1228話 領主が出てきた?
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先頭集団、スカルズのメンバーが配置されている部隊が城門にたどり着くと、昨日使者としてここに来た人物が慌てて走って来た。
『これはどういうことですか!? 昨日、交渉のテーブルに着くと言われたのに、それを無視して進軍してくるなんて許されない行為ですよ!』
高性能ドローンに取り付けられた収音マイクが音を拾い届けてくれた。
それにしても、このドローンやべえな。DPで魔改造しただけあって、無駄に高性能で自重以外にもかなりの重さを積載出来たので、カメラとセットで音を拾うマイクをつけたのだが、100メートルは離れているのに、簡単に音を拾ってくるのだが……
スカルズが無視して進もうとすると、レイリーから魔導無線で進軍停止の指示が出た。
しばらくして、使者の前にレイリーが到着する。指揮官が最前線に立つってどうなのよ? フル装備をしているから、不意を突く位置からの急所への狙撃でもない限り、ケガを負わせる事すらできないだろうけど、危ないぞ!
『レイリー殿! これはいったいどういう事ですか!? 昨日、交渉のテーブルに着くとおっしゃられていたのに、進軍させて街を襲おうとするなんて、何を考えられているのですか!?』
『おや? おかしな事を言いますね。確かに領主が来れば交渉のテーブルに着くとは言いましたが、私がいつ攻めないと言いましたか? それに昨日中に隣街の領主を引き渡していただけませんでしたので、昼間に宣言した通り攻め込みに来たのですよ』
『ふ、ふざけないでください! 交渉のテーブルに着くという事は、一時的に交戦を中断する事です! それなのに一方的に攻めてくるなんて!』
『ふざけるな……だと? それはこっちのセリフだ。お前ら聖国はシュウ様の管理している街に、略奪戦争を一方的に吹っ掛けてきただろうが! そもそも、隣街の領主を引き渡さなかったお前らが悪い!』
『なっ! 聖国は一方的に攻めましたが、ここは一般市民も住む町ですよ! そこを戦場にしてもいいとおっしゃるのですか!?』
『これは異なことをおっしゃる。私たちが戦争で負ければ、ミューズを蹂躙する予定だった聖国が、一般市民を巻き込むなだと? 使者殿、あなたはお笑いのセンスがありませんな。
どちらにせよ、昨日中に隣街の領主が引き渡されなかった以上、街の中が火の海になるのも致し方がない事かと……迅速に動かなかった領主を恨むべきですな』
いや待てレイリー! 俺たちは街の中で魔法は撃たないって言っただろ! しかも出陣する前に、住人の資産には被害を与えないようにって言ってただろうが!
『バカな! 昨日の夜に交渉のテーブルに着くと言われて、すぐに領主様が交渉に来れるわけが無いじゃないですか! レイリー殿は、私たちをバカにしているのですか!?』
『決断は早く。それが出来ないのは……理由があるのでしょうが、私たちがその理由に付き合う必要はありません。すぐに来られない? それは何故ですか? 領主がここに来ればいいだけの話です。そうすれば交渉は出来たでしょうね』
『こちらにだって都合があるのです! すぐに交渉のテーブルに着けるわけがありません! どう交渉するのか、どういった譲歩をするのか、こちらとして譲れないモノを話し合う必要があるのです!』
『だから知った事では無い! 私たちの要求は、ここに来る前から決まっている。隣街の領主と領主と一緒に来た者たち、そいつらが持ちこんだ物を引き渡せと言っているのです。あなたは、この内容について一切触れていません。隣街の領主はいないのですか?』
この使者は、今までに嘘らしい嘘は付いていないのだ。なので、交渉役としては処刑した前の使者よりは100倍はマシである。
黙ってしまった使者を見て、多分こいつは隣街の領主がいる事を知っているけど、それを口にする事は出来ないと理解しており、交渉において嘘を付く事の愚かさを知っているようだ。嘘は付かずに本当の事だけを話すのって、こういう状況だと厳しいよね。
レイリーはこれ以上話す事は無い、と最後に言い放ち、使者を押しのけて進軍を開始しようとする。
そこに近付いてくる1台の馬車、まぁ俺はマップ先生で調べているので誰が来たのかはすぐわかるんだけど、レイリーはそれがまだ誰かを知らない。
馬車が止まり、近衛兵だと思われる者たちが警戒を始め、馬車の中から人が出てきた。うげ、脂ぎってるな。どこぞのオーク領主を思い出すレベルの醜さだ……あれ? 領主じゃなくて子どもだったっけ? まぁどっちでもいいか。
使者がそのデブに近付き、何やら話しているようだ。
『まったく、これだから野蛮人共は困る。人の営みを理解できず、人が集まれば意見をまとめるのにも苦労するのだよ。領主と言えど、聖国ではただの信者でしかないのです』
『一方的に略奪戦争を仕掛けてきた野蛮な国に、野蛮人と言われるとはのう。聖国にはまともな思考の持ち主はいないのだろうか?』
ボヤくようにレイリーはそう言った。
言葉でけん制し合うように、ジャブの応酬が続き、変則的にその場に交渉のテーブルが準備された。
ちょうど城門の真下と言えばいいのだろうか? 元々扉のあった場所にテーブルが置かれ、街の中側にデブとその一行、外側にレイリーと副官にスカルズの半数が座った。
ちなみにライガは、放っておくと暴れ出しかねないので、残りのスカルズに引きずられて軍が待機している場所と、レイリーのいる場所のちょうど中間で土下座をさせられている。
『そちらの要求は、隣街の領主の引き渡しでしたかな? いると仮定して、同じ国の同じ立場の人間を差し出すわけが無いと思いますが、どうお考えで?』
『知らん。私たちの行動は、隣街の領主を捕らえる事である。邪魔をするのであれば、相応の報いを受ける事になると言っておきましょう』
『人の言葉をしゃべる野蛮人め。もし、隣街の領主がいなかった場合はどうなさるおつもりで?』
『人の言語を理解するオークも珍しいが、そのオークを領主にしている聖国も……すごいものだな。隣街の領主はここにいる。いる場所も分かっている。だが、もしいなかった場合は、それ相応の謝礼を出そう』
オークはって、違うな。この街の領主は……名前を言ってたけどもう忘れた。謝礼という言葉に反応して、少しニヤリとした。
『相応の謝礼ですか、それはいか程とお考えで?』
『そうですな。被害にあわれた方たちに、被害にあった額の倍は考えております。ですが、我々がこれを払う事は無いでしょう。隣街の領主はこの街にいるのですから、探せば必ず見つかります。
初めに言っておきますが、隣街の領主が持ってきた物品や謝礼欲しさに殺すのは無しです。今も監視をつけているので、すぐにわかりますからね』
オーク領主は、レイリーの言っている事を吟味している。
『後、隣街の領主がいた場合は、匿っていたと判断します。それは戦争に加担した事を意味します。どういう意味かお分かりですよね?』
オーク領主の顔がより一層醜くなった。せめて表情はポーカーフェイスを保とうぜ。それじゃあ、何か知っているって言っているような物だぞ?
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