1174話 無駄な努力
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翌日ワイバーン一家は、ディストピアの中央にあるロータリーにいた。ここは大きく空間をとっているため、ディストピアの中で唯一ワイバーン一家が着地できる場所なのだ。
羽だけで飛んでいるわけではないが、巨大な質量がすごい速さで移動するため、広場付近の建物は俺がお金を出して改装している。
そんな事をしなくてもワイバーンを街の外に待機させればいいのでは? と思うのだが、そうするとワイバーン一家が拗ねてしまうので、仕方がなく今の形に落ち着いている。なので今日は、朝市が中止になっている。ワイバーン一家が飛び立てばすぐに開始はされるのでけどね。
そもそもワイバーン一家を見送りに来ているのは、竜騎士に念のための食糧を持たせる為だ。普段は生肉でもかまわず食べるのに、俺の依頼で何かをする際には美味しい物を食べれると理解しているため、生肉を食わなくなるのだ。
なので、最近のワイバーン一家の竜騎士選考基準が、料理の得意な人というのが一番にあげられている。俺のペットのワイバーンに乗れるという事は、竜騎士として栄誉であるみたいで、全員が必死に料理の勉強をしているらしい。
ショタドワーフならまだ見た目的に問題ないけど、樽体系の髭もじゃドワーフが料理の勉強をしている光景とか、シュールすぎないか? 想像しただけで……ブハッ!
今広場にいるのは、ワイバーン一家が竜騎士の料理の腕を確認しているのだ。そこで一人ひとりの作った料理を試食して、パートナーを選んでいる。
騎乗する竜騎士が5人が決まったので、収納の鞄を渡していく。この中には、業務用のオーブンですら小さく見える魔導オーブンや、その他調理機器と食材が入っている。
食材は提供してもらえることになったが、調理に関しては調理担当の人間がどうしても確保できないので、自前でお願いしたいという事になったのだ。
さて、ワイバーン一家は任務に行ったので、俺は何をするかな? マップ先生で国境の真紅の騎士団は問題ない事が分かっているので、これ以上介入する必要はなさそうだしな。
まぁ家に帰って、娘たちの相手でもしようかな?
意気揚々に家に帰って娘たちの部屋に向かうと……ちゅうで、家に来ていた綾乃につかまった。娘の所に行くと言っても聞いてもらえず、ずるずると引きずられていく。
女性が強引に話を進める時には逆らってはいけないと、理解したので今回は抵抗らしい抵抗はしていないんだけどね。
綾乃はどうやら、ゴーストタウンでの新商品開発がまだストップしているので、今は人造ゴーレムの人型ではないバージョンを作っているらしい。
で、その新作が目の前にいた。
「以前、シュウがクリエイトゴーレムだけで馬を作ったのは知ってたけど、人造ゴーレムみたいにマジックマッスルを使った馬ゴーレムは作ってなかったって聞いたから、作ってみたのよ!」
「うん、動きはすごい滑らかで、かなりすごいと思うんだけど……ウォーホースがいるから必要ないと思って、作ってなかっただけなんだよね」
それを聞いて綾乃は、あっ! っとした表情をした。こいつって、かなり技術力があるのによくチョンボするんだよな。
「金属の肉体の馬……隊列を組ませてチャージ! は夢のまた夢?」
「そもそも、戦争になったとして、この世界では魔法があるんだから、時代遅れな感じじゃないか? 特にディストピアでは魔法使える人多いからな」
他の国であれば、戦術的に騎士が隊列を組んで突っ込む事もあるだろうけど、人外のステータスの人間がいるし、レベルが高ければ普通の馬なんて簡単に両断してしまうからな。
でも、技術的なモノとしては良いんじゃないか? そもそもケンタウロスタイプの人造ゴーレムを作っているのに、何で劣化……とは言わないけど、人が乗るタイプの馬を作ったのやら?
「俺的にはさ、馬よりオオカミタイプの人造ゴーレムとかの方がいいと思うんだけど、作ってみたら?」
意気消沈していたので、活躍できそうなタイプを伝えてみると、納得したみたいで自分の工房に入っていった。この馬どうするつもりだ? とりあえず、定位置に戻る様に命令しておいた。
ん~娘たちの所へ行こうと思ったが、綾乃が新しい人造ゴーレム造りをしているみたいで、それを知って俺も何か作ってみたくなった。
まずは、何を作るかだよな。空飛ぶ人造ゴーレムを作ってみたいが、空を飛ぶだけなら飛行機の模型みたいなので問題なく出来てしまうのだ。それでは面白くない。だけど、動物や魔物タイプでは空を飛ばすには、どうしても重すぎるんだよな。
いくら軽量化すると言っても、マジックマッスルは金属だから重たいんだよね。
あ……筋肉を全部マジックマッスルにする必要はないか。必要な量だけマジックマッスルをつければいいし、全身が金属である必要もないんだったな。
いきなり大きいのだと大変なので、スズメサイズの人造ゴーレムを作ってみる事にした。
「まずしなきゃいけないのは、スズメの肉体構造を理解しないとな」
だからと言って、解剖するのは微妙な感じだったので、鳥類の肉体構造を調べられる本があったので、それを召喚して読み込む。
まずは骨格を作ってみた。とはいえ、骨の構造そのままに作るとバラバラになってしまうので、そこはクリエイトゴーレムでくっつけている。ここら辺は、人型人造ゴーレムの技術の流用である。
「それにしても鳥って、元々無駄な肉が少ないんだな。鶏とかは別として、渡り鳥みたいに長距離を飛ぶタイプは羽が大きいし……でも、生物として作るわけじゃないから、内臓は全部取っ払えるし、筋肉もマジックマッスルの方が圧倒的に強いから、問題ないレベルまで軽量できそうかな?」
とりあえず、骨は強化プラスチックで作成している。肉の部分については、マジックマッスルとシリコンゴムを配置している。
初めはマジックマッスルだけで筋肉を補って、残りは空洞にしてみようと思ったのだが、上手く整形できなかったのだ。なので、動きを阻害しないシリコンゴムとマジックマッスルを本物のように配置して、滑らかに動かせるように実験した。
それでもシリコンゴムの重量が気になったので、クリエイトゴーレムを使って体積の半分くらいを気泡に変えている。まぁそれだと劣化も速いし強度も弱いので、そこはクリエイトゴーレムの自動修復機能で強引に解決。
これによって本物と大して変わらない重量に抑える事ができた。
だけど、すぐに飛ぶ事は出来なかった。人造ゴーレムに空を飛ぶための知識が無かったため、飛べるようになるのには時間がかかった。俺が作ってから1ヶ月くらいしてようやく自由に飛べるようになったらしい。
作ったはいいけど、何に使うかは不明だ。
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