1203話 一つずつ
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俺は結局寝ずに考えた。
いくつか案は浮かんだが、実行に移せるのは1つだけだった。他の案は、机上の空論……というよりは、現実味が無い作戦だったというべきだろう。
実行に移す作戦は、すでに準備が整っている。作戦というよりは、兵器と言うべきだな。連れて来た老ドワーフ共を叩き起こして、酒を飲ませてから仕事をお願いして、それで何とか兵器の数はある程度揃えた。
欲をかけば、もっと大量に作りたかったが、兵器に使う道具の器をあまり準備できなかったのだ。それに、繊細な調整が必要だったため50個ちょいしか準備できなかった。
今は一旦休んでもらっているが、目が覚めたらまた明日以降に備えて作ってもらう予定だ。今日分の材料はDPで出したが、すでに手配が済んでいるので昼頃には到着するはずだ。
目の前では、レイリーがその兵器の使い方を覚えている。
「シュウ様、この道具の使い方は、魔力を込めて投げるだけでいいのですか?」
使い方と言っても、難しい作業は必要ない。魔道具を扱える人間であればだれでも起動できる優れものだ。そして起動してから5秒後に効果を発揮する。タイミングを間違えないようにだけは注意してもらう。
本来、大量の兵士がぶつかり合う戦場で使われる道具ではないが、塹壕内での局初戦や撤退戦では、かなり効果が見込めるのだ。後者の理由で使われる事は避けたいが、撤退するさいの殿を務めるのが一番難しい軍事行動なので、少しでも手伝いになればいいと思っている。
俺は一度寝て、新しい作戦なり武器なりを考える事にして、自室のベッドにもぐりこむ。
寝ている間の事は、まぁ覚えていない。夢も見ずに寝たのだろう。寝ている間にいい案でもないかなって考えていたが、そんなに甘くないようだな。
今日は昨日と違い聖国は大攻勢を仕掛けてきてはいない。だが、散発的な戦闘は所々で繰り広げられている。
聖国は、数に物を言わせ交代しながら断続的に攻めてきているようだ。俺たちが竜騎士にやらせている嫌がらせをしてきている。
本気で攻めてきていないにしても、攻められれば守りを固めざるを得ない。それに5000人を出されれば、こちらも5000人を出さないといけない。それ以上なら警戒レベルも引き上げないといけない。
例えば、6000人で攻めてくるのであれば、聖国は軍を4つに分ける事ができる。その4つの軍がかわるがわる攻めてくれば、他の3つは休める。警戒と待機と休憩と言ったように役割を分ける事も可能だ。
それに対してこちらは、同じ人間がずっと戦場に張り付いていないといけなくなる。
この場合、どちらの方がより厳しい状況なのだろうか、竜騎士の爆弾壺のせいで寝れない聖国の軍か、休憩もまともにできず戦い続けているこちらの軍か。
最悪、意識のブレーカーが落ちるように眠れる聖国の軍の方がましだろう。今日はまだ初日なので兵士たちに問題は無いが、2日3日と同じ事を続けられれば疲労度は聖国の軍をすぐに上回ってしまう。
兵士の練度……レベルが高くても、士気が聖国の軍と同じレベルまで下がってしまえば、その差は無くなってしまうと言っても過言ではない。どうにかして休ませる手段を講じなければ、1週間もしないうちに数の暴力に飲み込まれてしまう。
今のところ例の兵器は使っていないようだが、戦況は思わしくない。俺が寝ている間、もう昼を過ぎておやつの時間だ。10時くらいから攻められたと報告があり、かれこれ5時間も戦っている事になる。
まとまった休憩を取れずに、ずっと戦闘をしているのだ。いくらレベルが高く体力が地球の人間よりはるかにあったとしても、重装備で5時間、これはかなり辛いだろう。
本当はあまり頼りたくない薬なのだが……しかたがない。そう思い、俺はゼニスに連絡を取る。
『どうなさいましたかシュウ様?』
魔導無線から聞こえてきたのは、もちろんゼニスの声だ。
「急にすまん。戦争の状況は聞いているか?」
そう問うと、マップ先生を監視するスプリガンの部屋に来ているそうで、軍の情報部から入ってくる報告と合わせて戦況を把握しているらしい。
ゼニスやグリエルであっても、俺から直接許可を得ない限り入れないダンジョン農園の一角にある監視室だが、実はスプリガンのみんなが休憩するための建物が俺の家の敷地内にある。そこから直通の通路があるため、例外的にスプリガンの許可をもらった人間は、監視室までは入ることができる。
ちなみに、ダンジョン農園に自由に出入りできるのは、俺・妻たち・俺とミリーの従魔・土木組・ディストピア農園・畜産地区の一部の者となっている。俺たちはともかく、農園と畜産地区の一部の者が入れるのは、ダンジョン農園で実験を行っているからだ。
ブラウニーだけにやらせても問題は無いのだが、一緒に試行錯誤することによってブラウニーでは、思いつかないアイディアが出て来るそうだ。だから、ブラウニーから自由に出入りできるようにしてほしいと言われたのだ。
なので、監視室にいる事には驚きはしないが、今このタイミングで監視室にいる事には驚いている。てっきり商会の本部あたりにいると思っていた。
「状況を把握しているなら話が早いな。例のポーションをこっちに届けてくれるか?」
『あれを使うのですか? 一応、死刑囚を使って実験をしていますが、精神にどれだけ影響があるか分からないから使わなかったポーションですが……』
「あのポーションは、疲労回復や睡眠を限りなく少なくする事ができる。でも、人間の生活サイクルに合わない事をさせるから……あまり使いたくはないんだけど、今回はそう言っていられない事情があるのは、分かってるよな?」
『そうですね。今のまま戦況が長引けば、近い内に敗走します』
「予想では無く、断言か」
『まず間違いなくあの戦場は負けます。ですが、戦争自体が負けで終わることはありません。ですが、それをしてしまうと、今回自分の力でといった、私たちの覚悟を丸潰しにしてしまう事になりかねません。だから、例のポーションを今日中に届けます。もう準備はできていますので』
俺がお願いする前に、ゼニスは俺の考えを読んでいたかのように、すでに準備ができているとの事だ。さすが商人だというべきだろうか?
これで、直近の問題は何とかなった。時間が増えただけって感じだけどな。
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