしまった。
「ダメだったかな?」
「いやいやいや、そんなことないけど、急だったからビックリしちゃってね。そう呼んでもらえてうれしいよ、ウル」
はにかむように笑って、俺の背中を押して馬車の外へ出る。
「さて、案内はみんなに任せていいのかな?」
「「「もちろん、お任せなのです!」」」
う~~ん、シンクロする程仲がいい。二卵性多胎児のはずなのに、一卵性双生児よりシンクロするマ〇カ〇の姉妹みたいだな。
「じゃぁ初めに何処へ連れて行ってくれるのかな?」
「えっとね……ウンウンそうだった。あっちにくるーざーを用意しているから、それに乗ってもらいます!」
ブルムが一生懸命説明してくれたが、後ろにいるブラウニーから聞いている事がバレバレだぞ。そして、クルーザーがよく分かってないのか、ちょっとたどたどしい発音になってたしな。
スミレにお尻を押されミーシャに手を引かれ、クルーザーの停まっている桟橋に誘導される。
「ん~俺が召喚した船にこんなのあったっけな?」
思わず口に出してしまった。
クルーザーと漁船の相の子? と言うのは違うか、高級志向の漁船? クルーザーに調査船の機能をつけたような感じ? よく分からないが、なんかカッコいい船が目の前にあったのだ。
「今回の為にみんなで選んで、火がボーボーのおじちゃんに出してもらった!」
背中を押していたスミレがそう答えてきた。スミレからするとガルドは、火がボーボーのおじちゃんなのか。名前で呼んでもらえていない、何とも悲しい事実を知ってしまった。
船の後部デッキが一段下がっていて、海面に近い所まできている。何でこんな形をした船を選んだんだ?
乗り込むとブラウニーが飛行船でもないのに、漫画やアニメで飛行士が切るような服に帽子をかぶっている。船を動かすには向いていないんじゃないか? 見た目的に……
大人の人間をそのまま縮小した見た目のブラウニーがその服を着ると、ただのコスプレにしか見えないな。しかも妖精の羽が生えている。ミーシャたちみたいに子供が着ていると微笑ましいのだろうけど、4人は動きやすい格好に着替えたばかりだからな。
ブラウニーがウルの指示に従って船を動かす。
湖の真ん中に行くのかと思ったら、養殖場の方へ進路を向けた。
「知らない場所が増えてるな。なにがいるんだ?」
「えっとね、これから向かうのは、ふんふん……えびさんを育てているところ!」
ほ~エビを養殖しているのか。ブラウニーに聞いているのがバレバレだぞ! なんでか知らんがブラウニーたちもそれを隠そうとしていない。
俺が知っているエビの養殖と言えば……車エビだな。日本では成功しているって話を聞かなかったけど、ロブスターなんかも海外では養殖しているんじゃなかったか?
エビと言えばオマール海老ってのもいるけど、気になって調べてみたら、ロブスターはアメリカ風、オマール海老はヨーロッパ風の呼び方で違いはないらしい。種類による差はあるだろうけど、同じ物を指す言葉らしい。
「あそこでは何を養殖しているのかな?」
「とーたんの好きなエビ!」
ってことは、車エビか? 寿司ネタとすれば甘エビも好きだな。海老天とかエビフライ、良いよね! 今日は海産物がお昼になるみたいだし、もしかしたら期待してもいいのかな?
「それはね、「「イセエビ!」」」
ブルムの声に合わせてミーシャとスミレがハモった。何かでタイミングを計ってたりするのか? ここまで声が揃うと反対に怖いんだが。
声が揃ったことに驚いていて、もっと肝心なところに気づいていなかった。
暫くして3人が言った言葉の意味について理解した。
「えっ!? 伊勢海老を養殖しているのか? 俺の故郷でも売り物にするには難しいって言われていたあのエビを!?」
確かに俺は伊勢海老が好きだ。こっちに来るまで食べた事ないけど、それなりの大きさの伊勢海老を召喚して湖に放置していたら育っていた程度なのに、養殖に成功したのか?
「説明をさせていただくと……」
ブラウニーが代わりに説明をしてくれた。
どうやら、昔俺が伊勢海老を食べた時のリアクションが、本当に好きだということが伝わったらしく、海産物エリアの養殖チームが躍起になって研究したそうだ。
アクアにも手伝ってもらい、日本の伊勢海老に関する書物や報告書を召喚してもらって、色々実験したのだとか。
幼生期に他の幼生体と一緒にしておくと、足が絡まって欠損してしまうのだとか。それは報告書にもあったので、確認のためにやったことらしい。
他にも色々試して断念しかけたときに、放置していた養殖用の池でしっかりと育っていたのだ。今でも理由は分かっていないようだが、稚エビが育つのでそのまま使っているのだとか。
育てることに成功はしたが、どうして上手くいったのかは分かっていないってことか。
で、ある程度育った伊勢海老は稚エビとなり、池を移しても大丈夫となった伊勢海老を、大きくなるまで育てる池に移すのだとか。ただ、普通なら産まれてから食用になるまでに3年かかるのだが、今一番長生きしている伊勢海老でも2年経っていないらしい。
じゃぁ食べれないのか? と思ったが、幼生体とは別に稚エビを育てるために研究していた個体が、食用に適したサイズになっているらしい。
養殖場の隣に停まり、ウルが養殖を担当している魚人に頭を下げてお願いしている。ウルたちも自分で獲れるなら自分で獲りたかったのかな?
少し残念そうな顔をして魚人の背中を見ていた。
戻って来た魚人が捕らえてきたのは、50匹以上いた。これだけ大量にいると有難味が無くなる気がする。
一段下がった船尾から娘たちが伊勢海老を受け取って、高くなっているところにある船倉に内蔵されている生簀に入れていく。
レベルを考えればケガすることもないだろうけど、自分の顔より大きい伊勢海老を物怖じせずによく掴めるものだな。
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