1354話 大人の行動を見ている娘たち
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『と言うか、前回作ったクロスボウでもAランク以下なら問題なく刺さるんじゃない?』
確かにあのクロスボウなら刺さるか。
『そうなると問題になるのが、クロスボウの数でござるな』
「数は問題だよな。っと、本当に刺さるか実験をしないといけないよな? まだDPでグリフォンを召喚できないんだよな……住んでいるところに行って試してみるしかないか?」
本物じゃないと分からない事があるので、探してから実際に撃ってみるしかないな。
でも、あれには問題があるんだよな。ボルトを改造しているから、作成に手間がかかるんだよね。魔物でもDランクを越えれば、矢が1本刺さった所で大した効果はないんだよね。それでCランクの魔物、グリフォンともなれば、刺さった所でどこまで効果があるのだろうか?
1本でも効果を出すためには、勇者に対応するために作ったあれを使う必要があるだろう。毒と出血のダブルパンチであれば、瞬間的に効果を出す事は難しいだろうが、1本でも刺さってしまえばいずれ無効化できるから、頑張ってボルトを量産してもらうしかないか?
クロスボウ自体は、戦争のために3000張は作っているので数は問題ない。実働可能な兵士の数よりクロスボウの方が多い。
そういえば、今回の戦争でボルトをほとんど使っていなかったな。慌てて量産する必要は無いか。量産をしやすい環境作りに注目するべきだろうか? 一部の鍛冶師たちに無理を強いている状況は良くない。ある程度の力量があれば作れる方法の確立を考えるか。
考えると言っても、俺じゃなくて老ドワーフなんだけどね。
今使っているボルトは、細工がされており中に穴が開いているだけではなく、側面にも穴を繋げているのでその細工に手間がかかっているのだ。
ドワーフじゃなくても、パイプのように穴をあけるだけなら簡単に作れると言っていた。細工が問題になっているんだよな、なんかいい方法が無いものか?
悩んでいると、頭がオーバーヒートしそうになったので考える事を止めて、ボーっとする事にした。
どれくらい経ったのか、魔導無線が呼び出し音を鳴らしていた。何かトラブルでもあったのだろうか?
「もしも~し」
『『『とーたんの声だ!』』』
聞こえて来たのは、3人の娘たちの声だった。俺は混乱している。娘たちが俺と会話する時は、基本的に母親の誰かが繋げてから3人に渡すのだが、今回は3人の声しか聞こえていない……
『とーたん! お仕事まだ終わらないの?』
混乱している間にブルムが俺に質問をしてきた。
「あっ、大変な所は終わったんだけど、後始末……お片付けに時間がかかるから、まだ帰れないかな」
『お片付け大事! スミレもオモチャを片付け忘れて、良く怒られる!』
娘よ、それは胸を張って言う事じゃないぞ!
「お片付けは大事だぞ。お仕事でも遊びでも、片付けから始まる事だってあるからね。3人はお片付けをできる娘に育ってほしいな。とーたんと約束してくれるかな?」
『お片付けはめんどーだからやだ!』
今度はミーシャか……地球で考えたら、俺の家って上から数えた方が早い位にはお金持ちだよな。メイドは雇ってないけど、妻たちやブラウニーがやってるからな。
お金持ちだったら自分で片付けないとか普通か……ん? 普通なのか? 全部人任せにするのが金持ちなのだろうか? よく分からないドツボにはまってしまったので、考える事を放棄した。
「そんな事言ってると……もう、オモチャを買ってあげないぞ?」
『『『っ!!!』』』
声にならない声が聞こえて来た。
『オモチャ欲しいからブルムは片付ける!』
『スミレも!!』
『ミーシャも片付けるの!』
「みんな偉いね。どれくらいかかるか分からないけど、しっかりお片付けできる娘になっていたら、前に話していたオモチャの1つを買ってあげよう」
『『『わ~いっ!』』』
片付けられなかったら、買ってもらえないことを理解しているのだろうか? 無邪気に無線の先で喜んでいる3人の事を考えながら、大丈夫だろうか? と考えている。
「おっと、そういえば3人だけなのか? お母さんたちは?」
『かーたんは、お庭でお茶飲んでる! すぐそこにいるよ!』
「自分たちだけで魔導無線を動かしたのか?」
『そうだよ! すごいでしょ!』
ミーシャがドヤ顔をしているのが分かる口調で、自分たちのしたことを話してくれた。確かに、自分たちだけで魔導無線を使えたことは凄いが、間違って他の国に繋がったら大変なことになるぞ。
こういうことは頭ごなしに怒っても駄目だと、何かに書いてあった気がする。とりあえず、使えることは褒めておくが、近くに母親がいない時にいじったら怒られちゃうから、今回の事は誰にも話さないから、次からは一緒に使うんだぞ! と話しておいた。
少し不満の声を出していたが、怒る相手が母親ではなくシルキーたちだったらどうする? って聞いたところ、魔導無線を間に挟んでいるのに、3人が周りをキョロキョロと確認している姿が目に浮かぶ。
俺の言った事を中心とした理解してくれたようで、俺に言わないように念押しをしてから魔導無線を切った。
俺はそのままシルキーに繋げる。
『はいはい、どうなさいましたか?』
コバルトが魔導無線に答えてくれた。
娘たちが3人で魔導無線を使ってしまった事を報告する。え? 黙っておくって言ったのに、話していいのかって? そんなの良いに決まってるだろ。でも、シルキーたちにも絶対に今回の事で3人を怒らないように命令する。
今回の問題は、娘たちがいじれるところに、魔導無線を置いておいた俺たちが悪いのだ。それに、娘たちも反省している様子がうかがえたので、わざわざ怒る必要は無いと思っている。
今度、何かしらの理由をつけて魔導無線の位置を動かす必要があるだろう。
それにしてもビックリしたな。まさか3人だけで魔導無線を起動して俺に繋げるとは、親の行動を良く見ている証拠だな。
もう1度ボーっとする気も起きなかったので、考える事を再開した。
ボルトの側面に穴をかけているのは、血を効率よく抜くための細工だ。真ん中に1本穴が開いているだけでも、それなりの効果はある。毒と併用するのだから、無理に細工する必要もないと思う事にした。
実際にグリフォンを倒す時に使ってみれば分かる事だ。取り急ぎ、ドワーフたちに他の鍛冶師たちでも作れるような簡易版を作ってもらう事にした。
俺がずっとここに残っている必要は無いので、従魔を一部置いて出かけるつもりだ。思ったより近くにグリフォンの住んでいる谷があるようなので、そこまで足を運ぼうと考えている。
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