1237話 想定外……
アクセスありがとうございます。
ミリーが落ち着いた。だけど怒りが限界を突破したせいで、精神に負荷がかかったのだろう。落ち着いたと同時に気絶するように眠りについた。
ミリーをお姫様抱っこをして家に連れ帰る事にした。ダマが背負おうか? と聞いてきたが、ダマが背負うとミリーの体勢が大変な事になるので俺が連れ帰る事にしたのだ。それに、俺の妻なんだから俺が責任をとらないとな。
家に帰るとミリーが眠ったまま俺にお姫様抱っこをされている姿を見て、他の妻たちもしてもらいたい! と騒ぎ出したので、時間ができた時にみんなの好みのシチュエーションでお姫様抱っこをする事を約束させられた。
なんだか疲れる流れだったけど、みんなが満足してくれるなら俺が骨を折ればいいか。
みんなが落ち着いた所で、ミリーがどういう状況でこうなったのかを説明した。
みんな予想通り怒り心頭の状態になってしまい、これまた落ち着かせるのに時間がかかってしまった。
説明が終わってもミリーがまだ起きないので、寝室に連れて行き寝かせようとした所で、俺は気付かなかったのだがミーシャがその様子を見ていた。
布団に寝かせてリビングに戻ろうとして、ミーシャ・ブルム・スミレの3人に捕まった。
3人の娘は活発に動くようになり、ずっと様子を見ている事が難しくなっている。それでもケットシーがいるので、絶対に危ない事はさせないという信頼からある程度の自由行動が許されたのだ。
この許可を出したのが、母親の3人ではなくシルキーだったのには少し頭痛を覚えたが、シルキーが問題ないというのであれば、母親の3人も他の妻たちも納得して、俺も納得せざるを得なくなった。
俺の意見が通らないとかそう言う事では無いのだ。娘が可愛いから危ない事はさせたくない……と言う反面、出来る限りいろんな経験をしてもらいたいという矛盾に挟まれている。この状態で意見を求められたため、そのまま言ったら見事に無視されたのだ。
捕まった理由は、ミリーが抱っこされているのを見て、自分たちもしてほしいという物だった。他の妻みたいに後でシチュエーションに合わせてとかではなく、今すぐに! と言う無言の圧力も加わり、俺は娘たち3人を抱っこしながらリビングへ戻る。
3人を同時に抱っこしないと怒るので、頑張って3人を一緒に抱っこするのだが、力があるとはいえ、3人同時は結構辛い。
体の小さいブルムとスミレが左右に分かれ、一番体の大きいミーシャが真ん中と言う形になる。そうすると、手を組んでその上に座らせる形になるので、左右から腕に抱き着いてくる2人に、首に抱き着いてくるミーシャ、嬉しいんだけど、大変なんだよ。
せめて、座っている時だけにしてくれないかな? って、この歳の子供に何を言ってもわかるわけないよな。悪い事は叱れば分かるか?
前に抱っこした時に、耳を思いっきり引っ張られた事があった。その時は、痛いからそう言う事はしてはいけないと、怒っている。どこまで言葉が通じたか分からないが、耳は引っ張らなくなったので、怒られるからしない……と言った感じだろうか?
色々な事に時間を使ってしまい、まだ昼食を食べていない事に気付いた。既におやつの時間が近付いている。ガッツリ食べるような気分でもないが、少しは食べておきたいな。
娘たちは、ガッツリ遊んだので30分程前にお昼寝タイムに入っている。シルキーたちが回収して、ここにはいないのでいなくなったとぐずられる事も無い。
食堂へ行き事情を説明すると、ブラウニーが呆れた顔をした。だけど、しっかりと俺の要望に応えてくれる食事を出してくれた。
ガッツリじゃないけど、ほどほどにお腹にたまる食べやすい物! 出てきたのは、サンドイッチだけどタマゴサンドやハムレタスサンド等、さっと食べられる物だった。
食べ終わってみると物足りないような気はするが、これ以上食べると夕食がね。理由を聞かれた時に、今回の話をそのままするとシルキーの雷が落ちるので、ここは我慢しないとな。
そのままお茶を楽しんでいると、ミリーの様子を看ていたサーシャが目が覚めたと食堂に教えに来てくれた。
ミリーの様子は落ち着いt……じゃないな。どうしてこうなったかを覚えていて、サーシャと一緒に看ていたレミーに気絶した後の話を聞いて照れている様だった。
街を一緒に歩いてイチャイチャする姿をディストピアでは良く見られているので、今更何が恥ずかしいのかと思えば、お姫様抱っこをされて道を歩いたという所にミリーの恥ずかしさのポイントがあったようだ。
途中で迎えの馬車に乗ったけど、一番人の多い庁舎を囲うようにあるロータリーでは、ばっちりその様子が見られている知って恥ずかしくなったと。今度ギルドに行く時に、露店のおばちゃんたちにからかわれるんだろうなってボヤいてたな。
ミリーは話の内容を覚えていたので、改めて説明する必要もなかった。起きたミリーの様子を見に全員が集まった所で、
「思ったんだけど、ハーフの子の母親って生きてるの? もしそうなら、あの獣人が集まっている街にいると思うけど、あの街から、子どもの話って上がってきてないのかな?」
ふと疑問に思った事をネルが口にした。
そういえば、かなりの数のハーフの子たちが酷い扱いを受けていたのだ。親は獣人だったから、助かっているはずだけど、そんな話を聞いた覚えはない。
嫌な予感がして、慌ててグリエルに連絡をとった。
グリエルもその結論に至っていたようで、既に調べており知りたかった答えを教えてくれた。
『ハーフの子たちの母親なのですが、すでに亡くなっているか、奴隷として生活していた時の苦しみで精神崩壊をしている状態で生きている様です。見た目の良い獣人の女性は、その……扱いが酷かったようです』
伝えられた瞬間にすぐ理解できなかったが、時間をかけて理解できた。できてしまったのだ。
見た目の良いって事は、おそらくそういう目的で買われて、何人も相手をさせられたり、アブノーマルな性癖を押し付けられ、その結果死んでしまったのだろう。
そう言った事があるとは思っていたが、実際に知らされると結構堪えるものだな。頭では分かっても、心が理解するのを拒絶するような感じだ。
俺は怒りで暴れたい衝動を抑えながら、教皇に連絡を入れた。
「金はいくらでも出す。獣人の女性を性的に暴力して、死に至らしめた、普通の生活をできなくさせた奴らを全員捕えろ。これはお願いじゃなく、命令だ。従わないのであれば、聖国を潰す」
自分でも信じられない位怖い声を出していた。
『急になんだね? それに、その条件の人間を捕らえるとなると、かなり無茶な数になるぞ!』
「2度は言わない、今の条件に当てはまる奴らを全員捕まえてこちらに引き渡せ」
『わ、分かった。冗談で言っているわけでない事は理解した。だが、その条件に当てはまる人間はかなり多い。だから、理由を説明してもらえないだろうか?』
この結論に至った話を初めから教皇に話す。
『正直、私にはよく分からない感情だろう。だが、君がものすごく怒っている事は理解した。少しだけ条件を緩和してもらえないだろうか?
君の条件に当てはまる人間をすべてとなると、運営できなくなる街がいくつか出てくるだろう。それに、騎士団の中にも1度や2度だけという人間もいるはずだ。そこまで捕えてしまうと、聖国が立ち行かなくなってしまうのだ』
「……分かった。首謀者、主犯格は全て引き渡せ」
『積極的にかかわってなかった者や、回数の少なかった者を除外していいという事でいいかな?』
「そうとってもらってかまわん。後、犯すように煽った者がいればそいつもだ」
『了解した。費用に関しては、別途連絡を入れる』
こうして、聖国との戦争の後始末の延長戦が始まった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




