1093話 厄介な場所
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「何で沼なんだよ!」
ここまでガッツリした沼って初めてなんだよね。毒沼みたいなのはあった気がするけど、普通の底なし沼みたいなのは初めてなのだ。
「ご主人様、このままだと進むに進めません」
「陸地が見当たらないあたり、悪意が強すぎるな。しかも時間がたつにつれて、足がドンドン沈んでいってるな。いったん階段にまで引き上げよう」
すでに膝まで埋まりかけていて、太ももの半分は水の中、ステータスの高さでごり押して階段まで戻る。年少組は腰まで埋まりかけている娘もいたが、問題なくあがる事ができた。
「みんな大丈夫か?」
さすがに下半身が泥まみれの状態ではどうしようもないので、魔法でお湯を作り洗い流す。装備用品を考えると本当は良くないのだが、俺達の装備はその程度で劣化する事も無いので気にせずキレイにする。
そのままにしておくのは良くないので、風魔法で吹き飛ばして最後に水魔法で水気を飛ばす。
「これからどうしますか?」
「乾かすとなると、この階が大変な事になるから、移動ルートだけ凍らせるのが簡単かな?」
「そうですね、アイスロード!」
ライムがそう言って沼を凍らせた。表面だけ凍らせるのではなく、下の泥の部分まで凍らせている。表面だけ、水面だけを凍らせると、氷が揺れて危ないので魔力を多めに使い泥まで凍らせているようだ。
結構下の方まで凍らせたのだろう、浮く様子を見せていない。まぁ、氷なので水より体積が増えるので少し盛り上がっている。まぁ誤差の範囲だろう。
表面は平らになっているので、歩く分には問題ないが氷だからな。少しでも解けると一気に滑るようになるんだよな。なので靴の裏にクリエイトゴーレムでスパイクを作り駆け抜ける事にした。
「って、この沼! かなり! 悪意が! 高いな!」
氷は多少壊されていたが、それは大した問題にはならないのだが、沼の中から魔物の攻撃が飛んでくるのだ。
ただ単に魔法とかの攻撃だったら楽だったんだが、体当たりをしてきたり沼を爆発させているような形で、周囲に泥をまき散らしたり、視界を潰しにくるような攻撃をしてきた。マジでめんどくせえ……しかもその泥が氷にかかるので、スパイクがあっても多少滑るのだ。
なので、こういうことが度々起きる。
29階を走り抜けている最中に、
「キャッ!!」
っと声と同時に水に落ちる音が聞こえる。助けようと急に止まろうとして、更に3人が沼に落ちてしまった。
この状況にキレた一番初めに落ちたメルフィが、爆発したように見えた。
その時に何をしたか分からなかったが、周囲に泥をまき散らしてブーイングをくらっているが、関係ないと言わんばかりに氷の上に戻って来た。
そして他に落ちた3人も方法に違いはあれど、沼に対してムカついているのか、レミーは落ちた通路の左側を氷に変えていた。
右側に落ちたケイティは、ブツブツボヤキながらジャンプして氷の上に戻り飛び掛かってくる魔物を、爆散させる勢いで両手剣を振るっている。
最後にケイティと同じように右に落ちたアリスは、どうやっているか分からないが沼の中をそのまま歩いている。そして襲ってくる魔物を切り捨てている。こっちは、爆散させるのではなく細切れにしているのだ。
どっちも怖い。
俺も含めて1回は落ちているので、かなり面倒なので広範囲を凍らせると、何故かある程度の範囲以降はすぐに氷が壊されてしまい、そこから攻撃され沼に落とされてしまうのだ。
Lvの低い魔物にここまで苦戦させられたのは初めてかもしれないな。ダンジョンの不思議で援護された沼に特化した魔物は、決して強くないのだがとにかく厄介だった。
個人的には、黒い悪魔の階層に次ぐ面倒な場所だと認定していた。
レミーが作った氷はすでに半分くらいが無くなっている。どういう理由でこうなっているのか、マジでわからんが本当に厄介だ。
全員が泥まみれなのは30階抜けるまでは変わらないと悟ったため、途中から泥を落とすのを止めている。そのせいでまた落ちる事もあるのだが、泥を落としていると時間がかかるので抜ける事を優先したのだ。
氷以外に、DPで土を盛って道を作ってみたりしたが、3分もしない内に沼に飲み込まれてしまうため、凍らせるのが最良と考えてこの方法にしている。
全員が泥まみれにされイライラしているので、ちょっと空気が悪いのだ。それで各々がキレたりキレかけている状況なので、周りを顧みない行動をとり始めているのだ。
「みんな落ち着け! 気持ちはわかるけど、バラバラに行動していると邪魔しあってかえって面倒になる!」
そう言っても、沼の中の魔物に怒っているせいかこっちいう事に聞く耳を持ってくれない。
普段温厚な年長組のライラやメアリーも切れそうになっている限り、悪意が高い沼地だと感じている。
これ以上はさすがに拙い雰囲気になっているので、どうにか空気を変えないといけないな。あまりやりたくないけど、これ以上はな……両手に魔力を集めて打ち付けると同時に開放する。そうすると、
パンッ!!
と大きな音が鳴り、音の出所に目が集中する。
「みんな落ち着け。気持ちはわかるがこれ以上醜態はさらすな。俺を幻滅させないでくれ」
妻たちが一番恐れている事を俺は知っている。そこを逆手にとってみんなに注意を促す形だ。妻たちは、俺の事を本当に好いてくれているので、俺に愛想を尽かされるのを本当に恐れているのだ。
そこまで俺がそこまでいい人間だとは思っていなが、妻たちには違うのだろう。ただ贅沢ができなくなるから嫌だとか言う話ではない。自分たちでお金を稼げるのだから、1人でも生活していけるだけの力はあるからな。
俺の言葉が聞いたようで、みんなが少し落ち着いてくれた。
「後1階だからみんな頑張ろう。31階に入ったら安全を確保してお風呂に入ろう」
みんなを鼓舞して後1階を駆け抜ける。
ドッペルの体とは言え、感覚が共有されている。というか、ドッペルそのものが俺たちになっているのでかなり不快なのだ。早く洗い流したい……その一心でみんなで進んでいく。
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