1165話 思ったよりいっぱいいた
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勇者を捕らえてしまったが、どうしたものか?
悩んでいると、聖職者風の男が騒ぎ出した。
そいつが言うには、私に手を出すと聖国が黙って無いぞ! 家族親族をすべて陵辱してから、産まれたことを後悔させてやる! と騒いでいる。
とても聖職者のセリフとは思えない。そしてこんな奴が勇者のパーティーに入っているんだ? そもそも、本当にこいつは聖国との繋がりがあるのか?
とりあえず、聖職者風の男のセリフを聞いて、そいつ以外がドン引きしているのはわかった。一人ひとりに話を聞いてみるか。
もちろん、俺ではなく妻たちに任せている。
5人から得られた情報はあまり多くないが、この勇者はサラディルと戦争をしている国、バスティアンから強行偵察に来ているらしい。
その途中で俺を発見して、周りの人間を助けてそのまま陣営に引き込もうとしていたらしい。何とも言い難いな。
確かにこいつらの強さであれば、俺たち以外なら逃げ切れただろうから、本当に偵察に来ていただけっぽい。
そして聖職者風の男は、解放しろ! だの、ただで済むと思うな! だの、俺の妻に向かって、身体を差し出せば許してやらんこともない! とかのたまったので、腹を蹴飛ばして放置した。
魔法は封じていないので、落ち着けば自分で回復するだろう。
「さて、どうしたものやら? 話を聞いたところで戦争をしているバスティアンだっけ? 向こうの様子は分からないな。誰か真紅の騎士団の団長呼んできてもらっていいかな?」
そう言うと、鬼人の1人が走って行った。
「ご主人様、戦争には介入しない予定なんですよね? でしたら、考える必要はないのでは?」
ビーチに言われてふと考えてみた。確かに俺らがどうこうする必要は全く無かったのだ。
襲ってきたから返り討ち、後はこの国に……真紅の騎士団に任せて、俺たちはミリーの家族を連れ出して終了だな。
よし! 方針は決定だ。
しばらく待っていると、団長が30人程の団員を連れて戻ってきた。
「敵国の偵察部隊を捕まえたと聞きましたが、こいつらですか?」
戻ってきた団長に、ここで起きた事を説明する。
「勇者でSランク冒険者ですか? ずいぶんと大物を偵察に出して来ましたね。本当にこいつらの身柄をもらっていいのですか?」
「問題ないよ。俺たちが持ってても意味ないしな」
「そこの団長さん! その男は魔物です。あなた方はだまされているのですよ!」
「何言ってるんですか? この人は、様々な魔物を従魔にしているのは知っていますし、ドッペルゲンガーも従魔にして、操っていることだって知っています。ですからだまされてなんていませんよ。それより自分の身の安全を心配した方がいいと思いますよ。敵国に偵察にきて捕まったのですからね」
確かに、現状では人の心配より、自分の心配をするべきだな。
出会った勇者の中では、綾乃の次にまともな奴だったかもな。正義感なのか判断しにくいけど、頭のイかれたタイプではなかったかな。
だとしても、戦争を仕掛けている側にいるのだから、何かしらの考えのもと行動をしているのだろう。
面倒事は押しつけたので、改めてミリーの家族を迎えに行こうか。
真紅の騎士団のおかげでスムーズに街にはいることが出来た。ミリーの家族が住んでいるのは、貧民階層と一般階層とでも言うべき場所の境目付近だそうだ。
ミリーの仕送りがあったとはいえ、兄弟も多いのでその位の場所にしか住めないとの事だ。両親に弟妹が10人、合計で12人の大家族みたいだからな。独立した兄弟も何人かいるらしい。
超子沢山だな!
ミリーの家族が住んでいる家に着いた。緊張している様子がみられたが、久しぶりの両親との再会をはたすことができた。
ミリーは、母親似だな。歳は……40前半くらいだろうか? このままミリーが年を取っていけば、そうなりそうだなって思える位似ている。まぁミリーは、すでに薬を飲み始めているから、これ以上老ける事は無いんだけどね。
それにしても12人が住んでいるには、狭い家だな。土地も余っていないみたいだし、お金の問題もあるだろうから、こんなもんなんだろうけどね。
俺はどちらかと言わなくても田舎に住んでいた。電車で30分も行けば都会っぽくなるんだけどね。それはいいとして、田舎の一軒家に住んでいた人間としては、都会の真ん中で3LDKで家族4人で生活しているのが、結構普通と聞いてビックリした物だ。
LDKはみんなの過ごす場所、3の内2つが子供部屋、1つが両親の寝室……客間はどこ? とか、5人家族なら1部屋を2人で使うとかね、狭くね?
田舎の一軒家で部屋を共有するならまだわかる。1部屋が普通に12畳とかあるからな。家族向けマンションで1部屋って普通8畳くらいだろ? それを2人でって狭まくね? それに、クローゼットや押入れが小さくて、荷物がしまいきれないとか知り合いが言ってたな。懐かしいのう。
俺が昔の事をボケーっと思い出していたら、いつの間にかミリーと家族の話はまとまっていた。
ミリーからの仕送りがあってもやっぱり厳しかったみたいで、すぐに引っ越す事を決断したそうだ。お金以上に、引っ越す先のディストピアでは、学校に通わせる事だってできるというのが大きかったみたいだ。勉強って大事だよね!
さすがに荷物をすぐにまとめれないので、2~3日待ってほしいとの事だった。
この世界で他の街へ引っ越すって結構な苦悩があると思うけど、結構あっさりと引っ越す事が決まったもんだな。
俺たちまでここにいると邪魔なので、俺たちは宿へ泊る事にした。とはいえ、ミリーを無防備にさせるわけもなく、鬼人にかげながらボディーガードを頼んでいる。5人1組で交代しながら見張ってくれるそうだ。一応グレンにもお願いしている。あいつは、屋根の上で緊急時に備えてもらう形だ。
宿に戻ると、年長組のメンバーが思い思いにミリーがいい顔をしていたとか、兄弟ってあんなに仲がいい物なのかな? とか、両親が優しそうとか、色々な事を口に出していた。
3日と考えて、戦争の方は大丈夫だろうか? 現状は劣勢だっていう話だし、勇者からの報告が無ければ、一気に突破して安否確認に来るかもしれないか?
後で連絡とって確認してみるか。それと、団長さんにもあってそこらへん聞いておきたいな。
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