1308話 日常
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ユグドラシルの枝で作った細い棒の不思議な能力を発見してから1週間。
遊びで作ったユグドラシルの枝の木刀等で、抜刀術を試してみたが細い棒のように謎の現象を起こす事は無かった。どうやらあの現象は、細い棒でしか起こらないようだ。
ウルや俺だけでなく、他のメンバーで試してみても不思議な現象が起きたので、細さに何かしらの原因があるのだろうが、それ以外の事は全く分からなかった。
「これは色々調べるだけ無駄だな。これだけ色々試しても、居合抜きのような構えからの振り抜き以外では、あの不思議な現象が起きない。鞭の様に使えたら面白いなって考えたけど、さすがに無理っぽい。どれだけ細くしてもしなやかな折れない棒にしかならなかったし」
「あれより太いとあの現象は起きないでござるが、細い場合は起きるでござる。本当に意味不明でござる」
「そんな事より、ユグドラシルを使った武器を作ろうよ。剣とか刀みたいに鋭くすれば、絶対に面白い事になると思うからさ!」
綾乃は不思議な現象より、ユグドラシルの枝で作る武器に興味津々であった。実験中にも「そんなことよりさ~」と言っており、ブー垂れていたな。
「実験も終わったし、今ある半分くらいなら武器に使ってもいいぞ。ただし、作った物は絶対に見せろよ! 隠したりしたら、特別監獄の真っ暗な無音の部屋に突っ込むからな!」
「分かってるって、悪さやサプライズ以外ではそんな事してないでしょ! 許可が出たなら早速加工するぞ! ほらバザール、しけた顔しないで行くわよ!」
「手伝うついでに監視をしておくでござる。暴走しないように見張っておくので、何かあったら呼ぶでござる」
こいつは度々暴走して、いらん事をするから強めに言っておかないとね。バザールも連れていかれたけど、あいつは寝ないでも問題ないから監視役としては最強である。ただ念のために、暇しているスライムにお願いして監視体制を強めておく。
っていうか、もうそろそろ夕飯の時間なのに今から実験するのか? やりたい事があると一直線だな。
俺は、夕食に遅れてシルキーに怒られないように早めに食堂へ向かい、食事の時間を待つ事にした。
食堂でいつもの席に着くと、忙しく準備しているブラウニーが俺にお茶を持って来てくれた。紅茶ではなく、緑茶だった。
何かすげえ久しぶりに飲んだ気がするな。緑茶ってこの世界でほとんど飲んでなかったんだけどな。ピクニックの時におにぎりと緑茶位でしか飲んだ覚えがねえ。
ん? 緑茶ってこんなに香りが良かったっけ?
俺の記憶にある緑茶と、今飲んでいる緑茶の味は大体一緒だと思うのだが、香りのたち方が違う気がした。
首をひねりながら飲んでいたら、
「お気付きになりましたか? その緑茶は、ゴーストタウンで作られた物です。茶葉を作るのに最適な気候とは言い難いですが、畑エリアで働いている人の頑張りのおかげでご主人様が飲まれても問題ないレベルに達しましたので、提供させていただきました」
ダンジョン農園で作っている茶葉は、気候をお茶の名産地である静岡県、高級抹茶の生産の多い京都の宇治、後は紅茶で有名なインドのアッサム地方やスリランカ、セイロン島の気候に合わせた地域の味が楽しめるようになっている。
DPで取り寄せればよくね? とか前に言ってみたら、シルキーたちに説教をくらったのでそれ以来口をはさんでいない。4人がかりで怒られるとマジで怖いから止めてほしいんだよね。
とりあえず、記憶にある香りと違うのは、この街で採れた茶葉から作っているから香りが違うんだな。ステータスが上がって臭いに敏感にでもなったのかな? ソムリエみたいに色々を嗅ぎ分けたり、味の違いが分かるような人間じゃないからな。
緑茶をすすりながら食事を待っていると、廊下からにぎやかな声が響いてきた。
どうやら娘たちが到着したようだ。ウルを先頭に、ミーシャ、スミレ、ブルムと続いている。娘たちとは時々一緒に食べていたのだが、ウルが来てからしばらくしてから毎食一緒に食べる事になった。
俺を見つけると「とーたん!」と言いながら走り寄ってくる娘たちが可愛い……頬が緩んでいると、その顔気持ち悪いからもう少し引き締めた方がいいわよ、とカエデに突っ込まれてしまった。
可愛いんだから仕方がないじゃん!
俺に走り寄って来たが、ウルと娘たちには食事前に仕事がある。自分のペットであるケットシーや猫たちへの餌やりだ。
命の大切さを教えるためにも、教育上の観点からウルと娘たちには餌やりを仕事にしている。
1度忘れる事があったので「自分たちも食事を食べられなかったらお腹がすくでしょ? この子たちだってお腹がすくんだよ。みんなの仕事なんだから、しっかりしないとね」等と言って、自分たちが食事を食べれなかった時の事を考えさせている。
特にウルは、ファイブ大陸で酷い扱いを受けていたので、食事を食べれない辛さ等は良く理解している。1度注意されてからは、娘たちがごはん! と騒いでいても引っ張って、しっかりと餌やりをしている。
餌やりと言っても、ブラウニーに量を聞きながら調整してするだけなんだけどね。基本的な食事は取り寄せたキャットフードだが、たまに娘たちに勉強をしてもらうという意味で猫たちの食事を、ブラウニー指導の下作る事がある。
毎回やらないのは、俺たちの食事とは別に作る必要があり手間がかかるという事もあるが、一番の理由は、すべて手作りでは栄養管理が難しいためである。
ケットシーと猫たちに餌をあげると、また俺の下へ走って来た。
最近の食事の並びは、俺の両隣と正面をミーシャ、スミレ、ブルムの3人で代わる代わる座っている。ただ、席順については俺もよく分かっていないのでブラウニーに任せっきりである。
食事は俺と同じ物を食べるが、3人には別に調理した物が出されている。主に、食事の硬さなどに注意した感じだね。
ウルは、俺たちと同じ物をモリモリ食べている。保護した時は、あばらが浮き出しているくらい痩せていたが、今はちょっとふっくらしてきている。とはいえ、まだまだ細いのでしっかり運動もしながら沢山食べて元気に育ってほしいところだ。
食事の後は、みんなで洗面所へ向かい、みんなで歯磨きをする。娘たちは母親に手伝ってもらい、俺はウルの歯磨きを手伝っている。初めの頃は、大変だったが今では何の問題も無くなっている。自分でもしっかり磨けているし、問題はなさそうかな?
少し休んだらお風呂へ。
猫たちは気が向いたら付いてくるのだが、ケットシーは毎日一緒に入っている。うちの猫はみんなお風呂が好きだから、よく一緒に入るのだが洗いすぎると皮膚によくないので、お風呂場で遊ばせておくと言うのが正しいかもしれない。
ケットシーはそもそも動物ではないので、毎日入っても問題ない。他の猫たちは? と何度も聞かれたが、その都度、入りたい時に来るから気にしなくていいんだよ。と話している。後は、砂浴びとかをしてきた時には、ブラッシングをしてあげるように話している。
いつものように4人の頭を洗ってあげてから……今日はお前たちもか……
従魔が列を作って待っていた。俺は苦笑をしながら妻たちと手分けをして洗ってやった。
そしてスライムたちよ! お前らは、洗う所なんてないから! 最近は、新しくスライムのために洗濯風呂を作った位だ。スイッチを押すと、ジェットバスを利用してお風呂に渦を作り、その中に放り込んでいる。本人が喜んでいるようなので、毎回洗わなくてよくなったのは助かる。
今日も1日お疲れさまでした。ゲームしてから寝よう!
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