1239話 模擬戦
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弾丸のように突っ込んできたレイリーを、並行詠唱で構築していたアースウォールを目の前に作り出す。
込めた魔力は、普段使っている10倍ほど、街の城壁より頑丈だ。街の壁は厚みもあるので、一概には言えないが、同じ厚さであればはっきりと分かるレベルの差がある硬さだ。
慌てて構築した魔法とは言え、10倍もの魔力をつぎ込んだアースウォールは、1回目の衝突で亀裂が入った。
マジか! 回復までもう少し時間がかかるのに、さすがに次の攻撃で壊れるよな?
俺は、そこからさらに速度重視の魔法を構築する。
それと同時にアースウォールが砕け散る。その破片と一緒にレイリーが俺に向かって突っ込んでくる。
そこにターゲットを合わせ、初級魔法と言ってもいいアースバレットを撃ち込むが、その数は初級とは言えない。100近い石礫がレイリーのをめがけて突き進む。
俺との距離は5メートルも無いが、強引に突っ込んでくるには無視できないダメージを負うだろう。
突っ込んでくるのを止め、盾と剣で石礫を全部弾き落した。
「相変わらず訳の分からない異常さだな。そこまで早くないといっても、100近い石をこの距離で全部撃ち落とすとかおかしいだろ!」
「そういうシュウ様こそ、あの一瞬で構築した割には魔法の規模が大きくなかったのでは? 初級の魔法とは言え、あれほどまとめて撃てなかったと思っていましたが。魔法とは厄介な物ですね。せっかく折った肩の骨も既に完治ですか……仕切り直しといきましょうか!」
最後の一言を言い終えると、距離を詰めてきた。
俺は大薙刀の中心部分を持ち回転させる。薙刀なのに、棍に近い動かし方をしてレイリーの接近を阻む。重量がそれなりにある武器なので遠心力も加わり、盾で受けるにしてもかなりの衝撃が体を襲う事になる。
距離を詰めるのを止めたが、レイリーは剣を空中に手放し腰の後ろに手を回しこちらに向かって振り抜いてきた。
何をしてきたのか理解できていないが、体が勝手に反応して体半分程移動して、投げられたナイフを見事に回避した。3メートル程の距離にいるレイリーも驚いているが、一番驚いているのは回避した自分である。
2人共驚いてはいるが、それくらいで止まるのは致命的だと分かっているので、驚きながらも次の行動に出ている。
レイリーは空中に離した剣をそのままキャッチし、俺との距離を詰めてきた。俺は中央付近を持っていた大薙刀の石突付近を右手で掴み、その場で回転して周囲を薙ぎ払うように攻撃する。
レイリーは、ジャンプで回避するには高過ぎ、しゃがんで回避するには低過ぎる位置の薙ぎ払いの軌道を逸らすように弾いた。
そうされると俺の大薙刀は俺の意思通りに動く事は無くなる。普通ならこれが隙になるのだが、ここは地球ではない。魔導具と呼ばれる特殊なアイテムがある世界だ。
伸びきっている右腕から大薙刀が消え、回転した際に引き絞るように構えていた左手に大薙刀が現れる。
手品の類ではなく説明すれば簡単な物だ。右手に持っていた大薙刀をいったん収納して、左手に取り出しただけなのだ。
引き絞った左手をレイリーに向かって突き出す。大薙刀を持っているので、突き刺す形だ。距離を詰めようとしていたレイリーは、また足止め……ずに盾で大薙刀の軌道を逸らす。
そのまま距離を詰めて来たレイリーは、お返しとばかりに剣を突き出してくる。
さすがに2度も大薙刀を逸らされたため、俺の体勢はかなり崩れている。そこに遠慮無しに剣を突きこんでくるレイリー、容赦ないな。
体勢は崩れていても、右手は自由になっている。左手には魔法を補助するための機能を持った大薙刀。右手に魔力を集中させる。このまま攻撃をしても、相打ちがせいぜい。きちんとした魔法を構築できているわけでは無いので、威力はお察し。となれば物理的に頑丈な武器を持っているレイリーの方が有利だ。
そんな状況で、レイリーを攻撃する魔法を使う意味は無い。選択したのは、魔力をそのまま爆発させるマナエクスプロージョンと呼ばれる魔法と言うより、魔力操作で使う事の出来る技術と言うべきだろう。
素人や魔力の少ない人間が使えば、ポンッと音が鳴るだけだが、スキルで強化された俺が有り余る魔力を使ってマナエクスプロージョンを使えば、
ドゴーーンッ
訓練場が揺れ、周囲で観戦していた兵士がたたらを踏む位の爆風が巻き起こる。
爆発の中心地にいた俺とレイリーは、多少のダメージを負っているが俺は煙が晴れる前に回復魔法で治している。
「無茶をしますね。自爆戦術ですか? 体を改造されてから本当に予想外の攻撃をしてきます。タフになった所為か、こういった攻撃を躊躇しなくなりました。ですが、自分の特性を理解した良い手ではあります。私にはできない戦術です」
俺たちの距離は、10メートル以上離れている。この距離でレイリーには攻撃方法はほとんどない。それに対して俺は、魔法を使えるため有利な距離だ。
武器は構えているが、魔力を練り頭の中ではドンドン魔法を構築していく。
まずは、アースバレットを100近く撃ち出す。レイリーが防ぐ事に必死になっている間に、さらに強い魔法、ファイアストームで焼き払う。
レイリーは火に包まれるが、これで動けなくなるような奴ではない。
俺は更に魔法を重ねる。ファイアストームの火をブラインドに使い、ライトニングアローを複数撃ち込む。当たった感触はあったが、効果があったような感触ではない。
不発に終わった事を嘆く前に次の魔法をさらに構築する。ファイアストームとライトニングアロー、両方とも物質的な攻撃ではない。
おそらくこの辺がレイリーに効果を与えていない理由だと判断して、次の魔法はミーティア……流星を撃ち込む。大げさに言ったが、発動速度を重視した魔法なので、拳大の岩を複数レイリーに向けて空から落としているだけだ。
それなりの質量があり、魔法で撃ち出しているためただ落としているよりは、はるかに破壊力がある。
ミーティアが直撃してドカドカ音がしている。その中に質量体が金属に当たり砕けるような音が聞こえてくる。盾で防いでいるのは明白だったが、
ミーティアが止んだ後には、膝をついたレイリーがいた。
「グッ……距離をとられると、やはり相手になりませんね。それに今回の自爆戦術を組み込まれると、不利です。しっかりその辺の対策を考えないと、同じパターンで負けてしまいそうです」
レイリーは両手を上げ、降参の意思を伝えてきた。
「そういえば、シュウ様。魔法での模擬戦があまりできないからと困っていませんでしたか?」
「あ~そうだな。妻たちと魔法での模擬戦は、手加減がしにくくて怪我させるかもしれないから、本気を出してやれないんだよな。その点、レイリーは手加減しなくていいし、手加減もしてこないから模擬戦相手としては最高だな」
「手加減をしなくていいのは、魔法や高ランクの魔法薬があるからですよ。で、魔法での模擬戦ですが、やってみませんか? 魔法が得意な人材がいるので、どうですか?」
「!? そんな奴いたっけ? でも、模擬戦をできるならやりたいな。本気を出すといっても殺すとかではないんだけどな」
レイリーは、俺の返事を聞くと連れて来ると言って訓練場を出て行った。
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