1349話 悪意の臭いを感じ取る
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ドクドクと心臓が激しく動いている状態で魔導無線をとる。
『シュウ様。そちらの様子はどうですか?』
魔導無線から聞こえてきた声は、レイリーの物だった。
「こっちは、帝国軍が予想通り攻めて来たから、偉い奴等は全員回収して、兵士は追い返してる感じかな? 散り散りにならないように使った魔法で、冒険者を500人位殺しちゃったけど、誤差の範囲だから問題ないでしょ」
『そうですな。シュウ様の力をもってすれば、鏖殺する事も可能でしょう。こう無線に出られるという事は、状況が硬直している所だと思いますので、このままこちらの話しをせていただきます』
レイリーは、こちらの事を正確に理解しているようだ。
『こちらの方なのですが、予想通り魔の森を越えて来ようとした軍は1ヶ国分だけでした。冒険者で対応しようとしたのですが、以前シュウ様があの森に放った魔物が進化していたようで、大打撃を与えて追い返しています。半分程がケガを負っています。交戦もしていないので、冒険者から文句が出ています』
俺の記憶に無いな。魔物を解き放って俺は何がしたかったのだろうか?
で、その魔物が進化して軍を1つ追い返したのか? 冒険者も覚悟してきてくれている人だから、戦闘がなければボヤいてしまうものだろうか?
『残りの2ヶ国の軍は、えっと……フレシェット弾でしたか? カタパルトの砲弾が所定の効果を発揮して、6割ほどの兵士を戦闘不能にしています。おそらくこちらから攻めない限り、負傷した兵が動けるようになるまで、その場に待機すると思われます』
おぉ~完勝ですな。
「じゃぁ、そっちも様子見程度ってことかな? 無理だけはさせないように休憩をとらせてやってくれ。何かあったらまた連絡よろしく!」
『了解です』
とりあえず戦争は終わりそうか? 動けるようになったらまた攻めてきたりすんのかな?
帝国軍の動きを観察しながら、この後どうなるのかを考えていた。
こっちはインペリアルガードが到着すれば解決するのだが、2時間ちょっとか。
「おっ!? 何人かこっちに向かって来てるな。何を目的にこちらに向かっているのかな?」
帝国軍から10人程の兵士が門の前に到着して、
『この門の責任者と話がしたい。出て来ていただけないだろうか?』
「俺が責任者みたいなものだけど、掟破りの戦争を仕掛けて来た帝国軍の兵士が何の用だ?」
俺の姿を見て、しばらく考えた後に、
『対応していただき感謝します。此度の戦闘なのですが、領主に命令され回避できませんでした。私たちの命は好きにしてもらっていただいて構いません。それと引き換えにとは言えませんが、部下の兵士の命は助けていただけないでしょうか?』
「手を出して来ないのであれば、こちらから攻撃する事は無い。だが、領主の命令だったとはいえ掟破りをしている。罰は俺からではなく、国から下される事になるだろう。まぁこちらが納得する処分をしないのであれば……こちらに向かっているインペリアルガードに言っておきます」
『私たちの命で、ここで起きた戦闘を無かった事にはできないでしょうか?』
「それは無理。だって帝国とは話が済んでるから、無かった事にする事は不可能だよ。どうしてもというのなら、2時間後くらいに到着するインペリアルガードと交渉してくれ」
残った帝国軍の中で一番偉い人間だったのだろうか? 個人的にはそうであって欲しいが、ここで先程まで指揮をとっていた人間がいなくなったら、散り散りになって帝国としては困るんじゃないか?
『最後に1ついいだろうか? 連れていかれた領主たちは解放していただけるのでしょうか? 私たちが代わりになるのは無理なのでしょうか?』
これが本命か?
「あなたが賢い人間だと思って話すが、領主たちは反逆罪が適応される事が決まっている。中にはいい領主もいるだろう。糞みたいな領主もいると思う。こちらに都合の悪い領主の一族には滅んでもらう予定だ」
『では、いい領主様の方はどうなさるのでしょうか?』
「家族に害が及ばないように対処する予定だ、とだけ言っておこう。逃げてもいいが、インペリアルガードが到着するまでは、待っていた方が得策だと思うぞ。悪いようにはしないと思う」
そう言って話を打ち切る。
連れて来た9人は半分位理解できていなかったようだが、交渉していた奴だけは俺の言っている事を理解できたようだ。
理解できたせいで、その兵士だけが肩を落としている。
信頼できる領主の兵士だったのか? こんな事をしでかす領主を救う必要なんてあるのか? 忠誠心のなせる物なのだろうか?
しばらく考えて、頭を振った。
違うな。あの状況を立て直した有能な兵士かもしれないが、誰かに強要されて交渉していると思った方がいい気がする。
例えばあの軍の中に、それなりの力を持った人間の子供がいるとか? そいつに命令されて仕方がなく? いや、軍として動いているのであれば、領主を失っている現状であれば、上下関係は絶対的なものがあるはずだ。
それ以外の要因か? ぱっと思いつく所で、そこそこ偉い親がいるけど階級は低い奴がいて、そいつが指揮官の家族を人質にとって領主を助けようとしている? その報酬でいい席に着きたい?
何かしっくりくるな。そうでなければ、あんな糞共のために名指揮官が領主のために動くはずがない。脅されていると考えるのが妥当だろう。
そう感じたからには、確かめる必要が出て来た。マップ先生で戻っていった10人をマーキングして、行動を監視する事にした。
壁の上で座ったまま帝国軍の様子も見れるように、壁の一部をいじって平らにしてしまう。
ダマ・シエル・グレンを呼び寄せて護衛を任せた。ダマには大きな状態のまま俺の後ろに来させて、背もたれ代わりとして活躍してもらおう。
「ダマ、お前ってモフモフだけどフワフワじゃないんだな。ぽっちゃりネコみたいな柔らかさを求めてたけど、思ったよりムキムキ」
『それはそうですよ。ネコ科動物とはいえ、体が大きければ体を支える筋肉だって多いのですから。それに分類上虎ではありますが、実際の虎とは骨格も筋肉の付き方も違いますし、猫のような柔らかさを求めないでください』
俺はあからさまにガッカリした顔をしたと思う。クロやギンは、ダマに比べればスリムなので、モフモフだけどフワフワではないのだ。スライムは、モフモフじゃないけどプニプニなので、用途が違う感じだろうか?
帝国軍の様子を見ながら、ネコ科の魔物でぽっちゃりしている奴っていないかな? とか考えていた。
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