1190話 もうすぐ……
アクセスありがとうございます。
聖国の軍がもう間もなくここへ到着する。明日の昼過ぎには、俺たちが作った壁が見える位置に来るだろう。
壁から5キロメートル先がちょっとした丘になっていて、その丘の頂上に来ないと壁が見えないだろう。まぁ、斥候が来ているので壁の存在はすでに知っているだろうけどな。
明日の昼に到着する聖国の軍は、丘の上か丘の向こう側に拠点でも作ると思われる。早ければ、明後日には戦争が始まるだろう。
援軍が来るまで動かない可能性もあるが、こちらの戦力を把握するためにも小規模な戦いは起きると踏んでいる。
特に問題になるのが、ダブルの冒険者が率いているクランの存在だろう。あいつは、軍と違って基本的に魔物を相手にする冒険者だ。どんな事をしてくるかわからない……少数精鋭でヒットアンドアウェイをされたら面倒である。
その対策のために、俺たちは壁の上から戦場になる場所をながめている。
攻めにくいように塹壕や土嚢を積み上げたりしているが、これに関してはこっちの軍にも多少なりと影響が出る。ただ、物量で押し込みにくいという状況は、軍の数が少ないこちらとしては有利になってくれるのではないだろうか?
問題の冒険者たちにも有利に働く可能性があるので、そこら辺はレイリーの采配に期待しよう。
レイリーの部下にもマップ先生を使えるタブレットを渡しているので、監視状況は問題ないだろう。いかに適切な戦力を割り振る事ができるかと言った所か。
「なぁ、レイリー。今回の戦争ってルールは無いんだよな?」
「そうですな。今回は、ウォーゲームとシュウ様が呼んでいる戦争ではなく、侵略・略奪戦争になりますので、ルールはあってないような物ですな」
「ん? 一応あるのか?」
「王国・聖国・帝国の三大国がやり過ぎないように定めたルールがありますが、基本的に小国同士の争いを抑制するためですね。ルールを破れば自分たちが国を切り取る……と言った感じですかね。その大国の1つが攻めて来てるのです。相手取れる国がなければ、大国の行動は制限される事もありませんからね」
それに聖国では、中立地域は国ではないとの事でルールは適用されないと言っているそうです……と付け加えられた。
まぁルールがあっても聖国が守るとも思えないしな。嫌な思い出ではあるが、聖国と小国の戦いに介入した際の事を思い出す。聖国の振る舞いも、手助けした国の振る舞いもどっちも気に入らなかった……あの忌々しい戦争だ。
それを考えたらイライラしてきた。そこで俺は、レイリーに提案をしてみる。
「夜襲ですか? 確かに効果的だと思いますが、夜襲を仕掛けるメンバーはかなり危険です。リスクにあうリターンがあるのでしょうか?」
「夜襲でも、相手に人的被害を出すのが目的ではないんだよ。確かヴローツマインでは最近、爆薬による鉱石の発掘をしていると聞いている。その爆薬を使って、嫌がらせをすると考えたらいい。1時間おき位に安全な位置から投げ込めばいい。そうすればそれだけで睡眠がとれずに半数の兵士が質の良い睡眠がとれなくなるさ」
それを聞いたレイリーは、何やら考え始めたようだ。
レイリーは思考の海に沈んでいるみたいなので、俺は戦場になる場所に目を戻す。
一番目立つのは、いくつも作られた橋だろう。これも間に合わせで作っているため、大した物ではない。橋としての機能があるので問題はないのだが、落とす事を視野に入れているので簡素な造りとなっている。
戦争が終われば、今俺たちの立っている壁の下にある門しか使われなくなるだろう。複数の門があると管理が大変だからな。終わったらしっかりと塞いでおく話になっている。なのに何故複数の門があるかと言えば、撤退する時のためだ。
逃げ道の無い場所で戦い続けろ! 何て事をするわけはないので、逃げやすいようにしている。
そういえば、俺たちが掘った溝には水が流れている。近くに川も無く水を流せる状況では無かったので諦めていたが、俺の様子を見に来てくれた母親に連れられた娘たちが連れて来た、リヴァイアサンが水の通り道を作ってくれたのだ。
川に繋がっていないのに水が流れる原理がよくわからんが、水を司るモノとして何とかしてくれたのだ。ただ、作ってくれた理由が、ミーシャの「みじゅは?」の一言だったのには、苦笑せざるを得なかった。
上から見ていると分かるが、自分たちが戦いやすいように工夫されてるよな。本来はこういう造りだと槍は使い辛いのだが、訓練風景を見ているとその感想も出てこない。大盾持ちを前面に後ろから大斧持ちが盾の隙間に振り下ろす連携をとっていた。
大斧……突き刺す事もできる形状なので、ポールアックスという方が正しいだろうか? 振り下ろしで相手の盾を倒し、盾を持っていない相手にはファランクスの様な戦術で使える形のようだ。攻め込むだけではなく、撤退をしながらの事も考えているようだ。
所々に崩しやすくなっている場所があり、要石を爆破させれば道が崩れる造りになっているとの事だ。
訓練風景を眺めていると、レイリーが思考の海からあがってきたようだ。そして、
「確認したい事がありますので、一緒にヴローツマインから来た兵士の所へ来てくださいませんか?」
俺が話した、爆弾の事について聞きに行くようだ。
壁を降りて、軍が駐屯している場所まで移動する。中立地域から合計で10000人近い兵士が集まり、後方支援として5000人規模の補給隊が形成されている。
前線の兵士たちに美味い食事を食べさせるために、有志の肝っ玉母ちゃんが料理を作り続けてくれているのだ。ブラウニーが監修して、大量に美味しい料理を作るためのコツも教えているようで、連日大盛況だ。
食材については、ディストピアで大量に生産を続けているので、不足の心配はない。それにミューズまでは魔導列車で運んでこれるし、俺たちの収納の箱付き馬車も使っているので輸送の面でも問題はない。
特にジョッキに1杯だけだが、お酒を用意しているので兵士の士気はうなぎ上りだ。
竜騎士たちがいる場所に到着した。ヴローツマインからは、少数精鋭の竜騎士が100騎程来ている。
竜騎士の隊長から、最近使われている爆弾の事について話を聞き始めた。殺傷能力は魔法程高くはないが、限定した空間で使われている事、爆発する際に大きな音を建てる事等を聞いている。レイリーはDPで出した爆弾を知っているので、それとの差異について確認しているようだ。
話を聞き終わった後に、竜騎士の騎竜であるワイバーンは夜に跳ぶ事ができるのか確認していた。
「そうですね、ただ飛ぶだけでしたら問題はないです。着地する場所に明かりがあれば、降りる際の問題もないかと思います」
ワイバーンは、夜目が効かないようだ。山に住んでいるワイバーン一家は、夜にも普通に飛んでいるのだが、育ちによって違ったりするのだろうか?
飛行高度は人間の攻撃で届かない位置まで余裕で上がれるので、そこから爆弾を落とす事になった。ただ、爆発するタイミングの調整が必要になるようで、ヴローツマインから爆破技師が急遽駆けつける事になった。
爆弾が、地球みたいにボタンを押すだけで爆発するのではなく、導火線に火をつけてタイミングを計るのだとか。これなら、昼夜問わず爆弾を落とし続けられるな。爆弾の生産が間に合わないなら、DPで取り寄せるか? 多分、現物を見れば似たような物を召喚できるはずだしな。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




