1345話 交戦開始
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暫くしてグリエルから連絡が入った。まだ帝国軍には動きは見えない。
『シュウ様。今よろしいですか?』
「帝国軍はまだ動いてないから平気だよ~」
『では手短に、皇帝へ連絡しました。端的に言えば、皇帝はこの事態を想定していなかったとの事です。メギドの近くで戦争が起きた事は、前に確認した通り知っていましたが、軍がこれほどの規模で動いている事は知らなかったようです』
ふ~ん。でもさ30000人の軍を相手にするなら、最低でも同数、安全を期すなら倍はいてもおかしくないかと思うけど、ただ知らなかっただけか?
『皇帝の所へは、東面方域の領主たち貴族が対応するので、問題ないと連絡が入っていたそうです。中央軍やインペリアルガード等の戦力は、必要ないとの連絡があったみたいですね』
今回の事は、皇帝の認知していない兵力の移動のようだ。今回の件はどう決着をつけるつもりなのだろうか?
『もし私たちの想定で事が動いている場合は、帝国の領土の10~15パーセントがシュウ様の領土になる可能性が高いようです。もしそうなれば、皇帝もさすがに困るという事で、穏便に解決してほしい……との事でした』
「穏便にって言うけど、どうすりゃいいんだ? 手心を加えてこっちに被害が出るのは面白くないぞ?」
兵士は、上官の指示に従い戦うだけで、状況を理解できていない可能性が高いので、見逃してもらえないか? との話だったとか。
んなバカな。状況を理解していない99パーセント位の兵士を見逃せって、どれだけ無茶な事を言っているか分かってるのか?
『おそらくですが、シュウ様の力をご存じですから、こんなバカな事を言っておられるのかと思います。ですが、向こうの要求に従う必要もないです。思うままにしても問題ないかと思います』
とりあえず、要求はあるがそれを考慮しても従う必要はない、そりゃそうだ。出来るからやれって言うのは違うよな。もし見逃した所で、帝国から何か報酬のような物が出るわけでもない。お願いされているのにそれはどうなんだ?
話は終わったのだが、帝国軍に動きが見られないので、グリエルを話を続けた。
どうやらいままでのは表向きの内容だったようだ。何故それを俺に話した! と思ったのだが、対外的にも内外的にも、自分たちが最大限利益があるように交渉する物だと、でもさ、それってただの押し付けじゃね?
って思ったのだが、グリエルは俺から一任されているが、それは俺の街に対して絶対的な権限を持っているだけで、対外的には俺の代理なだけで強い権限はないのだ。だから、今回は一方的な皇帝の要求という事だ。
皇帝が絶対的な権限を持っているとはいえ、1人ですべてを決められるわけでは無い。大統領制に近い力を持ってはいるが、今回のような事案だと大臣を交えて話をする必要があるため、最大限の要求をしたようだ。実力主義の帝国でも、権力の限界はあるようだ。
皇帝とはそもそも国で一番強いだけなのだ。皇帝が変わるたびに、法律が変わっているようであれば、国として成り立たなかったため、強い権限は持っているが縛りはあるようだ。
そう言う意味では、自分の領地を持っている貴族の方が、好き勝手しているのが帝国の現状らしい。とはいえ、皇帝の命令を無視するのであれば制裁が加えられるので、貴族も気をつけているのだとか。
皇帝は領地を持っていないのか? と思ったが、帝都は領地という扱いではないらしい。貴族みたいに好き勝手は出来ない。なんか、帝国の印象が変わったな。もっとゴリゴリの脳筋かと思っていたら違うんだな。
それで大臣がいなくなった後に、皇帝はグリエルと一対一で本音を話したそうだ。
一般の兵の被害は出来る限り抑えてほしい、と懇願されたそうだ。指揮官クラスは、どうなってもいいとの事だ。この戦いの火蓋が落されたとすれば、生き残っても処刑は免れない。むしろ生きて帰れば、反逆罪に問われ家族も一緒に処刑になってしまうのだとか。
だから、こちらで処分してもらった方が、後腐れなくて助かるらしい。家族もどうしようもない人間であれば、一族全員処刑した方がいいけど、そうでもない人だっているよな?
大前提として、俺たちが戦いに勝利する事なのだが、皇帝は俺が負けるとは考えていないようだ。まぁこの程度の軍にやられるような俺たちではない。レベルを考えれば、殺すだけなら俺1人でも可能だ。ただ人が多いので、どれだけの数が逃げるかって所だな。
「グリエル、皇帝にもう1度連絡をとって、確実に殺してほしい貴族と生きて返して欲しい貴族の名前を聞いておいてくれ」
グリエルは含むような声で「なるほど……」と言っていたので、俺の意図する所を理解してくれたようだ。
俺は、帝国にとって有益となる跡取りや家族がいる貴族と、家族全員が害悪となる貴族を振り分けてもらう予定だ。
「あっ! グリエル! 帝国軍に動きがあるみたいだ! 早めに連絡を入れておいてくれ。できる限り貴族は捕えて、一般兵は追い返す。後、生かしておく貴族を連れて行かせるための人材を、寄越すように言っておいてくれ」
そう言ってグリエルとの連絡を終わりにする。
さて、動きは見られたが、どうするつもりだ? まぁ、強欲な貴族が兵を出しているわけで、このまま帰るなんて俺は思っていない。
期待を裏切らず、攻城兵器を前に押し出してきた。
帰るように何度も言うが、こちらに返答する事も無くカタパルトから岩が飛んできた。
「シエル! 防げるか?」
手を上げて問題ないとジェスチャーをしてきた。守りはシエルに任せよう。
俺はシエルが守っている間に、風魔法を準備する。
準備している風魔法は、拡声魔法だ。声を大きくする、ただそれだけの魔法。
『帝国軍の屑共! 攻めてくるなら、死を覚悟してかかってこい! 死にたくない奴は、さっさと去れ! そしてこれは警告だ。バッハやれ!』
俺の声に合わせてバッハが体を大きくした。カタパルトや破城槌等の攻城兵器に向かって、火の玉を吐き50個程用意されていた攻城兵器を全て壊した。
「ワイバーン家族のみなさん、空を飛んで馬車が逃げようとした奴らがいたら、捕まえて持ってきてくれ。グレン、馬で逃げる奴がいたら馬を殺して、逃げた奴を連れて来てくれ。ハク、お前は貴族だと思われる人間を見つかたら、動けないようにしておいてくれ」
命令を出して行くように言うと、スライム全員が集まって、高速で震えだした。
これだけの質量が高速で揺れると、ちょっと気持ち悪くなるから止めてくれ。うっぷ……
自分達にも指示をくれと訴えているみたいだ。じゃぁお前たちは、兵士には傷付けないように地面を進んで、ハクと同じように貴族を捕らえるように指示しておく。
マップ先生を見る限り当主が20人近くいて、貴族籍を持っている人間が100人はここに来ているのだ。従魔よ頑張ってくれ!
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