1312話 予想外
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せっかく相手を3つに別けてみたものの、元々別のパーティーだったからか、動揺する事も無く淡々と対応している。
今まで戦って来た勇者より自力は上だろう。特に人数の少ない女勇者パーティーがヤバい。正直言って、ライムの上位版みたいになっている。
神に与えられたスキルだと思うあの光の所為で、ステータスが爆上がりしているため威力がヤバい事になっているのだ。
その女勇者の魔法で前衛に出ていた人造ゴーレムの体に一撃でヒビが入りやがった。俺たちがどんなに魔力を込めても、一撃でヒビなんて入れられないあの装甲にヒビが入ったのだ。
「シュウ、これって魔法の力だけじゃなくない? 魔力が高いだけでは、人造ゴーレムに一撃でヒビは入らないと思うわ」
「そっか、魔力の威力以外にも原因があるとみるべきか? 魔法の規模からして圧縮しているわけでもないだろうし、マルチキャストで複数の魔法を撃ち出した様子も無かったよな? となると、魔法の使い方じゃなくて、他に原因があるとみるべきか?」
男勇者の方は、攻め切れていないというか、全員が距離をとって戦っている。勇者を中心に、囲いを突破しようとしている感じだな。
女勇者が使っているのは、基本的に火なんだよね。あれが何でアダマンタイトを使っている装甲にヒビが入れられるんだ? 防御力無視みたいな効果なのか? っても、あいつらは防御力とか関係ないはずなんだが・・・
「ご主人様! 勇者のパーティー3つが囲いを抜けました」
「おぃおぃ、早いな。もう少し時間がかかると思ったんだが、ステータスの高さは伊達じゃないって事か? バザール! スケルトンにはしっかりと隊列を組ませろ! 綾乃はゴーレムにスケルトンの補助と壁になるように指示」
「了解でござる!」
「私の傑作が壁になるの? 壊れたら直すの手伝ってよ!」
「分かった分かった。差別するわけじゃないけど、スケルトンは一応個人の意思があるからな。ゴーレムが先に壊れるべきだと思ってる」
綾乃からぶーぶー言われるが、戦う前から決まっていた事なので、特にそれ以上ぐずる事も無く壁をできるような配置に移動させてくれた。
「ご主人様、見間違いでなければ勇者の武器が前の戦闘と違う気がするのですが……」
スプリガンの1人から武器が変わっているのでは? と指摘がある。
「そうなのか? あ~クソ! ダンジョンの中じゃないから、過去にさかのぼって映像が出せない。個別に調べるしかないか?」
「シュウ、女の方は分からないけど、男の方の武器はおかしくない?」
綾乃にそう言われて男勇者2人の武器を見てみる。何かがおかしい? でも違和感があるのは確かだ。この違和感は何だ? 2つの武器を見比べている内に分かった。
「武器が全く同じ?」
「イエス、ザッツライト! 普通、同じパーティーでも全く同じ武器って珍しいよね? 初心者用の数打ちの武器や鋳造品でもない限りさ。特に勇者ともなれば、それなりの武器を使っていると思うんだ」
「そう言われればそうだな。妻たちも同じ系統の武器でも剣の厚みや長さが違ったりするもんな。となると、ドロップ品の武器か与えられた武器ってことか?」
「恐らく後者だと思うわ。多分だけど、神器じゃないかな? それで、女勇者の持っているあの杖も神器って事は、神器の特殊能力で人造ゴーレムにひびが入った可能性があると思うんだ」
「なるほどな。武器が神器ならまともに受けるのは愚策か? なら……バザール、スケルトンに勇者の攻撃はまともに受けないように指示! 回避を中心に難しいようなら最悪受け流しをするように! グレイプニル持ちは隙を見て拘束をするように!」
バザールの肩を叩いて再度指示を出す。
ったく、ステータスアップの次は神器か? それだけで終わりか? 他にも隠し玉があるのか? 盤面を力尽くでひっくり返すような何かがあってもおかしくないと思うんだよな。たった11人でステータスが多少高い神器持ちで、攻略できるほど俺のダンジョンは甘くない。
勇者は隙を見せずに10分程戦闘を続けている。こちらの損害は、人型人造ゴーレムが3体小破、2体中破、4体大破。予想以上に壊されている。
大破の4体は、女勇者の魔法によるものだ。スケルトンに持たせているアダマンコーティングした盾も、普通に壊してくるのだ。マジであいつの魔法何かがおかしい!
悔しがっていても仕方がない。バザールの肩を叩き、
「大きな魔法を使って目くらましをさせてから、潜ませているスケルトンにグレイプニルを使わせられるか?」
「隙をついて、やってみるでござる」
ってか、今まで戦って来たどいつらよりも、連携が上手い。マジで何なんだこいつら? レベルこそ俺から見ればそこまで高くないが、レベルが高いと結構力押しのイメージが強いんだよな。
それなのに、死角を完璧にカバーしている感じがする。この勇者の指揮のおかげか? それとも何かしらの要因があるのか?
今だってそうだ。スケルトンがバザールの指揮の下で連携して、男勇者の死角から攻撃しているのに、分かっていたかのように普通に受け止めるのだ。
「綾乃、この勇者って超感覚とかそっち系のスキルでもあるんかな?」
「どういう事?」
聞き返されたので、死角からの攻撃に対処している事や、連携の上手さ等を説明する。
「なるほどね、死角からの攻撃を受け止めるか。超感覚の可能性もあるけど、念話とか意識同調や視覚共有とかの可能性もあるんじゃない?」
「念話、意識同調、視覚共有……念話と意識同調はなんとなく分かるが、後1つはどうして思いついた?」
「そんなの簡単よ。忍べていない忍者漫画を最近読んだからね。あの中に6人が視界共有していた敵がいたでしょ? その可能性がないかって思ったのよ」
少し考えて、確かにそんな奴がいたなと思い出した。主人公の師匠を殺した奴らだな。念話も聖獣が使っているし、意識同調も俺も従魔となら少しは出来るしな。
「念話で死角からの攻撃を防ぐのは、さすがに厳しい。意識同調はそこまで正確に相手の考えている事を理解できるわけじゃない。となると、視覚共有か? だけど、人間の脳みそに4人分の視覚を処理するだけの能力はあるのか?」
「そう言われると、難しいわね。となると、超感覚の可能性が高いのかしら? 地球の達人なら気配が分かるとか言う、眉唾な話もあるからね。実際どうなのかしら?」
嘘か真か分からないけど、達人になると殺気や気配が分かって、死角からの攻撃も避けられるとかなんとか。
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