1343話 嫌な予感は当たる
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俺は、従魔に先駆け関所の上空へ到着する。
「数は分かっていたけど、50000人もの軍が動いているとさすがに壮観だな。俺たちを壁にしているとはいえ、もしもの時のために備えての軍だったらよかったんだけどな。何で壁を迂回して進もうとせず、関所を目指しているんだか」
思わず帝国軍を見てそんな言葉を漏らしてしまった。
そのまま関所の上に降り立つ。
「シュウ様、お待ちしておりました。帝国軍がこちらに向って進軍しており、30分程前に視認しました。レイリー将軍とグリエル様の指示により、先日作成していただいた跳ね橋を上げております。ですが、大規模な戦闘を想定していなかったため、関所にいる人身では対処は難しいであります!」
レイリーって将軍って呼ばれてるんだ……と、どうでもいい事を考えてしまったが、気を引き締め直し報告をしてくれた兵士と向き合う。おそらく関所を守っている兵士の指揮官だと思われる。
「兵員に関しては、こちらの都合で準備できなかったから気にしないでくれ。もう少ししたら俺の従魔たちが到着するから、関所の中央をあけておいてくれ。後は俺が対処するから、君たちは通常業務と言っても、跳ね橋を上げていたら仕事は無いか? だったら、警戒人員だけ残して休息に入っていいよ」
「ですが! シュウ様にだけ押し付けるのは!」
「気にすんな。普段はグリエルやガリアが街の事を、レイリーが軍や兵士の事を、ゼニスが会計やその他雑務をしてくれているんだ。俺ができる事と言えば、こういった荒事の対処位だからな。だから、警戒人員だけでいいよ。後は休息と言っても休まらないかもしれないけど、体の疲れ位は取っておいてくれ」
「了解しました。警戒要員を残し休息に入らせていただきます!」
自分の責務に忠実なのは良いけど、少しは力を抜かないとこの先大丈夫だろうか?
「さて、今の速度なら、後1時間もすれば到着するだろうか?」
独り言を呟いていると、後ろから衝撃を受けた。
その原因を手繰り寄せると、プニプニしていた。これはニコだな。スライムも色によって多少触り心地が違うのだ。感覚を研ぎ澄ませて触らないと分からない程度なので、普段気にする事は無い。だが、ニコだけは、触っただけですぐわかるくらいに触り心地が違うのだ。
「というか、何でお前だけがここにいるんだ? 他の皆は?」
ニコを目の前に持ってきてムニムニしながらそう尋ねると、体の一部を変化させ触手のような物で上を見るように促してきた。
「そう言う事か。ワイバーンの家族にくっ付いてきたんだな。そのまま飛び降りて俺の背中に着地したと」
触手を器用に使って、その通り、正解! みたいなジェスチャーをしてきた。
「俺の体を着地台にするな」
度々ニコの事を怒っているのだが、スライムだからなのかニコだからなのか分からないが、全くこっちの話を聞いてくれる感じがしないんだよな。それなのに、シルキーたちの指示にはきちんと従う。なんという忠誠心の無い従魔な事か……
「ワイバーン家族! お前たちはこの壁の上に止まれるだろ? 降りてきてここで待機してもらってもいいか?」
『『『『『キュオン』』』』』
5匹のワイバーンの家族は一鳴きして降りて来た。それにしても、子どもたちもデカくなったな。合わせて父ちゃんもデカくなってねえか?
20分もすると、地面を走って来たギンたちが到着した。シエルの部下の亀たちは、動きが遅いと分かっていたので、追加でウォーホースにも来てもらっており、馬車で移動をしている。
「シエル! お前は、念のための俺の防御役で付いて来てくれ。ダマはいつも通り先輩たちを指揮して頑張れ! 後、シリウス君とメグちゃんも俺の側に来てくれ」
防御のシエル、攻撃のシリウス君とメグちゃんがいるので、やろうと思えば今の距離でも帝国軍を壊走させる事もできるが、無意味に力を誇示したいわけでもないし、言いたい事があるなら聞くくらいはしてやろう。
余談だが、リバイアサンのメグちゃんなのだが、メグと呼ぶと不機嫌になる。どうやら、メグだけではなく『ちゃん』までが自分の名前だと思っているようで、しっかりと呼ばないと拗ねて、こちらの言う事を何も聞かなくなってしまう。
今俺が立っている壁と帝国軍が戦争をしているのであれば、すでに戦闘距離と呼べる程に近付いている。
指揮官か、それなりの地位にありそうな人物が前に出て来た。身につけていた武器は足元に置いて、跳ね橋があった所まで歩いてきた。さすがにこの距離まで1人で俺たちの前まで来るのは、最高指揮官ではないな。ネゴシエーションを任された人物かな?
マップ先生で覗いてみると……ビンゴ、それなりの地位にあるようだが一番偉い奴や、その取り巻きは一番後方で待機している。前線指揮官か元々ネゴシエーションを任せるための人材か?
「中立地域の兵士よ、聞いてほしい! この中立地域を狙った小国3ヶ国が、迫り蹂躙しようとこの地域に向かってきている。私たちは、中立地域を守るために派遣された帝国軍である。どうか跳ね橋を下ろして、迎え入れていただきたい。
この地域を守るために私たちは全力を尽くす。だから私たちの願いを聞き入れて頂けないだろうか?」
軍人として鍛えられたのか、しっかりとした声が俺の耳に届く。
「1つ聞きたい。守るために来たというが、大分前から小国の軍が動いていたのに、後方で待機していた貴国の軍は、何故この地域を迂回して迎撃しようとしなかった?」
「待機していたわけでは無い。小国3ヶ国分の軍を合わせると30000人にも上ると報告を受けていた。中途半端な戦力では、こちらに被害が多く出てしまう。だから集まるのを待っていた。あなたたちには申し訳ないが、これだけの壁があるので籠城戦になっても被害は少なく、時間を稼げると考えていた」
まさか予感が的中するとはな。俺がメギドに来る前から帝国軍は今の数が集まっていた。こいつが嘘をついている。
「ならば、先んじて誰かを遣わしこちらと連絡をとり合えたはずだ。なのにそれをしなかったのは何故だ?」
「予想していたより早く小国の軍が動いてしまった。当初は壁を迂回をしていく予定だったのだが、現状でそれをすると、余計に時間がかかってしまう。だから壁の中を通らせていただきたい。そして、連れて来た50000の兵士を使い小国の軍を追い返してみせましょう!」
さて、どうしたものやら。
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