1153話 まさか初日で……
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お料理教室の翌日……年少組とのデート? 5日目。
俺たちは今、プールサイドに立ちダマと向かい合っている。
年少組は、初めは興味を持っていなかったのだが、ダマの話を聞くにつれて水中訓練という物をやってみたくなったらしい。
それが昨日の夜。そのまま水中バトルをしに行こう! と言い出したため、さすがに夜にやるのは危険という事で、強引に止めてから翌日にやろうという事でその場を収めた。
そして今日……ダマは、水中バトルが無かったので、流れるプールでただ泳いでいただけだったので、かなり暇だったらしい。ちょうどいい運動になるという事で、喜んで訓練をしてくれる事となった。
両者が一斉にプールへ飛び込む。
そして開始の合図が鳴らされた。
やはり水中訓練初体験の年少組は、慣れていない水中機動に苦戦中。始める前に早く動くには魔法で補助しないと無理だと教えたが、その補助魔法が初めて使うためにうまく出来ていない感じだ。
おれも最初からうまく出来ていたわけではないけど、2~30分もすればコツ位はつかめるだろう。2週間程この訓練の先輩である俺は、お手本となるべく奮戦する。
ん~やっぱり1人じゃどうにもならんな。移動に追いかけっこに魔法に、上手いバランスでキャパシティーを割り振っているつもりだが、逃げに全力を注いでいるダマにはやはり追いつけない。シエルたちのサポート無しでも一対一じゃどうにもならなかった。
1時間もすると年少組の動きが見違えるようによくなった。けど、俺たちがやってきた訓練と全く違う物になっていた。
魔法で水を操り攻撃するのが普通だった訓練なのに、今は……
「まてまて~」
「イリアちゃん! サーシャちゃん! そっちに行ったよ!」
「メルちゃん! レミちゃん! 回り込んで!」
「ここだ~!」
今行われているのは、水中訓練ではなく水中追いかけっこだ。
30分ほどで水中にもなれたのだが、攻撃に魔法のキャパシティーを回すと追いつけないようで、ダマと同じで移動にだけすべての力を注いで追いかけ始めたのだ。
ライムたちとは発想がちょうど真逆になっていた。ライムたちは足を止め魔法のキャパシティーを水を操って攻撃する事に使い、年少組の皆は魔法のキャパシティーを移動にすべて使っている。
水を操って攻撃するのに比べて手数は大分減るのだが、8人で連携して追い詰めるので、ダマも逃げ辛そうにしている。
俺は立ち泳ぎしながら、様子を見ているので、どういう状況なのか手に取る様にわかる。けど、水の中を移動している相手に向かって「誰それ、そっちいった!」とか聞こえるわけが無いのだが、雰囲気なのか普通に顔を水面に出して言っているあたり、何かシュールで面白い。
俺は思案する。このまま年少組と追いかけても余り状況は好転しないと思ったので、魔法で攻撃する方を選んだ。
ダマが逃げる先を予想して水を操り攻撃を繰り出していく。シエルとシールドたちに攻撃は阻まれてしまうが、ダマがすごく嫌な顔をしているのが分かる。
イラつくのは分かるけど、それは顔に出しちゃだめでしょ! 嘘を付いている可能性も無くはないが、さすがにそれは無いと思う。今まで追い詰められていても、ほとんど表情を崩さなかったのに今回だけは、とは考えにくかった。
俺は、とにかく先読みを頑張って攻撃しつつ、年少組に有利になる様に逃げる前に道を塞ぐような形で攻撃を仕掛けたりもしている。他にも、年少組の包囲網の穴になりそうな場所から、逃げられないようにけん制をしてみたりと頑張っている。
訓練が追いかけっこになってから1時間……ダマたちは本当に良く逃げているな。ダマへの攻撃がタッチになったためか、シエルたちもやり辛そうにしているのに、本当に良く逃げる。
ん? シェリルが1人だけ違う動きをし始めた。みんなの所へ行き何か作戦を伝えているようだ。全員に伝え終わると、また全員で連携をとって追いかけ始める。
ん~対して変わっている感じがしないけど、何をするのだろうか? あまり下手な援護をすると作戦の邪魔をしてしまいそうだな。それなら、今まで以上に妨害に力を注ぐか! 逃げにくくするように、年少組の隙間を埋めていく。
動きが変わったな、包囲網が少し狭まった所でイリアが少し足を止め、魔法を使おうとしている。
この感じは……自分たちの周りに水の壁を作ったのか? 攻撃されているわけでもないのに、自分たちの周りに壁……どういうことだ? 俺が混乱しそうになっている間に、ダマが包囲から抜け出そうとしていた!
俺は慌ててその隙間を埋めるべく操っていた水を飛ばす! 水中なので、見た目じゃよくわからないけど、魔力の球が水中を移動してダマに向かっている……次の瞬間、
体がよくわからない重低音に襲われて、俺の感覚がおかしくなった。体の中に響くよくわからない気持ち悪さ……半分おぼれそうになってしまった俺は、動く事を止めて体の力を抜く。
混乱しそうになる頭を必死にコントロールして、冷静さを取り戻そうと頑張る。目を瞑りしばらくすると、水面に浮かび上がった。苦しくなってきた呼吸を開始して、酸素を体の中に取り込む。
ふぅ~、危うくプールでおぼれる所だったぜ。それより、あの重低音みたいなのは何だったんだ?
……って、年少組の子たちは大丈夫か!?
自分がピンチになっていたので、他人にまで意識が回っていなかった俺は、慌ててプールの中の様子を確認する。
ダマが捕まってた、何で?
状況からすれば、あの意味不明な重低音でダマの動きが鈍った所を捕まえた、って事だよな? あの重低音が聞こえる前にイリアが年少組の周りに水の壁を作った。あの重低音が鳴る事が分かっていた? じゃぁ年少組の内の誰かが起こしたのか?
ダマを捕まえて水中でじゃれ合っていたので、さすがに危ない。なので、プールサイドに上がって休憩をしながらじゃれ合う様に言い、プールから出る。
休憩中に何が起きたのかを聞くと、ある程度追い詰めた後にイリアに水の壁を作ってもらった。そこまでは俺も分かっている、その後に何をしたのか聞いて理解した。
残りの年少組のメンバーで壁に向かって全力で浸透勁を叩きつけたらしい。ダマの動きや俺が気持ち悪くなったのは、その浸透勁の影響が水を使って伝わって来たらしい。叩きつける対象と自分を守る壁としてイリアが魔法を使ったのか?
どの位に影響が出るか分からなかったけど、実験あるのみ! みたいな感じで俺は巻き込まれてしまったようだ。せめて今度からはやる前に教えてね。
嫁達の中で初勝利を飾ったのは、年少組だった。しかも初日……後日それを知った上の2組が、ダマを連れ出して訓練をする姿を見たとか見ないとか。
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