1361話 予想外
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目が覚めると、馴染み深い重さが体に乗っているのが分かる。だけど俺の記憶にある重さより重く感じるのは、娘たちの成長を感じる瞬間だな。たった1ヶ月半なのに、子供の成長って早いな。
お腹や胸の上に感じる重さを感じながら、一人ひとり頭を撫でてやる。
これは、髪質が柔らかいからスミレかな? こっちはネコミミが付いているからミーシャだな。ってことはこっちはブルムか。そしてこれは、ウサミミだからウルかな?
……ん? 3人じゃなくて4人もいる。スミレにミーシャにブルムにウル……ふぁっ!?
驚きのあまり体を跳ね起きてしまった。
俺の体の上から4人が体の上から転がり落ちる。眠気眼の4人から抗議の声が上がるが、俺はそれどころではなかった。
今までウルと一緒のベッドで寝た事はあるが、ミーシャたちみたいにくっついてくることは無かったのだ。それが今日、目覚めたらウルがミーシャたちと同じように俺の体に抱き着いて来ていたのだ。
どこにいたかといえば、ミーシャたちが俺のお腹や胸の上に張り付いているのに対して、ウルは俺の左脇といえばいいのか、肩に頭を乗せて腕枕のような形で寝ていたのだ。
ウルは目が覚めたのか恥ずかしそうに顔を赤くしていた。それに対してミーシャたち3人は、眠そうな顔で気持ちよく寝ていたのに! と猛抗議でポコポコと俺のことを叩いてくる。
イテテテッ!
そうだった! この子たちはレベル300に達していたんだった。油断しているといいパンチをもらってしまうので、少しだけ体に力を入れておく。
これだけ力が強いと、同年代の子たちと遊ぶ時はどうしているのだろうか? 怪我をさせたりしてないよな? これまでに話に上がっていなかったから大丈夫だと思うけど。
知りたい事が増えてきたな。どうやってレベルを上げたのか、友達に怪我をさせていないのか、ウルが俺の腕枕で何で寝ていたのか、確認したい事がたくさんある。
とりあえず、可愛く危ない抗議をしている3人の娘たちを、落ち着かせないといけないな。今までの経験を考えるとこの怒り具合は、なかなか静められない気がするけど対応しないとな。
「そろそろ、おやつの時間だよ!」
勢いよく扉から入って来たのは、どれだけ食べても太らないシュリだ。病……呪い……体質の所為で普通の人の何倍も食べないといけないシュリは、比較的スリムな妻たちによくからかわれているっけな。からかわれているというより、羨ましがられているというべきか。
「「「おやつ!!」」」
おっと、俺に抗議をしていた3人はおやつの魔力にやられて機嫌が良くなった。今度から娘たちが機嫌を損ねたらおやつを出してみるか? あ~でも、それをするとミリーたちに余計なものを食べさせるなって怒られそうだな。
シュリに続いて出てしまったミーシャたち3人を見送った俺は、隣に残ったウルと一緒におやつを貰いに食堂へ向かう事にした。
2人になったら甘えてきたので、いつもはミーシャたちの誰かが占領している抱っこの位置を独り占めしている。
俺の歩く揺れに合わせてウサミミが揺れている。獣人の妻たちやミーシャによく遊びでやっている、ミミハムをしてしまいそうになって慌てて止めた。
ネコミミもキツネミミもオオカミミミもイヌミミも柔らかくて独特な触感がね。あれは人間の耳では体験できない感触なのだ。
漫画に出てきそうなウサミミだから柔らかそうなんだよな。
そんな事を考えている間に食堂へ到着する。中では待ちきれずにおやつを食べ始めているミーシャたちが目に入った。
俺が入って来たのも向こうから見えている。そこで口に物を入れて声をあげたスミレに、スカーレットの小言が……もう反省しているから、その辺にしてあげてくれ。泣きそうな顔になってるぞ。
一緒に声に出そうとしたミーシャとブルムは、声を出す前にスカーレットの声に口を両手で押さえて我慢していた。
何で声を出したかといえば、自分たちの特等席の俺の腕の中をウルが独占していたからだ。おそらく、私の席! とか、私の場所! みたいな事を言っていたのだろうが、口に物を入れたまま声を出したから怒られてしまったのだと思う。
今日のおやつはホットケーキか。バターをたっぷり乗せて食べたい所だ。ホットケーキのほのかな甘みにバターの塩気が……たまらんです!
俺の前に準備されたのは、ホットケーキと1つの瓶だった。
「バターは無いの?」
持ってきてくれたブラウニーに聞くと、無言で指を指した。その指の先には、普段ダンジョン農園から出てくる事の無いクイーンハニービーがこちらを見ていた。
「うっ」
あの視線の中で、バターを食べるなんてできそうにないな。おそらく、この瓶に入っているハチミツ、王蜜を持ってきてくれたのだろう。俺が食べる瞬間を見るためにあそこに残っているのだと思う。
瓶のふたを開け、王蜜をホットケーキにかけていく。切り分けて一口食べると……
「あれ? いつもより甘さが控えめだけど、美味しいな。ホットケーキにめっちゃあうな」
どうやらこの王蜜は、ホットケーキ用に採取された物だということが分かった。俺のために作ったのだとか、クイーンハニービー、ありがとな! 親指を立ててグッっとやると、満足したように巣へ帰っていった。
娘たちが俺の持っている王蜜を見つけて、俺にかけるように促してきた。残り少なかったので、ちょっとだけだぞ! といってかけてやる。
おやつを食べ終わった娘たちは、寝て起きた後なので体力は全快。庭にかけ出して行った。それを追いかける母親とケットシーにスライムたち。行列だな。従魔たちよ、お前らは並ばなくていい!
近くにスカーレットが来たので、娘たちのレベルについて何か知らないか聞いてみたら、あのレベルの首謀者はシルキーたちだったのだ。
レベルが上がれば、体も強くなって抗体も強くなるのだとか。健康で過ごしてもらうために、レベルを上げたんだと。本人たちには遊び感覚になるように、レベルを上げた魚等の解体のお手伝いをさせたんだって、この歳でやるのか? と思ったが、この世界では普通に魚の解体を手伝う事があるらしい。
よく分からん。
一緒に遊ぶ子供たちへの配慮も聞いてみたら、力が制御できないことが少し問題になったのだが、暇だった創造神がたまたま話しかけてきて、力を押さえるアクセサリーをくれたんだって。じいさんよ、ちょっと自由すぎやしませんかね?
それによって問題が生じていないならいいのか?
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