1346話 いきなり終局間際
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領主の数を把握して、気になる事があった。マップ先生で人員の確認をすると、俺の考えている通りの分布を示していた。レイリーにも確認したい所だが、レイリーは向こうの戦闘指揮をとっているので邪魔は出来ない。
だけど、俺の知りたい事だけなら、グリエルやガリアでも答える事は可能だろう。そう思いガリアと連絡をとってみる事にした。グリエルは、皇帝と会談中かもしれないからだ。
「ガリア、ちょっと聞きたい事があるんだが、今時間大丈夫か?」
『問題ないですが、今戦闘中ではないのですか?』
「戦闘中だけど、こっちは従魔がやってくれているから、俺は状況の観察だけだよ。っと、そんな事はどうでもいいんだ。聞きたい事があってね。普通、1つの街で戦争に参加できるレベルの兵士って、どれくらいいるもんだ?」
『そうですね……多くても1500~2000って所でしょうか? 街の特性や規模にもよると思います。たまに飛びぬけて多い街もありますが、普通であればその位かと思われます。もう少し細かい事が聞きたいのであれば、ゼニスにお聞きになった方がいいと思いますよ』
「……? 何でゼニスに聞いた方がいいんだ?」
『えっと……シュウ様、報告書の中に支配下にない街の、細かい数字が乗っている物とかありませんでしたか? それなのですが、誰が情報収集していると思いますか?』
「えっ!? もしかして、ゼニスって商会を管理している一方で、街の情報も集めてたりするのか?」
『各街への商会進出は、利益を確保する事より情報収集が主な役割と言っても過言ではありませんよ。それなのに街へ商会を出せば、利益が生まれます。どれだけ、ディストピアとゴーストタウンの物が優れているのか分かる状況ですね』
「なるほどな。とりあえず、ゼニスにも連絡してみるわ」
ガリアとの連絡を切って、そのままゼニスに繋げる。
『……そう言う事ですか。帝国の東面地域で20の街が関わっていたとして、兵士の最大動員数は、おそらく20000に届かない程度だと思います。実力主義の帝国でも、戦う力だけで軍は維持できませんからね。量より質にこだわっている領主も多い位です』
「やっぱりそうだよな。領主1人が1000人程動員できて、最大で20000か。でもそうすると、数が合わないんだよな」
『どういうことですか?』
俺がマップ先生で確認した所、正規兵と呼んでいいのか分からないが、戦闘に耐えうる人員が35000人だったのだ。15000人が湧いて出た事になる。それをゼニスに要領を得ない説明を何とか理解してもらった。
『そうですね。それは確かにおかしいですね。こちらで掴んでいる情報では、最大であの数だったのですが、街の治安を考えると全員を出すわけにはいかないはずです。なので、2~3割は街に残してきているはずなのです』
メギドを攻めるために出兵したけど、帰ってきたら街が混乱していた……なんて事になったら、本末転倒だよな。じゃぁ残りの20000人程はどこから湧いたんだ?
2人で悩んでいると、
『ゼニス様、言われた資料を集めてまいりました』
ゼニスが誰かに指示をして、資料を持ってきてもらったようだ。だけど、この謎を解けるような物なのだろうか?
『なるほど、そう言う事でしたか』
1人で納得していないで、俺にも解るように説明を!
そんな事を考えていたら、情報が送られてきたので表示する。確かにこれなら人数が集まってもおかしくないな。
『それにしても、冒険者にこんな通達を出すなんて、帝国はバカなのでしょうか? どんなに頑張っても隠蔽できるレベルを超しています。もしメギドを占領する事が出来ても、皇帝は反逆罪で全員を裁く事になりますよ』
「とりあえず分かった事がある。領主たちは深く考えていない気がするな。メギドとバレルが生み出している、お金が欲しかっただけじゃないのだろうか?」
『そうかもしれませんね。特に高品質なバレルの薪は、北部の街には高く売れますからね。税金なり売値なりを高くすれば、懐に結構な額が入ると……それでもシュウ様が手を引けば、あの街は使い物にならなくなるんですけどね。無知って怖いですね』
ゼニスと雑談をしている間に状況が変わってきたようだ。スライムが半分程、お偉方を連れ帰ってきていた。
ちなみに、戦力の水増しには冒険者を利用していたようだが、略奪行為も認めており街の人間を自由にしてもいいと、お墨付きを出していたらしい。それで、20000人の冒険者が集まったという事だ。
残りの15000人は、一緒にいる事による水増し要員で、実際には輜重部隊や後方支援部隊のようだ。ここら辺の部隊は、護衛以外命令をしっかりと聞く一般人でも何とかなるからな。
『主殿……オークやゴブリンより臭い奴がいるんですが、あれは人間なのですか?』
不意にダマから念話が飛んできた。状況がよく分からなかったので、どこにいるのか聞いて移動をする。
移動した先は、関所の広場だ。戦闘には参加していないが、捕虜にした人間をまとめるのに休息中の兵士が協力してくれていた。すまない、助かるよ。後で美味い物を仕入れるから、存分に食ってくれ!
っと、広場についてビックリ、豚が人間の言葉をしゃべっていたのだ。
「貴様ら! 高貴な人間である私を地面に座らせるとは何事だ! 貴様らは、戦争における取り決めを知らんのか! 捕虜に対しては、人道的に扱わなければならないという事を知らんのか!」
と、叫んでいた。
「ダマ……俺には、豚が喋っているように見える。あれは人じゃないと思うぞ……」
そう声を絞り出してダマに伝えた。
「誰だ! 私の事を豚と言った奴は!」
俺の声が聞こえたようだ。でも、自分の事を豚と認識しているのか? それとも豚と言われ続けて過剰に反応しただけか?
「えっと、そこの豚。ちょっと静かにしろ。1つ聞いておくが、戦争における取り決めの事なのだが、お前らは宣戦布告をせずに攻めて来たよな? それを守っていないのに、こちらがルールを守る必要はないと思うのだが? それに、豚に人道的と言われても……お前人じゃないジャン」
「なっ! この私に向かって、3度も豚と言ったな! 殺してやるからこの縄をほどけ!」
「これだから豚は困る。お前らは、ルールを破って戦争を引き起こした犯罪人なんだぞ? そんな奴らの縄をほどくわけないだろ。それに人道的に扱えというが、これでも捕虜の扱いとしては十分いい方だと思うぞ。中には拷問をして情報を吐かせていても、人道的に扱っているとか言う奴がいるらしいしな」
この後も豚と話して分かったが、偉い人間には偉い人間に対する礼儀を払え! という事らしい。街を複数収めている俺は、実質的に小国の国王と言っても過言ではないのだが、大国の一領主の方が偉いらしい。
部下の話を聞くと、この豚さんは自分が酷い事をしているのに、されるのは嫌だ! という典型的なアホらしい。取り合うだけ時間の無駄みたいだな。
面倒だったので、こいつだけ豚小屋……だと豚に失礼だな。豚は綺麗好きだから、こいつと一緒にしたら可哀そうだ。それにしてもこいつ臭いな。
壁の中に作った特設の牢屋へ突っ込んでおいた。水も使い放題で臭くもない人道的な部屋だ。外に声が漏れないので、そこで騒ぎながら生活してくれや。
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