1129話 突然の……
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リバイアサンが暴走を始めて2時間程が経過するころには、8階までのダンジョンが丸々水没した。7階までは水が来ていないようだ。
相手の魔物は、Sランクと見えない4匹の魔物以外はすべて8階で溺死した。今7階にいるのは全部で18匹。この数字をそのまま受け止めると、Sランクが14匹もいる事になる。
俺らの準備した戦力ではどうにもならないので、7階からは魔物を引き上げている。いや、7階だけではなく7階から上の魔物は全て引き上げさせている。
8階には魔物はいないが、9階と10階にはリバイアサンが産んだ卵から孵った、アクアドレイク・シーサーペント・シーワーム等々の強力な水棲魔物がウヨウヨしていた。
8階に移動しないのは、通路が狭くて戦闘に向かないからだろう。卵から産まれた水棲魔物は、揃いも揃って体のサイズがデカいのだ。
「水中の魔物って、大きくなるものなのかな?」
と、綾乃がつぶやくくらいには大きな魔物が多かったのだ。
さてと……どうしたものだろうか? リバイアサンが暴走状態にあるという事は問題だが、この状態であれば勝手に迎撃をしてくれるのだから、防衛に気を使う必要はなくなったのではないだろうか?
「リバイアサンの気が変わる前に相手のダンジョンを攻略しよう。防衛はあいつに全部任せておけば問題ない! 指示を出してペースをあげるぞ!」
今までは細かく指示を出していなかったが、細かく指示を出すことによって進軍のスピードをあげた。
スケルトンへの指示は、基本的にバザールに任せる事にした。複数から指示を出すと効率が良くないので、俺達は助言役みたいな形だ。
そんな俺たちのメインの仕事は、リバイアサンに任せた防衛の様子を見る事。いくら任せたと言っても放置しきるのは無責任だし、いざと言う時には俺たちができる事をしなければならない。
綾乃と俺は、バザールから少し離れて作戦会議をしている。
「やっぱり、残りの骨ゲーターとスケルトンライダーを送り出しておくべきかな?」
「戦力は問題ないと思うけど、防衛にもコントロールできる魔物が欲しいのは確かだよな……残りって言っても5組しかいないんだっけ? こいつらは8階に行かせて、狭い所での迎撃に使うか?」
「確かにその方がいいかもしれないね。広い所だとスピードで勝てないかもしれないから、限定された空間っていうのはいいかもしれないよね!」
そう結論を出し5組の骨ゲーターとスケルトンライダーを送り出した。
「綾乃殿! 人造ゴーレムもフル活用していいでござるか?」
バザールは、綾乃の作った異形の人造ゴーレムも利用して、ペースを上げるつもりのようだ。
そこから4日間は、俺たちの魔物が進軍していく様子と、未だにどうやっているのか分からないが、時折増える相手の魔物が、8階に進入してスケルトンライダーに打ち取られるという状態が続いた。
そこから3日後、ダンジョンバトル開始から10日目にして、相手のダンジョンの10階にたどり着いた。
そこに広がっていた光景は、意外というか納得と言うか……
「俺たちと同じ作戦だったとはな。10階が丸々水没してるって事は、ダゴンやリバイアサンみたいな水を操る魔物がいるって事だよな。もしいるのがリバイアサンなら勝てないけど、ダゴンなら負けないはず」
「綾乃殿、この人造ゴーレムたち、怖いでござる!」
バザールは人造ゴーレムの動きを見てひいている。何と言うか、水の抵抗を受けてそれなりに動きは遅くなっているのだが、普通ならありえない速度で動いているのだ。
まぁ魚より早いかと言われれば、ケンタウロスタイプとハーピータイプとラミアタイプは遅いのだが、アラクネタイプの人造ゴーレムは、広くない通路に四方八方に足を広げて強引に進んでいるためめっちゃ速い。
骨ゲーターが泳ぐ速度より、アラクネタイプの方が動きが早いのだから驚きだ。
「そもそも、何でこいつら水中をこんなに早く動けるんだ?」
「全身が金属でできてるから、その重さで地面蹴って動いてるんじゃないの?」
そういえばこいつらって、全身金属だから重たいんだったな。しかも体が俺たちよりでかいからかなりの重量だな。
「とりあえずはっきりしている事は、ラミアタイプには水中で会いたくねえ!」
水中と言うか水の底を、自在に駆け回る蛇って見た目からして怖いじゃん? シーサーペントやシーワームは体がデカいから別だけど、アナコンダの顔の位置に人間の上半身がついていたら、マジでビビる自信がある。
地上で見るのと水中で見るのとだと、ここまでの違いがあるのかって思う程、気持ち悪く見えるのだ。
スケルトンやスケルトンライダーが10階を進み始めて1時間後くらいに状況が一変した。
『ダンジョンバトルの途中ですが報告があります!』
ダンジョンバトルが開始する時にアナウンスしていた神の声が聞こえてきた。
『相手側のダンジョンマスターがリザインをしましたので、現時点をもってダンジョンバトルを終了いたします! リザインと同時に、相手側のダンジョンマスター【神代 甚】より伝言を預かっています。【今度は、同じ条件でのダンジョンバトルをお願いしたいと思っている】との事でした』
これにて終わりです! みたいな感じであっさりと終わってしまった。なんだろう……この不完全燃焼な感じは、ちょっとムカッとする!
『お疲れ~あんたよくやったわね! あんたなら負けないと思ってたから、楽しく見させてもらったけどね。あんたのとこの3~6階のあのダンジョン面白いね! 今度あのダンジョンみたいなのを、私にちょうだい! 作ってからこっちに贈ってよ!』
チビ神様から連絡が来た。色々言いたい事はあるけど、報酬はもちろんもらえるんだろうな?
『当り前よ! もうすでに追加されているから、自由に召喚していいわよ。ただ、神具だから召喚するにも、それなりのDPがかかるから注意してね。あんたなら問題ないだろうけどね。それより、あのダンジョンみたいなのちょうだい!』
そもそもダンジョンって、ゲームとかみたいにお前さんに贈れる物なのか?
『基本的にあなたの所有物であれば何でも贈れるわよ。ただ、人間に関しては無理だけどね。後精霊も無理ね。可能なのは、DPで召喚できる魔物って所かしら? だから、ダンジョンも贈る事はできるのよ! 普通は使い道がないからいらないけど、あのダンジョンなら楽しく遊べそうだからお願い!』
即死トラップのダンジョンで遊ぶとは、神はいい度胸しているな。
『もちろん、生身でやるわけじゃないわ。あんたの様にドッペルみたいなのを使って遊ぶのよ』
即死トラップを本当に死なないからって、遊びにしてしまう程娯楽に飢えているのだろうか? まぁ、贈ってもいいけど、しっかりと見返りはあるんだろうな?
『まじで!? ちょっと他の神に相談してくるから、準備だけしておいてね!』
言いたい事だけ言って突然いなくなりやがった。自由な奴だ……
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