1096話 見覚えがある物
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「あれ? 遊んでたとはいえ、結構なペースで進んでたのに最後の到着っぽいね」
残念! とネルが言っている様子が可愛かった。まぁ競争をしていたわけでは無いので、悔しがる必要はないぞ! ネル!
「あ、ご主人様。お着きになられましたね。早速ですが見てもらいたい物があります」
ピーチにそう言われて、その部屋の壁の前に連れていかれた。ピーチは何も言わないからここに何かがあるのかもしれない。よく見て、触り叩くと違和感があった。
「え? もしかして、隠し通路?」
「恐らく、そうではないかと思います。先に調べようかと思いましたが、ご主人様がいない所でそれをやると、物凄く拗ねられそうだという事になり待っていました」
あ~うん。俺の事よくわかってるね。さすが! 安全確認のために先に行きそうな気がするけど、こういう時はきちんと俺の事を待ってくれるから嬉しいね。
1度のけ者にされた時、めっちゃ拗ねたのが効いてるんだろうなとは思うけど、自由に冒険の様な事ができなくなってから、この手の事は見逃せないもんね! ごり押しすればできなくないが、それをすると帰ってきた後の夜が大変になるんだよね。
嫌じゃないけど、搾り取られる感じなんだよ。俺はゲッソリするのに、妻たちはツヤツヤになる理不尽!
「よっし、少し腹ごしらえをしたらこの先を調べてみよう!」
「そう言うと思いましたので、準備しておきました」
そう言ってシュリが後ろから声をかけてきた。キッチン馬車もコンテナも出ていなかったので、調理している雰囲気では無かったのだが、作り置きしていた揚げ物系の食材をパンズに挟んだ、ハンバーガーやサンドイッチを作っていたようだ。
机の上に並べられたそれらは、作り立ての様に湯気が出ているのもあるので、サクッと食べる事にした。
食事の時にウィスプがマッピングしていなかった理由を聞かれたのだが、これは俺の命令によるところが大きい。ダンジョン内をマッピングしろと命令したため、ダンジョンの中をマッピングしたのだろう。
ウィスプは賢いわけではない。命令を忠実にこなしてはくれるけどね。で、おそらくだが、ウィスプの中のダンジョンはこの壁の内側までなのだろう。
多分一番初めにこの部屋の壁を調べていて、隠し通路に気付いていたら違うのだろうが、ダンジョンの四隅を発見したら、その内側をマッピングしてしまったのだろう。この時に俺が、隠し通路の可能性も調べるように言っていたら、違ったかもしれない。
食事が終わり、壁の前に集まり……
「どうやって開けるんだ?」
いきなり躓いた。近くにスイッチのような物も無く、スライドもしないのでどうやって開けるのかが分からなかったのだ。
「ご主人様、壊せばいいんじゃないですか? 何で隠しているのか分からないけど、ダンジョンなら壊してもそのうち元に戻るよね?」
サーシャがそう助言をしてくれた。
それを聞いて、なるほど! と思った。鉱石を掘る時だってダンジョンの壁を壊しているのに、今更壁を壊す事をためらう理由なんてないよな!
少し離れて魔弾を使ってみる事にした。上の階で1割位魔力を使って圧縮して撃った魔弾がかなり深くまで穴が開いていたので、さらにその半分の魔力で圧縮率は100倍くらいで打ち込んでみた。
もくろみ通り壁が壊れたのだが、それでも攻撃力が過剰だったようだ。これなら普通につるはしやハンマーで叩いた方が良かったかもな。
「さて行こう!」
一本道を進んでいくとすぐ突き当りに出て、右手側に通路が続いていた。しかも若干上り坂。
「ご主人様。この構造にすごく見覚えがあるんですけど、気のせいでしょうか?」
「奇遇だなピーチ。俺も物凄く見覚えのある感じがするぞ」
俺たちのセリフにみんなが頷いている。見覚えのあるのも当然、俺が良くダンジョンの最下層から地上に抜ける道を作る時に作る通路に似ているのだ。
しばらく歩いていると、突き当りに差し掛かり右手側に進むように道がある。
「おかしいですね……まだ地上までは距離があるはずです。3分1も登ってないんじゃないですか?」
マッピングした地図を見ると、35階アイアンゴーレムの出る階だった。しかもここは、階段がある位置から最も遠い場所だった。
35階に出る前に一旦話し合いをする事にした。
「この感じは近道ですかね? 他の階にも同じように、違う階と繋がっている通路があるんですかね?」
そういう風に言ったのはライムだ。俺も同じ事を感じていたけど、ちょっと違う気がしなくもない。何が違うのかは分からないけど、そんな感じがするというだけだ。ただ、
「他にも通路があると思う。でもそれを自力で探すのには時間がかかりそうなので、ここは物量で攻めよう。召喚したウィスプがこのダンジョンに散らばってるから、隠し通路がないか探してもらおう。その結果が出るまでは少し休憩しよっか」
休憩が始まったのだが……
「ご主人様、坂道になってて傾いてるからなんか気持ち悪い……」
年少組から漏れた言葉だ。それならアイアンゴーレムのフロアの特性を生かして、すぐ行ける部屋にいるアイアンゴーレムを倒してゆっくりと休憩する事にした。
45階を出発した時には軽く食事をしただけなので、ここでしっかりと食べておく。食べてからあまり時間が経っていないので、そこまで量は食べれないけどね。
2時間後には隠し通路が全部発見された。
「隠し通路は結局3つでしたね。45~35階、31~21階、17~7階の3つですね」
「それでも、沼地をショートカットできるのは大きいですね。これは公表するんですか?」
「公表するのは違う気がするけど、利用はしてもらいたいんだよな。でも、ダンジョンって修復とかの過程で邪魔な物も吸収しちゃうんだよな。何か固定しておく方法はないかね?」
しばらく悩んでいたが、イリアが
「ダンジョンはクリエイトゴーレム干渉できない。その逆はないのかな? 穴をあけてからクリエイトゴーレムの枠をはめてみるとか?」
「どうなんだ?」
そういえば今までに試した事のない方法を提案してくれたイリアの頭を撫でまわした。この階の近道は教える必要は無いと思うので、そのまま31階を目指して移動を開始する。
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